六楽章 シャム猫
魔王直属の四天王に負け、仲間と一緒に王城で鍛え直してた時の話。
格闘家と仲がいい第三王子様の部屋で、シャム猫が1匹飼われていた。
元々は婚約者である公爵令嬢が飼ってた猫だったんだけど、魔王軍との繋がりが発覚して婚約破棄する際、
「この猫を私と思って一生面倒を見なさい」と押しつけられたらしい。
鍛え直しはじめて二週間ぐらい経った頃、僕は第三王子の部屋で王子と二人で次の戦いの作戦を練っていた。
メイドに頼んだ夜食が来るまでの間、王子は報告書の束をペラペラと捲り、僕は戦略地図の上に置かれた駒と睨めっこをしていた。
すると、シャムが地図の上に乗ってきた。
「ほら、邪魔だよ」
と言った瞬間、駒を動かそうとしていた僕の手に激痛!
シャムがいきなり噛みついてきたんだ!
甘噛みではない、本気で肉を食い千切るような噛み方!
オーラで護ってるはずの肌は裂け、血が吹き出す!
「うあっ!」
と声を上げた瞬間、またも激痛!
腕に牙を喰い込ませながら、思いっきり爪を立てている!
俺は思い切り腕を振り上げてシャムを投げた。
しかし、シャムは身を翻し再び立って襲う構えを見せる。
「シャアアアあああああああああああーーーーーーーー!」
シャムの鳴き声が徐々に変化してきた。まるで、人間の泣き声だ!
こんな大きな声なのに、こんなに暴れてるのに、隣の王子は全く気付いていない。
よく見るとシャムの影が大きくなり、人の形になってきていた。
そして、下顎が外れそうなくらいに口をあけ、何かに狙いをさだめた様だ。
おそらくは僕の首筋……逃げなきゃ! しかし体が動かない!!
「そこまでだ」
聞いたことのある声、神殿生まれで神聖力の強いティーちゃんだ。
ティーちゃんは僕とシャムの間に立つと、あるものを振り回した……
”ねこじゃらし”だ!
シャムがねこじゃらしに飛び掛った瞬間、ティーちゃんが「破ぁ!!」と叫んだ。
するとねこじゃらしが光り、シャムの影を引き裂いてゆく!
ついにシャムの影はもとの猫の影となった
その瞬間シャムの首輪がパァンと弾けた。
「この首輪に念を込めてたんだな」
シャムは人? が変わった様に大人しくなっていた。
またしてもティーちゃんに助けられてしまった。僕はホッとして、ふと思った事を聞いた。
「なんでティーちゃんがここにいるんですか?」
「夜食のフルーツサンドイッチと砂糖たっぷりミルクティーをお持ちしました」
神殿生まれはスゴイ、僕はサンドイッチを頬張りながら思った。