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超光戦機フォトングラスト  作者: サクツキ
第2節・戦う理由
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第7話

前回のあらすじ


縁との勝負にすら身が入らなかった光はその事を白部に追求され、つい悩みがある事を零してしまう。

白部からの追求を受ける中、クロノドローンによる侵攻が再び始まった。

市街地における戦闘の余波で起きる地震に体育館が揺れ、避難してきた生徒や職員達に不安の声があがる。

そんな中避難した生徒達の一角で、白部が表情を歪めながら辺りをキョロキョロと見回して誰かを探す。


「部長……見つかりました……?」

「いいやまだだ……くそっ!人が多過ぎて探し切れん……!」


不安げな声をあげて白部に聞く花音に、白部は苛立ち混じりの強い口調でそれに答える。

二人は避難する際に先に呼び掛けに向かうと言って、別れた縁と久遠を探していた。


(居る訳無いよな……)


二人が離れ離れの二人の事を心配する中、光は彼等が此処に居ない事に感付いている。クロノイド達が攻めて来たというのなら、撃退するために組まれたフォトンガードナーのメンバーである彼等が向かわない訳がない。

体育館からは外の様子は見れないが、余波だけでも激しい戦いが繰り広げられているのを光は感じていた。


(昨日は上手く行けたんだ、今日だって……)


脳裏に浮かぶのは昨夜の出来事、クロノドローンの部隊を相手に一方的な戦いを行った二人の姿。

そんな二人が戦っている以上、じきにこの戦闘も終わり静かになる。光は一人そう確信するが──


(…………またか……)


突如として胸に沸き上がったモヤモヤに顔を歪め、その正体を探る様に胸に手を宛てる。


(考えろ……俺は一体何にモヤモヤしている……?)


目を瞑り意識を集中させ、胸のモヤモヤの正体を探ろうと深く思考の海に沈む。そこで思い出したのは、初めてモヤモヤを感じた時の出来事だった。


(そうだ……俺が初めてモヤモヤを感じたのは……)


光が初めてモヤモヤを感じた瞬間、それは縁と久遠がクロノドローン部隊を相手に無傷で戦い終えた時だった。戦い勝利を納めた二人とただ見ている事しか出来なかった光、その時に光は初めてモヤモヤを感じたのだ。


(じゃあ俺は……一体何にモヤモヤしてたんだ……?)


初めてモヤモヤした時の事を思い出した光は、今度はどうしてモヤモヤしてしまうのかを考える。

すると今度は脳裏に、昨夜の襲撃が起こった際に電話口で語られた縁の言葉が思い浮かぶ。


──今は民間人の君を前線に出す事は出来ないんだ──


民間人だから戦いの場に出してはいけないと縁に言われた事を思い出すと、続けて今日聞いたある言葉を光は思い出す。


──何時もだった勝負の時はもっと力んでたりするのに今日は何かぽけーっとしてて!負けた時も何時もだったら思いっきり悔しがるのに──


(あ…………)


脳裏に浮かんだ花音が口にした光の現状に対する言葉、その中に光がモヤモヤしていた理由が見つかった。

光にとって越えるべき壁だった縁、彼が戦っているのにも関わらず自分が戦っていないという事にモヤモヤしていたのだと光は気付く。

もし縁が戦っていると知らなかったら光はこんな風にモヤモヤを抱える事は無かっただろう。しかし縁が戦っていると知ってそうは言っていられなくなってしまった。


「そうか……そういう事だったんだな……」


どの様な形であれ縁と競い合って来た光にとって、クロノイドとの戦いに関してはまだ勝負の土俵にすら上がれておらず、縁が昨日言った一般人発言がそれを光に自覚させて心に引っ掛かりを作ってしまったのだ。


「高坂……?」

「……高坂部員?どうしたんだ顔つきが変わって……」


モヤモヤが晴れた事が顔に出たのかそれに関して先程まで縁と久遠を探していた二人が光の様子を窺って来る。

光は二人に振り向くと、覚悟を決めた表情で答えた。


「済まん二人共、少しトイレ!」

「え、ちょ、高坂!?」

「そんな顔してトイレに行くのか!?」


モヤモヤが晴れた胸に灯った熱に従うまま、光は二人の元から離れて行く。トイレと誤魔化したが体育館のトイレは出入口横にあるため入口に向かっても困惑はされるも怪しまれず光は出入口へとたどり着き、周囲の人々が不安で気が逸れているのをチャンスと見て光は体育館を抜け出す。

そのまま気付かれぬ内に光は第三倉庫へと向かって走り、到着するや否やズボンのポッケに手を入れてそこから一枚のカードキー──縁が基地に向かおうとする際に光にぶつかった時にこっそりと忍ばせたもの──を取り出すと、縁がやっていた様に見よう見まねで鍵を開けて倉庫内に入る。


