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そしてそこで俺は全裸にされた。
服も全部調べられた。
ズボンのポケットまで。
となるとあれというのは、わりと小さいもののようだ。父が言った。
「おい、ないぞ。たかひろ、どこへやった!」
俺はそこで言った。
「なにも覚えてない」
「えっ?」
「えっ?」
父と弟が同時に言った。
俺は父の手を取ると、自分の後頭部にあてた。
自分の手を見て父が言った。
「えっ、おまえ」
「崖から落ちて、頭を打った。ここがどこなのか自分が誰なのかもわからない。あんたたちのことも、まるで覚えてない。あれがいったいなんなのかも、まるでわからない。覚えてないんだ」
父と弟がお互いの顔を見た。
「本当か?」
父がそう言い、俺は大きくうなずいた。
弟が言った。
「嘘ついてるんじゃないのか」
「頭に怪我をしているのは確かなようだが」
「地下に閉じ込めればいいじゃろう」
老人特有だが力強い声が響いた。
振り返ると、いつの間にか老いた男が鋭い眼で俺を見ていた。
父と弟はしばらく考えていたが、やがて父が言った。
「とりあえずそうするか。嘘だったとしても、いずれ白状するようになるだろうし、記憶をなくしたと言うのが本当だとしても、そのうち思い出すかもしれん」