第一話 この街ときどきビー玉落ちる
第一章
この街ときどきビー玉落ちる
「この街ときどき不思議が起こる」
じいちゃんがよく話した言葉だった
僕は三年ぶりに故郷に帰った。
故郷に着いたのは高校入学の二日前の夜、三年前と変わらない風景を見て少しホッとした表情を浮かべると
「ちょっと散歩してくる」
と家を飛び出した。
家の近くの公園を早々と歩き、景色を堪能していると何か遠くから聞こえてくる。
すごく綺麗な歌声で思わず、聞き入ってしまうようなそんな歌だった。
歌の方へ駆け出すと見覚えのある少女が弾き語りをしていた。
「秋ちゃん?」
僕は思わず声を大きくあげてしまった。
少女はこちらを見てすぐに僕の元へ駆け出してきた。
「え〜っと う〜んっと どちら様で?」
僕は少し残念そうに
「安城春希だよ 覚えてない?」
そういうと少女は
「ハルちゃん⁉︎ 変わりすぎて分からなかったいつ戻ってたの?」
僕は彼女にこれまでの経緯を話した。
「そっかぁー、ハルちゃんも明後日から安学かぁ〜 一緒の学校で嬉しいよ」
「もってことは秋ちゃんも安学なの?」
「そうなの!あとさ冬馬もなっちゃんも安学なんだよ、また『この街隊』の復活だね」
彼女の嬉しそうな顔を横目に僕は頷く
「ハルちゃん明日は暇かな?」
「夕方からなら暇だよ」
「夕方から冬馬となっちゃん誘って秘密基地行こうよ そのままにしてあるからさ」
「わかったよ、用事終わったら連絡するからLINE教えて」
「うん!」
秋ちゃんとLINEを交換し彼女を家の近くに送り、帰路につく。
家に帰るといつも通り、家族四人で夕飯を食べ妹の今日の出来事や新しい学校の話などたわいも無い話をした。
夕飯の後はお風呂に入り、明日の準備をし、ベッドに横たわった。
引っ越しの疲れからか僕はすぐ寝てしまった。
次の日、僕は朝七時に起床し早々に身支度を済ませ、家の近くの『桜井神社』に向かった。
桜井神社に着き、本殿に入ると
「人神様に、頭を下げよ」
両端に居座っている十数頭の動物が僕に敬意を表していた。
「前にも言ったと思うがそんなに畏まらないでくれよ、お前たちの神様になった覚えはないし、どちらかといえば僕はお前たちと友達になりたい、せめて昔みたいに春様と呼んでくれ、その方がまだ幾らかマシだ。」
そういうと動物達のリーダー格である猫は食い気味に
「そんな恐れ多い、我々の神にそんな無礼なことは出来ません」
そう、三年前じいちゃんが死んだ時からか動物の声が聞こえるようになったり、会話ができるようになったり、身体能力が少し上がったと言った現象が発生し、じいちゃんが死んだ数日後にはここにいる猫、僕は『ミャーコ』と呼んでいるが、ミャーコを筆頭に神と崇められるようになってしまったのだ。
どうやら僕の家は代々この安城市に住む、動物達の神として生活してきていたらしい。
昨日秋ちゃんと話している間もずっと僕に向かって助けを求めていた。
「それで、何かあったのか?」
「そうです、本題がありまして」
ミャーコは手にビー玉のような綺麗な球体状の物をこちらに見せる。
「何だこれは?」
ミャーコからビー玉を受け取る。手に持つとビー玉そのものの触感で不思議な雰囲気を感じた。
「はい、その前に、この町の現状を話します。春様がこの町を不在であった三年の間、この町を抑えていた抑止力が無くなってしまいました。」
「僕、ここにいた時、特に何もやってないんだけど?」
僕は神と崇められて一カ月も安城に滞在していない。そのため、本殿にいる動物達の名前もミャーコしか知らないのだ。
「いえ、春様は居るだけで効果があるのです。 春様が居ない間に力を付けた動物達が悪い方向に進化してしまいました。 私達はそういったイレギュラーな存在を『変異動物』と呼んでいます。」
「力を付ける?変異動物?」
僕は食い気味にミャーコに問いかける
「そうです。 私ミャーコも変異動物の一頭でございます。変異動物と呼ばれるものは昔から存在はしていました。 ですが人神様が長い年月、町を離れたことが無かったため、ここまでの数を変異することはありませんでした。」
「それでそのビー玉も変異動物の所為だってことか?」
「そうでございます。 変異動物トンビの『鳶郎』の証言であるため、間違いありません。 その変異動物は人間を襲い、この玉を作り出しているようです。 ただ姿までは確認が出来ておらず、手詰まり状態だったのです。」
鳶郎、変異動物と気になる単語が何個かあったが僕はそれよりもビー玉の方が気になっていた。何か嫌な予感を感じたからだ。
「そうか、この玉はいったい何なんだ?」
「それが、まだわかっていません。 そこで春様に相談をした次第です。」
「そうか、まずはこの玉が悪影響を起こしているかどうか調べないといけないな、とりあえず鳶郎には町に変わったことがあったり、変異動物が出没したら僕に連絡するように伝えてくれ。」
「わかりました、私達も情報を掴みましたらすぐ連絡するようにします。」
「よろしく頼むよ」
会話を終え、神社を後にすると僕のスマホの通知音がなる。 僕はそれに目を通し、秘密基地へ足早に足を動かした。