第6話
前回のあらすじ
クロノイド制圧軍の諜報部隊と共に地球で活動する事となったオーラ。
ゼシアを迎えに来た際に学生として過ごす彼に理解を示すと、ゼシアに気に入られる。
一旦家へと帰り荷物を家に置き、そのまま近くに停めてあった迎えの車に乗りフォトンガードナーの基地へと向かった光。基地に入って早々職員に光平が司令部にて待っていると教えられ、礼を告げるとそのまま司令部へと向かって行った。
「失礼します」
「む、来たか」
「済みません、少し遅れてしまって」
「何、問題無いさ」
司令部では光平の他に縁と久遠の二人も既に集まっており、光が遅れた事に頭を下げると光平は問題無いと口にするが、縁は苦笑いを浮かべ久遠は小さく溜め息をつきながら光の事をジト目で睨みつけており、二人を待たせたのだとすぐに気付き二人に向かって小さく頭を下げる。
「さて、三人共揃ったな?」
「はい、集まりましたけど……今日はどの様な用件ですか?」
「ああ、君達に報告する事があるんだ」
三人集まったのを確めて光平が口を開くと縁がどの様な用件で三人を集めたのかを光平へと問いかける。それに光平は何か報告する事があると言うと、近くのパソコンをさわり始めた。
「まずはこれを見てほしい」
パソコンを操作しながら光平がそう言い、三人は目線をパソコンを操作する光平から司令部のモニターへと移す。するとモニターに基地内の格納庫が映し出され、そこに置かれていたあるものが光達の目に入る。
「これは……?」
格納庫の中央に積み重なっていた焼け焦げた金属板に、所々曲がった金属のスクラップ。今まで基地内で見た事の無いものに光が思わず疑問の声を零す。それを聞いた光平はスクラップの山へとカメラをズームさせるとこれが何なのか口を開いた。
「これは、ソルトが脱出に使ったと思われる脱出ポッドの残骸と、先日のクロノギアスとの戦闘後に発見した脱出ポッドの残骸だ」
「「「っ!」」」
ソルトや昨日取り逃したパイロットが使用していた脱出ポッドの残骸が運び込まれて来たと知り、三人は目を見開いて映像越しに残骸を目にする。フォトンガードナーの工作員が調べあげた通りソルトの乗っていたと思われる脱出ポッドは原型が判らない程に爆破されており、それはもう一方の脱出ポッドも同様だった。むしろもう一機の脱出ポッドも通信機類を積んだまま躊躇いも無く自爆した事に、昨日思い浮かんだ既に工作員が地球にて活動しているという可能性の話が一気に真実味を帯びると、光はふとスクラップの他に積まれた金属板へと意識が取られる。
「済みません、あの金属板の正体って何ですか?前に逃げるのを見た際にはあの様な部品は使われていない記憶があるのですが……」
光平に言及されなかった焼け焦げた金属板について光が問いかける。光の言う通り焼け焦げた金属板は脱出ポッドに使われるにはいささかサイズが大きく、それでも一部分が吹き飛ばされているのだから本来の大きさを想像すれば、脱出ポッドの部品では無いと一目で判った。光平も光が金属板に気付いたのを見て小さく頷くと、カメラを再びズーム──今度は焼け焦げた金属板へと向けながら──して光平は口を開いた。
「あの金属板が発見されたのは昨日、君達がクロノギアスを相手にしている際に起きた爆発があった場所なんだ」
「っ!」
謎の爆発地点から見つかったという金属板の出自を聞いて目を見開く光に対し、久遠は何処か納得がいったという風に小さく頷く。それが目に入ったのか縁が久遠へと声をかける。
「なるほど、そういう事か……」
「久遠?」
「あの爆発が起きた場所は、私達が最初にクロノギアスへと先制攻撃を行った際にクロノギアスが立っていた場所なんだ。きっとあの金属板は、クロノギアスに関係があるものなのだろう……司令、映像を見せてもらえませんか?」
「ああ」
金属板がクロノギアスに関係するものだと言った久遠の言葉に光と縁、光平の三人が目を見開く中久遠はクロノギアスの映像を確認しようと、光平から許可を取るとパソコンの前に立ち映像を切り替える操作を行う。
格納庫内のスクラップの山から昨日のクロノギアスとの戦闘へ映像が切り替わると、司令部側で最後まで見たからかフォトングラストがクロノギアスを撃破した瞬間が映し出され、久遠はその映像を逆再生して爆発した瞬間まで巻き戻した。
「金属板についての答えはこれから前にあるはず……」
そう呟くと久遠は再び映像を逆再生させ始める。爆発前のフォトングラストが優位を取れていた銃撃戦、銃撃戦へと移行する前のクロノギアスの市街地への移動とそれに追従するフォトングラスト、時空転移ゲートを越えて現れたクロノギアスが山岳部に向かって行き、そこで着地して少しした後に現れたフォトングラスト、久遠はそこで映像を止めてクロノギアスへと目を向ける。