「前に来た時は速攻で気絶させられたからな……!」


倉庫に入った光は何処からフォトンガードナーの基地へと向かえるか倉庫中を探し回り、奥の壁に立て掛けられたロッカーへと視線が向く。


「人が入れるのはこれ位か…………ビンゴ!」


ロッカーの元へと向かい扉を開くと、そこに前に自分が乗っていたカプセル状のエレベーターが入っていたのを見て光はその中へと入りロッカーの扉を閉じる。

すると眼前に硝子の扉が閉じられ、カプセルは下へと降下していき光が前に道中で見た蛍光灯によって照らされた通路が現れる。光はその中で到着するのを待ち続け、しばらくして移動速度が遅くなり到着したらしく完全に停止した。

扉が開くと同時に光はエレベーターから飛び出し一昨日博士に案内された道へと進もうとした処で、エレベーター前に誰か立っていた事に気が付く。

その男──光平は光の姿を目にすると、やって来るのを待っていたかの様に光に向かって声をかけてきた。


「戦う理由は、見つけられたかね?」

「………………」


光に向かってそう問い掛けてくる光平に対し、光は僅かに目線を下げて沈黙する。しかしすぐに顔をあげると光平に向かってはっきりと答える。


「人にとっては大した理由でも無く、下手をすれば馬鹿にされる様な理由だ。けれど……確かに俺には戦う理由が出来た」

「……………………フッ、いい顔をするな……」


そう理由は言えずともそう言い切れる理由を見つけたと言わんばかりの態度に、しばし光平は沈黙するが何かを察したのか微笑を浮かべてそう呟く。


「ならば行ってくるといい、道は分かっているかい?」

「これでも記憶力は良い方なんで!」


頭を指でつつきながら光は光平の横を通り過ぎて前に博士に案内してもらった通路を走り抜ける。

目的地の通路に入る曲がり角を曲がった光の目に通路のスロープを起動させるスイッチに手を添える博士の姿が映ると、光を認識した博士が笑みを浮かべてスイッチを押す。

それによってスロープとなった床を光と博士は滑り落ち、二人はフォトンランダーを囲うメンテナンスマシーンの上へと着地した。


「ずいぶんとスッキリとした様子じゃの」

「そりゃどうも……行けますか?」


光の顔を見てニヤリとした表情を浮かべる博士に対し、光がそう言ってフォトンランダーへと目を向けると博士は倉庫の一角を指差す。


「まずは着替えてこんかい。お主のスーツは用意しておるぞ」


指差された場所には更衣室があり、光に告げられたスーツというのも二人が身に付けていたパイロットスーツの事だと理解した光はメンテナンスマシーンから降りると更衣室へと駆け込む。


「これでいいんだな?」


しばらくして着替え終えた光が更衣室から出て来てメンテナンスマシーン上で待っていた博士の元へと向かう。

光のパイロットスーツは縁や久遠と同じく青を基調とし各所にプロテクターが装備されており、二人のスーツと異なって緑のラインが走っていた。


「うむ、そのスーツに着替えればある程度操縦の負荷も軽減されるじゃろう……それでは、乗るのじゃ!!」


パイロットスーツに着替え終わった光を見た博士が頷きそう言うと、フォトンランダーのコックピットハッチが開いてコックピットが露になる。

光はその中に身を滑らせシートへと座るとコックピットハッチが閉まり、コンソールに光が灯り始めて発信準備が進んで行く。その様を光が深呼吸しながら見守っていると、スピーカーから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「どうやら、戦う気になってくれたんだな」

「平野さん、戦闘の様子はどうなってますか?」

「現状クロノドローンの編隊とクロノギアス一体が相手だ。増援の類いはまだだがこの後に来る可能性もある」

「クロノギアスの進化もあり得ますしね」


クロノギアスも出現しているとなると前回の様にクロノギアスが進化する可能性もある。もしそうなったらフォトンファイターやフォトングライダーだけでは相手に出来ない。

それも察しているらしくスピーカー越しに平野が頷く音が光の耳に聞こえた。


「……ああ、君の言う通り時空転移ゲートが解放されたままである以上クロノギアスの進化の可能性もある。縁は速攻で倒そうと頑張ってはいるんだが、クロノドローンからの妨害で上手くいってない」

