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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
求められるのは在り方
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大将は皇帝に歩む。

九十八話

 玉座に座り、頬杖を突く。レプトは言っていた。魔力は神との通信媒体。そして神をも生む力を持っていると。


 願えば叶えられる。しかし、魔力がなければ叶えられるものも叶えられない。


 俺が願うのは……何だろうか。自分の幸せか、他人の幸せか。


 だが、それを考えるより前にやるべき事がある。


 玉座から立ち上がり、扉の方を向く。それと同時に扉が開く。


 現れたのは。


「やぁ。やっぱり君にはその場所が似合ってるよ」


 魔族になった直後も、ヒューマンになった直後も。支えてくれたのはいつだってこいつだった。


「それは皮肉と受け取ろうか?」


「いやいや、本心だとも」


 彼の手には黒剣が握られている。それを見て、地面に落ちたままの剣を拾う。


「この戦いに決着を付けようか」


 そう言い、剣の血を拭う。


 片や黒。片や白。文字通り白黒付ける。


「俺は進むぞ。(とも)として」


「僕は止めるさ。(てき)として」


 両者、共に走り出す。


 己の信念を曲げず、そして相手の信念を曲げられるとは考えていない。それが故に決着を付けるのだ。勝者が正しいという、納得のいく形で。


 サタの剣が大きく、左上から振り下ろされる。それを右下から当てに行く。


 両者の剣に纏わせた魔力が反発し合い、音を立てる。


★★★★★


「例えばの話だけどさ?」


「うん」


 徹底議論の末、脳内糖分の九割を使い果たした頃。サタヌキアに向かって問いを投げる。


「もしこの世界を元に戻すことが出来たとして。俺らの記憶はなくなるわけじゃん?」


「そうかもしれないね」


「じゃあ時間を戻しても、また同じことが起きるんじゃ……」


「まぁそれは大丈夫だよ」


「なんでそう言いきれるのさ」


「そうなったらまた時間を戻せばいい。そうじゃない?」


 イタズラを考えついた少年のように、意味深な表情で笑う。


「いやいや……」


「もしかしたらこの世界は何回目かかもしれないよ?」


「……どういうこと?」


「前にも世界は崩壊して、前にも世界は作り直された可能性があるって事」


「……考えたくないな」


「そう? 結構この世界も楽しくない?」


 そう言ってサタヌキアは外を見る。小窓からは街が見える。深夜だというのに光がなくなる様子はない。


 街の人々、精霊の皆。確かに楽しいかもしれないな。


★★★★★


 火花を散らせ、鍔迫り合いが行われる。


「なんで僕だけは殺さなかったんだい?」


「いやいや、殺しただろ」


「皆と同じにしなかったのはってっ」


 そこまで言うと、サタは剣で俺を弾く。その衝撃に少し飛ばされ、数メートルの距離が空く。


「聞いたつもりなんだけど?」


「……さぁな」


 あの笑い方だ。全て分かっていて。それでも尚、聞いている。イタズラの様な、説教の様な。そんな笑い方。


 剣にもう一度魔力を込める。そして足元から、金属の魔法を使って砂鉄を撒き続ける。


 両者目線を外すことなく睨み合う。呼吸が重なり始め、やがて鼓動まで揃う。


 絨毯の上で広がり始めた砂鉄が、サタの足元まで届いたその瞬間、走り出す。サタも同じタイミングで走り出す。


 黒剣が右上から振り下ろされ、白剣は左下から振り上げられる。ぶつかり合い、火花が散る。


★★★★★


「覚えるのキツいなー……」


 木の椅子の背もたれを軋ませ、伸びをする。


「かと言って、こういうのを知ってるのは僕達だけになっちゃう訳だしねー」


 サタヌキアは本を見たまま答える。


「後二百年だっけ。入れ替わるのは」


「そうだね。圧政も行ってるみたいだし、もしかしたらだけど、もう少し早まるかもね」


「圧政かぁ……この街の人達はどうなんだろ……」


 サタヌキアは本を閉じ、こちらを見る。


「まぁ、大きな不満もないし、良いんじゃない?」


「小さな不満。大きな過ち」