そこで久遠は、時空転移ゲートから山岳部へと飛び立って行くクロノギアスの背を映した映像に僅かに眉をひそめた。
「これは……」
違和感を覚えた久遠は背を向けるクロノギアスを拡大すると他の映像と照らし合わせるためにその部分だけを切り取り、改めて映像を再生し始める。
背を向けるクロノギアスの画像を横に昨日の戦闘が行われる中、映像にクロノギアスの背部が映った瞬間久遠は映像を一時停止した。
「やっぱり……そうなのか」
「な、なあ久遠……何が解ったんだ?俺にはどちらも背中を映している様にしか見えないんだが……」
「いや、よく見て光……」
二つの背面を見て何か理解した様な声をあげる久遠に光が頭に?を浮かべながら何が解ったのかを聞こうとすると、縁が映像を指差してよく見る様に言う。
縁に言われて僅かに光が表情を歪めると改めてどう違うのか見比べると、今度こそ光は違いに気が付く。
「あ?何かバックパックが……」
「そうだ、時空転移ゲートを越えたばかりの時にはバックパックにコンテナが取り付けられていて、私達が攻撃をし始めた時にはそれが無くなっているんだ」
光が違和感に気付くと久遠はそれに頷き、双方のバックパックを拡大する。そこには久遠の言った通り時空転移ゲートから出て来た際にはバックパックにはコンテナが付いており、フォトングラストと戦闘を始めた時にはコンテナが外されていた。
「最初に山岳地帯に向かったのは、このコンテナをパージするためか」
「そうだと思われます」
「だとすると、コンテナの中身が気になるな……」
クロノギアスが市街地の破壊よりも山岳部に向かった事に対する理由に気付き、コンテナの中身に光平が興味を示す。中身が何なのか考えていると、ふと途中の爆発を思い出した縁が口を開く。
「あの爆発、誰が起こしたものなのでしょうね」
「そりゃあ、クロノギアスだろ?」
縁が疑問に思ったのは誰が爆発を起こしたかについてだった。それを聞いた光がクロノギアスが爆発を起こしたと言うが、縁はそれに首を振る。
「爆弾として使うにしては、明らかに距離がある状況で戦ってたんだ。むしろ爆弾として使う事を視野に入れると、途中での市街地へと向かおうとしたのがおかしい」
「何が……ってそうか、せっかく仕掛けた爆弾から離れる事になるからな……」
戦術的に爆弾として用いるのなら、距離を取って戦おうとする事はあり得ないと気付き、コンテナを爆発させたのはクロノギアスではないと考えると、なおの事誰がコンテナを爆発させたのか頭を悩ませると、光平が小さく呟いた。
「そうか、補給物資」
「司令?」
「地球で活動している工作員にもたらされる補給物資が、コンテナに入れられていたという可能性があったんだ」
「って事は、あの爆発を起こしたのは……!」
「物資を回収し終えた工作員が、証拠隠滅として起こしたものだろうな」
「確かに、それならクロノギアスがコンテナをパージした位置から距離を取って戦おうとしたのも、コンテナが爆発した瞬間攻勢に出たのも納得がいく……」
コンテナを爆発させたのが地球で活動する工作員であるという事を光平が言い、それを元にクロノギアスの不可解な行動を考えるときっちりと嵌まり、そうとしか考えられなくなる。
しかし同時にあくまで仮説だった既に地球にて工作員が活動しているという可能性が、より現実味を帯びたものとなってしまった。
「そうなると、なおの事クロノイド制圧軍の工作員がいつ頃から地球へと潜り込んでいるのかを調べる必要があるな……」
「僕達も手伝います!」
「過去に時空転移ゲートが開いた際の映像を注意深く見て行けば、きっと手掛かりがあると思います」
「手分けして探しましょう!」
光平が工作員が潜り込んだ時期を調べる必要があると呟くと、光達はそれに協力の意を示すが、光平はそれに首を振って三人の協力を退ける。
「どうしてですか!?」
「こういうのは裏方の我々の仕事だ。君達には君達のやるべき事があるのだろう?」
「…………」
光達にやるべき事があると言い、背後のクロノギアスとフォトングラストの戦いの映像を指差す光平に光達は言葉に詰まる。フォトンシリーズに乗る三人のやるべき事、それは侵攻してくるクロノイド制圧軍に対する迎撃と、それに備えたトレーニングだ。
