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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
求められるのは在り方
87/100

死闘

八十七話

「さて……どうするかな……」


 火竜は息を吸い込んでいる。ウンディーネは防げてあと一回。その一回が勝負だ。


 正直なところ、まだまだ魔力は有り余っているので、多少の無茶はいけるだろう。ありえないくらいに大きな氷塊を上からぶつけるとか。


「……やってみるか」


 成功するか失敗するかは半々だ。一八にウンディーネは使わせられない。


「ルル、ちょっとやってみるね」


 そう言ってルルの横から離れ、ウンディーネよりも前に出る。そして水壁を生み出す。


 息を吹き出している間、上空に気を配れるほど、火竜は頭が良くはないだろう。火を吹くより氷塊を早く生み出せば警戒されるかも知れない。かと言って小さなサイズでは大ダメージとはいかないだろう。大きな氷塊を生み出すのも時間がかかる。丁度の時間を見極めなければ。


 火竜は口を開け、喉奥の炎を見せつける。水壁越しの炎でも十分な威力を感じとる事が出来る。その炎がこちらに近づいてくる。火竜の吐き出す炎の、美しさと恐ろしさに心奪われてしまいそうだ。火竜はもう炎を吹き出している。今しかない。


 火竜の頭の上に巨大な氷塊を発生させる。大きさは火竜の頭の十倍ほど。下端は尖らせ、少しでもダメージを増やす。


 イメージしていた大きさの氷球が出来上がると同時、火竜の炎が弱まる。それを見た瞬間、氷塊を落下させる。吹き出された炎で水壁は大半が失われていた。失われ、火竜と俺との間には何も存在しない。氷塊が火竜の頭に落下するのを、しっかりと肉眼で見た。


 氷塊は火竜の頭に当たり、そのまま押しつぶす。火竜の頭は地面に埋もれ、氷塊が蓋をしている。


 それを見た瞬間、走り出す。


 卑怯臭いが、正々堂々やった結果だ。文句はあの世で聞こうじゃないか。


 火竜の頭は氷塊に押しつぶされたまま動かない。このまま首を切らせて貰おう。そう考え、腰から剣を抜く。そして、その剣に氷を纏わせる。


 氷塊を飛び越えようと、足に鎧を作り裏で爆発させる。そして体が空中に浮いた瞬間、パキパキという音と共に、火竜は氷塊を壊しながら頭を抜く。完全に間に合わない。


 空中で飛んでいる俺、そしてそれに気が付いた火竜。避けるために足裏の火力を高めるには、火竜との距離が近すぎる。もう突っ込むしかない。


 火竜は口を開く。しかし喉奥に炎は見えない。恐らく飲み込むつもりなのだろう。好都合だ。


 フーリエのヒュドラを倒した時と同じく、剣をそのまま口に突っ込む作戦をとる。足裏の火力を爆発的に高め、火竜の口へと突っ込んでいく。腕にはより強めに魔力の鎧を。そして剣には分厚めの氷の膜を。火竜の口がドンドン近づいていき、そして肘付近まで入り込む。火竜は瞬時に口を閉じようとするが、魔力の鎧によってそれは阻まれる。


 火竜の歯が通らないことを確認すると、剣を握る手に力を込める。イメージはヒュドラの時より大きく、それでいて鋭く。火竜の中は熱く、半端な氷では熱で溶け出してしまう。より強く、より厚く、より硬く、より冷たく。そうして剣の先から氷が生まれた瞬間、世界が回り出す。


 世界が回ったのではない。火竜が俺を咥えたまま動かしているのだ。そして空が前に見えた瞬間、火竜が俺を叩き潰そうとしている事に気が付く。しかし魔力の鎧を生み出すのは間に合わない。このままじゃ背中から地面に叩きつけられて、そのまま押しつぶされて。そう考えてしまい、無意識のうちに剣に込めた魔力を解いてしまう。


「シロさん!」


 ルルが叫んだ瞬間、俺の後ろの地面が深く抉れ、水が生まれる。それに気が付いたのは火竜の頭と共に水中に入った時だった。ルルは衝撃を和らげるためにやってくれたのだろう。そしてこの水はまだ使える。


 火竜は一瞬何が起こったのか分からず、水中に頭を沈めたままだった。しかしその一瞬は大きかった。


 火竜がまだ俺の腕を噛んでいること、そして水中に頭があることを確認すると、俺は腕の魔力を解く。


 火竜が先ほどより強く噛んでいないこと、そして混乱から魔力が解かれたことに遅れたこと。その二つのお陰で俺は腕を引き抜くことに成功する。そして腕に回していた魔力を足に。お得意の爆発魔法で一瞬で水中から抜ける。


 ルルと魔道師の魔法実験で、ルルの水は氷に変換することが出来ることを俺は知っている。そして火竜の頭は今や深い水の中。思い切りルルに向かって叫ぶ。


「凍らせてくれー!!」


 ルルはその声にすぐに反応し、火竜が顔を沈めている水を凍らせる。火竜が首を氷に突っ込んでいる間抜けなものが出来た。火竜は尾や翼を激しく動かす。しかし首は抜けることはない。


 ルルの側に降りる。


「助けてくれてありがと」


「いえ。それを聞くのはまだ早いです」


 ルルの顔は俺ではなく火竜の方を向いている。その通りだ。倒しきるまでが遠足だからね。


 俺がふらつきながら、剣にもう一度氷を纏わせようとした瞬間、ルルは火竜に向かって走り出す。ありがとうルル。


 そう言って力を抜いた瞬間、違和感を感じる。さっきまで暴れていた火竜が大人しくなっている。それにこの地響き。走っているルルは気が付いていない。顔を下に向けると、地面はひび割れ、中から赤い光が漏れ出している。それがどういうことか分かった瞬間、走り出し、ルルに向かって叫ぶ。


「ルル!!」


 ルルは振り返り、立ち止まる。ルルの手を掴もうと左手を伸ばす。


 そして触れたか触れないか。地中から爆発が起こった。

思ったより長くなってビックリしてます。

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