「縁起でもない」


 表面だけで笑っているような、いつもの笑みを見せ、また本を読む作業に入る。


 大きく伸びをし、息を吸い、背中の骨を鳴らして吐き出す。そうしてまた本に目を戻す。


★★★★★


 弾かれ、両者の態勢が崩れる。サタは黒剣を両手で握り直し、直上から振るう。俺も剣を両手で握り、左から右へと剣を走らせる。


 互いの剣がぶつかり、削り合う。


★★★★★


「なんで精霊から名を取ったの?」


「え?」


「俺達の名前。昔の名前でもよかったのにさ」


 精霊会議でのことを思い出し、聞いてみる。


「まぁ、そうだね。カッコいいから的なね」


「えぇ……」


「カッコいいでしょ? ルシファーって」


「昔に堕天使って聞いたことがあるけど」


 神に逆らっただとか、悪魔だとか。あまり良いイメージはない。


「まぁまぁ。カッコ良ければ全て良し。って言葉もあるくらいだしさ」


「初耳なんだけど」


 そしらぬ顔で、サタは作業に取り掛かる。


★★★★★


 パキッと欠ける音がする。サタの剣ではない。俺の剣からだ。


 サタの剣がくい込んでいる方の刃先には、ヒビが入っている。鍔迫り合いの体勢のまま、ヒビはもう片方の刃先まで届き、剣が真ん中から折られる。


 そのまま振り下ろされたサタの剣は、俺の左腕を切り取り、左膝を軽く切った。


「ぅあぁぁあああああ!!!」


 激しい痛みに、思わず声が出る。


 血飛沫を上げ、左腕が地面に落ちる。左肩からは止まることなく血が溢れ続けている。思わず右手で左肩を掴み、うずくまる。


 だが、サタはそれを見逃しはしない。


 剣を逆手に持ち替え、真っ直ぐに振り下ろす。


 顔を横に向けた時、偶然振り下ろされる黒剣が見えた。痛みに駆られながら、体を転がす。左肩が地面に付いた途端、熱した鉄板の上に居るのかと錯覚するほど痛む。


 サタの剣は地面を刺している。左肩から上がる血飛沫で左目は見えなくなり、右手だけでサタの動向を見る。距離感がわからないまま、サタが迫ってきている。


 右手を左肩から離し、地面を撫でる。そして、地面に撒いておいた砂鉄に、剣の形を模し、サタを貫くよう命令をする。


 砂鉄の一つ一つに魔力が行き渡り、まるで磁石に導かれるかのように動き出す。その様は、地面から鉄の剣が何本も生えているようだった。


 既に走り出していたサタは、急に止まる事など出来ず、体を何本もの剣に貫かれる。足も、体も、腕も、心臓も、頭も、黒剣さえも。


★★★★★


「じゃあご飯にしようか」


「そうだな。今日はもう疲れた」


 皆の相手で午前が潰れてしまった。たぶん午後も同じだろうなぁ……


「お疲れ様。明日はたぶんもっと大変だよ」


「想像したくねぇなぁ」


「大丈夫。皆いるから、ね?」


 そう言ってサタは先に部屋を出ようとする。その背中に向かって。


「……ありがとう」


「え?」


「いや、なんでもない」


「ツンデレみたいで気持ち悪いよ?」


「聞こえてたなら聞き返すなよ!」


 サタが笑う。俺もつられて笑う。この時間が続くように、俺は願おう。


★★★★★


 片や切られ、血を流した勝者。


 片や貫かれ、血を流した敗者。


 死闘の幕は、ここに閉じた。


 俺は砂鉄をかき集め、左肩を覆う。痛みが無くなることはないが、出血死はなくなるだろう。


 そして、サタを貫いている鉄剣を砂状に戻し、サタに近づく。


 最後まで真っ直ぐに。本当に止める気でいたのだ。いてくれたのだ。皆が望んだ世界を、自分の理由で壊した俺を。


 魔力の動きを感じる。探れば、抜かれる瞬間だった。ソレを取り、胸に仕舞う。


 今までで一番温かいソレは、もう俺を止めようとはしていないようだった。サタのモノだけではない。ベルゼもアストも、ルキフグスもレプトも。フルもサルガタナスも、ネビロスも。皆が俺の選択に同意してくれているようだった。


 そして、俺の心は決まっている。


 振り返り、玉座へと向かう。


 全てを終わらせよう。

一番思い入れのあるキャラでした。


次の話が、物語としては最終話となります。


最後の話は過去編を書こうと思っています。


【かこ】だけに!

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