「君達はクロノギアス相手に一進一退の戦いを繰り広げているけど、それじゃあ駄目だ。今はクロノドローン編隊とクロノギアス一機という状況が続いているが、何時クロノギアスの編隊が来るか解らない状況だ。圧倒とまではいかなくとも優位に戦闘を進められる強さを、我々は君達に求めているんだ」
「──っ」
光平の語った内容を聞いて光は思わず拳を握り締める。光平の言った様にクロノギアスが一機しか出現していない現状はかなり奇跡的で、いずれクロノギアスが三機、四機と同時に出現する可能性もあるのだ。その様な事態に陥った際、今の自分達で乗り越えられるかと想像してもやられる未来しか見えない。
縁や久遠も同様の事を考えており、揃って目線を下げて拳を握り締める姿は自分達の至らなさを噛み締めている様にも見える。
そんな三人の姿を見て光平は小さく息をつくと、三人の頭を順番に撫でていった。
「自分が至らないと感じれるなら、後はそれを補うだけだ。君達のそれをサポートするのも、我々の仕事なんだ」
「でも、それじゃあ司令達の負担が増えるだけではないですか」
「戦えない我々は、それ位の事をやって君達と釣り合うんだよ」
光平達に自分達のサポートだけでなく工作員を探す仕事まで押し付ける事になるのに縁が異義を唱えるも、光平はそれに小さく笑ったまま返す。
「君達が我々の事を考えてくれるのはありがたい、けれど君達のやるべき事の重要度の方が大きい以上、君達にはそれをやってほしいんだ」
「ですが……」
尚も引き下がろうとしない縁に対し、目を閉じ光平の言葉の理解に努めていた光と久遠は目を開くと互いに頷き合い、光が縁の手を取る。
「行くぞ、縁」
「光!?久遠も!?」
突然手を引かれて扉まで連れていかれそうになり縁が驚きの声をあげて光の方へと振り返ると、先んじて久遠が扉を開けて光平に向かって一礼しているのが目に入り思わず目を見開き、そんな縁を諭す様に光は言う。
「俺達がやるべき事をやる、それこそが司令達の仕事を減らす事になるんだ」
「けれど……」
「いいから来い……失礼しました」
縁の手を引いて出口へと向かった光は去り際に光平達に向かって頭を下げ、先に出ていった久遠の後を追いかける。
「ちょっと光……!」
「二人共今来たか」
「ああ、行くぞ」
手を引かれるまま連れて行かれる縁は光に何か言おうとした瞬間、先に出ていた久遠と合流してタイミングを失う。そのまま光は縁の手を引いてトレーニングルームへと向かって行くが、その道中で縁は肩を震わすと光の手を勢いよく振り払った。
「光も久遠も、あれでいいの!?」
「少なくとも俺達のやることは、襲撃してくるクロノギアスを倒して地球を守る事だ。違うか?」
「──っ!違わない……けど……!」
「俺達が万全の調子で戦える様にあの人達が頑張ってくれてるんだ。俺達があの人達に報いる方法は、無駄にしない様に勝つ事だろ」
「────っ!」
自分達のやるべき事を冷静に話す光に対して縁は、言っている事は解るが納得がいかないといった風体で肩を震わしている。
そんな二人の様子を見て、違和感を覚えた久遠がおずおずと縁へと声をかけた。
「縁……お前何かおかしいぞ」
「っ、何がおかしいっていうの、久遠」
「普段だったら感情的になってるのは光の方だ。けれど、今はお前の方が感情的になって光が冷静に諭しているじゃないか」
「それ俺馬鹿にしてんのか……いや、何時も感情的になるのは俺だけど……」
久遠から光以上に感情的になっていると言われ、光もさらりと自分が感情的になりやすいと言われて頬をひきつらすも久遠の言った言葉に頷く。二人から感情的になっていると言われた縁はそれで僅かに落ち着きを取り戻したのか、肩の震えを沈めると顔を俯かせて小さく呟く。
「ごめん……今日はちょっと頭を冷やすよ……」
「あ!おい!」
そう言って縁は二人の元から去ろうとして、光が呼び止めようとするも途中で走り始めすぐに二人の前から姿を消す。初動を遅れてしまい追いつけない程に差を作られた光は呼び止めた際に伸ばした手をさ迷わせると、小さく溜め息をついて縁の去って行った方を見つめた。
「本当にどうしたんだ一体……」
「私にも分からない、けれど……」
「けれど?」
「これは、縁の心の問題だ。余り私達が込み入っていいものではない」
そう言うと久遠は一人トレーニングルームへと向かって歩き始める。光はまだ縁が去って行った方を見つめており、久遠の足音が遠くなって行くのを耳にしながら小さく呟く。
「本当にどうしたんだよ、お前……」
光が小さく呟いた言葉、それは不調の好敵手に対する気遣いの言葉だった。
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