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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
求められるのは在り方
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共に在る

八十八話

 重たい目を開けると、愛するあの人はいなかった。爆発が起こる直前、私はあの人に手を掴まれ、引き寄せられた。そして、そこからの記憶はない。


 煙が巻き起こる中、痛む体を起こす。周辺は燃え、溶け、抉れている。


 右腕に走る痛みに顔をしかめる。左手で押さえるが、血は止まらず、出続ける。一歩前に進む。右足にも痛みを感じ、下を見る。右足の太ももに、石が深く刺さっている。


「シロさん……? いませんか……?」


 草木が燃えるパチパチという音にかき消されそうなほど、小さな声。誰にも届かない。誰にも届かなかったが、何にもではなかった。燃えさかる炎の先から唸り声がする。


 炎を突き破り、火竜が顔を出す。まだ生き残りがいたことを嬉しがるように唸る。


 私の足は動かない。しかし、足から上は逃げようと動く。結果、足がもつれてその場に倒れ込む。


 火竜は地面を一歩一歩踏みしめ、こちらに近寄ってくる。


 体が動かない。


 昔、私がまだ幼かった頃、魔物の巣に置き去りにされたことがあった。その頃の記憶は未だ消えることはなかったが、魔物との戦闘となった時にその頃の記憶が蘇ることは、最近はなくなっていた。


 なぜなのかは今ようやく分かる。あの人が隣にいてくれたお陰だ。


 前に、あの人と離れて戦闘をしたことがある。資金繰りで、臨時のパーティーを組んだ時の話だ。あの時はずっとハラハラしていた。自分があの人の隣にいて、守ってあげなくて大丈夫かと心配していたと思っていた。しかし、あの時の感情も自分に嘘を吐いていたのだ。


 私はあの人を守っているようで、守られていたのだ。それが心のどこかで分かっていた。だからこそ、守りたいと何度も思った。そして何度も守られてきた。


 いつも私の隣にいるのに、いつも私の手の届かないところに行ってしまうのだ。


 火竜は口を開ける。


 幼い頃から何度も見た魔物の口。魔物は狡猾で、獲物が苦しむ様を楽しむのだ。肉を引きちぎり、骨を砕き、血を飲む。私がどれだけ泣き叫ぼうとも、どれだけ許しを請おうとも、やめることはない。


 火竜の喉奥に小さな炎が見える。


 先ほどより圧倒的に小さな炎。一発で私が炭にならないほどの火力。あぁ、まただ。またこの感覚だ。手足が冷たくなる感覚。


 助けて、と叫ぼうとするが。


「ヒュッ……」


 喉が張り付き、声が出ず、変な音が喉から漏れ出る。


 動かなければ死ぬ。そうと分かっていても、私の恐怖(トラウマ)は体を動かしてはくれない。


 そして火竜の喉奥の炎が吹き出され、こちらに向かってくる。焼けた地面を更に焼き、体の表面だけを焦がすような火力でじわじわと。


 そしてその炎が体を焦がす直前、目の前に生まれた水の壁に阻まれる。


「ごめん。遅くなった」


 何度も聞いたその声に振り返る。私の英雄は、左手の肘から先を失ってもなお、悠然と立っている。


「大丈夫?」


「……はいっ」


 シロは剣を腰に収める。そして頭を撫でてくれる。


 火竜の炎が消えると同時に水壁も消える。火竜はこちらを見て、口を大きく開ける。そして喉奥に炎を生み出す。先ほどとは全然違う、全てを焼き焦がすような火力。でももう怖くはない。シロがいるなら大丈夫。何があっても大丈夫。


「ルル。ちょっと手伝ってね」


 そう言って右手を伸ばしてくる。それに対して左手を出す。動いたことで右腕に痛みが走るが、シロが一緒なら、こんな痛みも何のその。


 シロの手はいつも温かい。指を絡め、しっかりと握る。そして感覚が共有される。地面に点在している魔石一つ一つに魔力が注がれていて、現在もその魔石と魔力が共有されている。


「シロさん……これは……」


 シロと魔力の共有を行ったことで、シロが共有している魔力が見えるようになった事は分かる。しかし魔石一つ一つと魔力共有をするなんて。そんな事出来るはずがない。でも、実際に出来ている。そして、それをしているのがシロさんだというなら、私は疑問は抱かない。


「たぶん俺だけじゃ足りないからさ。ルルも。お願い」


 そう言って、シロは握る手に力を込める。私も強く握り返す。シロが魔石に魔法を送り始める。私もシロに、魔法に変換した魔力を流す。シロの腕を通った私の魔法は、魔法を伝達する形式の魔力の線のようなものを伝って、魔石に送られていく。地面に落ちている魔石に魔法が届いた瞬間、魔石は光を放ち、敵を攻撃する。


 次々に。魔力をシロに送れば、その何倍もの魔法が魔石から放たれる。それが楽しくて、様々な魔法を送る。地面の魔石が魔法に反応し、色々な色に光り、攻撃をする。私の見たこともない色の魔法が出たり、いつもの魔法の何倍も大きなものが出来上がったり。


 地面が色とりどりに光り、美しいほど強い魔法が放たれる。敵を攻撃しているのだが、とても美しい。ずっと見ていたくなるほどに綺麗だった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 何分ほど経っただろうか。自分の中の魔力が切れ、ゆっくり座り込む。


「大丈夫?」


 そう言ってシロが私の顔を覗き込む。


「はいっ。大丈夫です」


 よかった、と言ってシロは火竜の方を見る。絶命し、氷漬けになっている。地面に穴を開け、その穴に氷漬けの火竜を入れる。


「わざわざそんなことしなくても……」


「まぁなんとなく」


 そう言ってシロは力なく笑う。


「それよりも、さ。もうこれで終わったよね?」


「はい。これで完了です!」


 シロが背中を伸ばし、腰の骨を鳴らす。


「じゃあ帰ろっか……って言っても……」


 私の魔力は空だ。


「シロさんは魔力残っています?」


「たぶん」


 その言葉が聞ければ十分。シロに近づき、ハグをする。顔をこすりつけ、シロにお願いをする。


「また飛びたいなぁ……なんて?」


 そう言うとシロは大きなため息を吐く。そして、いたずら好きの子どもを見るような目で許してくれる。


 実は、空を飛ぶのは少し怖いのだが、シロの体温を感じられるから結構好きなのだ。

イルミネーション的な感じでお願いします。


あと、敵殺してるのに嬉々としてるルルがサイコパスっぽいな。と思いながら書いていました。


街に帰って、ちょっと真剣な話したら魔界直行です。そういう場合って直行って言わないんですかね。

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