「滝音が相手していても、数が多いと……」

「一機で相手取るには少々手強い……早々と彼等の救援に向かってくれ!!」

「了解!!」


光が返事をすると同時にメンテナンスマシーンが離れ、正面のシャッターが開いてトンネルが現れ、それと同時にトンネル横の信号に赤の光が灯る。


「進路クリアー。フォトンランダー、発進!!」

「了解!!フォトンランダー、出るぞ!!」


コールと共に青になった信号を見て、光は思いっきりアクセルを吹かす。

そのままトンネルをトップスピードで駆け抜け、二人が戦っている市街地に向かって行った。






クロノドローンとクロノギアスを相手に数的不利を押し付けられつつも、久遠が徐々にクロノドローンを落として行き差を縮めて行く。


「残り五機だ、それまで持ち堪えろ!!」

「分かっている。久遠もミスしないように──っ!?」


残り五機となったクロノドローンを久遠が縁に報告すると、縁は久遠に気を抜かない様に釘を刺そうとして嫌な予感に後ろに飛び退き、引き下がる。


「時空転移ゲートから光……まさか!!」


引き下がった縁は空を見上げ、時空転移ゲートから光が放たれたのを見て顔をしかめる。放たれた光はクロノギアス出現の際と同様に円錐状に広がってクロノギアスを包み込み、ノイズを纏わせながらその姿を変化させて行く。


「くっ……!!パーティクルキャノン!!」


五機のクロノドローンに追われながらもクロノギアスが進化しつつあると気が付いた久遠が無理な機動をして反転し、クロノギアスに向かってパーティクルキャノンを放つ。

しかしそれはバリアーによって阻まれ傷一つ負わす事すら出来なかった。


「久遠!!君はクロノドローンの掃討を!!」

「縁!?」

「まだクロノギアスが完全に進化するには時間がある!!その間に出来るだけ減らしていてくれ」

「──っ!!了解した!!」


パーティクルキャノンが阻まれたのを見て縁はすぐさま久遠に残るクロノドローンの掃討を指示し、自分はクロノギアスを相手に時間稼ぎを敢行する。

フォトングライダーが五機のクロノドローンを相手に空中戦を仕掛けるのを背後に聞きながら、縁は深呼吸をしてクロノギアスの進化に身構える。

しばらくしてクロノギアスを覆っていたノイズとバリアーが消失し、進化したらクロノギアスが産声をあげる様に咆哮をあげた。

大きさは前のクロノギアスと同じ様に二十五メートル位になり、その巨体を支える様に下半身が太く逞しくなる。

しかし前のクロノギアスと違い、両腕は何か巨大なブロックを思わせるナックルガードに包まれて、背中にも同様のパーツが取り付けられている。

尻尾の先端には武器の類いはついておらずただ尻尾の長さが伸びただけだった。


「前とは別物か……けど、やるしかない!!」


前のクロノギアスとは異なる姿に一抹の不安を感じるも、気合いを入れ直して縁はクロノギアスへと向かって行く。

スラスターを吹かせて急接近して来るフォトンファイターにクロノギアスは咆哮し、巨大なナックルガードで覆われた右腕を振りかぶって殴り掛かり、縁はそれを紙一重で避けて胴体にフォトンファイターの拳を打ち込んだ。


「っ!?効いている……のか?だったら!!」


打ち込まれた拳に対して怯むクロノギアスを見て、前のクロノギアスと比べて装甲が薄いと見た縁はラッシュを仕掛ける。

連続して繰り出される拳と蹴りは、着々とクロノギアスへとダメージを与えて行く。


「短いスパンだったから、十分な性能のものを作れなかったんだな……」


クロノギアスがフォトンファイターの攻撃でダメージを負う理由を分析しつつも縁はラッシュの手を緩めず、何度も攻撃を受けた箇所に小さな凹みが現れる。

クロノギアスも自分がいいようにされるのに苛立ったのか、フォトンファイターを引き離す様に尻尾を振るい、縁はそれをバックステップでかわす。

しかし、それはクロノギアスの狙い通りだった。


「な──っ!?」


薙ぎ払われた尻尾を避けた縁の眼前にクロノギアスが右ナックルガードを突き付けると、先端部が開いて巨大な砲門が現れる。

縁が咄嗟に射線から逃れようとするも間に合わず、砲門からパーティクルキャノンと同等の太さのビームが放たれてフォトンファイターへと直撃した。


「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!」


フォトンリアクターから発せられるP波動による簡易的なバリアーのお陰でビームが機体を貫通する様な事はなくとも、ビームの直撃を受けた衝撃でフォトンファイターが大きく後ろへと吹き飛ばされる。


「縁っ!!」


五体のクロノドローンを掃討し援護に向かって来た久遠が吹き飛ばされるフォトンファイターを目にし、敵意を露にしてクロノギアスへと向かって行く。

しかしそれに気付いたクロノギアスが咆哮をあげると、背中のパーツが展開して二十発のミサイルがフォトングライダーに向かって放たれた。


「な──っ!?」


突然のミサイルに久遠は、咄嗟にフォトングライダーを反転させてミサイルを振り切ろうと動き回る。

半ば機体性能に無理を言わせた機動でミサイルを何発かは振り切るも、全ては振り切れずに徐々にミサイルとの差が縮まっていき、その内の一発が距離を詰めた瞬間、フォトングライダーを爆煙が包み込んだ。

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