やっぱ戦闘はこうじゃなきゃね
八十六話
「こんな山奥にいるの?」
「でも情報ではここら辺でしたよー」
草木をかき分け進むこと数時間。太陽の動き的にそろそろ夕方っぽい。大丈夫かこれ。
「やーどこでしょうねー」
さっきからルルがこっちを見ない。
「ルル?」
顔を覗き込む。顔が青い。嫌な予感がする。
「……ルルさん?」
「あ……あの……ここ……ら辺だと……」
言葉が途切れ途切れになり、こちらを向く。もしかして。
「……遭難ですか?」
「そうなんですぅ~」
ルルは、崩れ落ちながらダジャレを言う。結構余裕っぽく見えてしまう。
「よし。じゃあちょっと見てくるわ」
そう言って、魔力で足だけに鎧を作る。そして炎を生み出し飛ぶ。
上空まで飛んではみたものの、何も見えない。火竜はどこだろうか。
「シロさーん」
ルルに呼ばれて降りる。
「どした?」
「わ、私もいいですか?」
ルルの目がキラキラしている。この前の自転車もどきのせいだ。ルルに変な事覚えさせちゃったかなぁ。
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「うひゃぁあああああ!!!」
奇声を上げるルルを抱きかかえ、空を飛び回る。
日は暮れ始めて、赤く染まった空がなんとも美しい。
「もっとぉーー!!」
風の音で何を言っているのか分からない。
「きこえないーー!!」
「もっとはやくぅーー!!」
「よーし!!」
ルルを掴む腕に力を込め、足裏の炎を強める。
「ひゃぁああああああ!!!!」
一層大きな声で叫ぶ。
口乾かないかな。虫とか入らないかな。大丈夫かな。
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楽しんだ後は安全運転でゆったりと。
「あれじゃないですか?」
ルルが前方を指さす。ドラゴンのような生き物が飛んでいる。
「よし。掴まってろよ?」
「え? うひゃ!」
ルルを左腕だけで抱きかかえる。そして、左腰に差したガウルの剣を器用に抜く。
そして足裏の炎を最大限まで強め、火竜に突撃する。見えるのは一体。余裕だ。
「っせい!!」
かけ声と共に火竜の腹の下に潜り込み、後ろ足辺りに剣を突き刺す。そして炎で生まれた推進力で、喉元まで切り裂いていく。
「ゴァアァァアアア!!」
火竜は叫び、炎を吐き出す。それをすんでの所で回避する。そして、ルルがフェンリルで炎を消してくれたりもした。
隙を見て、もう一度腹の下に潜る。そして、腹の真ん中辺りに剣をもう一度突き刺す。剣と火竜の皮膚の隙間から酸素と水素を流し込む。
火竜は俺をふりほどこうと体を回転させるが、それに負けじと付きながら流し込む。突き刺した辺りから膨れていく。もう十分だろう。剣を引き抜いて、火竜の真正面に立つ。
火竜は口を大きく開き、喉奥に炎が見える。
「シシシ、シ、シロさん!!」
ルルが俺の服を引っ張る。大丈夫大丈夫。
喉奥の炎が膨れ、吐き出される直前、体の中心から爆発する。体が二つに千切れ、落下していく。
「び、びっくりしました……」
腕の中で脱力するルル。あれだけスリル満点の飛行したのに……こっちの方が怖いのか。
「あっ」
そう言ってルルが俺の後ろを指さす。それにつられて後ろを見る。そこには大きな口があった。しかも火を吐く直前の口が。
「あっ」
時既にお寿司。
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「ルル大丈夫?」
とっさに水の膜を生み出し炎は防げた。しかし、炎の勢いが強すぎて片手では足りず、両手で防いだ結果ルルを落としてしまった。地面に落ちてしまう前にキャッチできたものの、ルルを投げ捨てるとは……いや投げ捨ててはないんだけれどもさ。いやぁ、まだまだですわ。
「あ、はい。大丈夫です。シロさんこそ」
「いや、俺は大丈夫……だけど……」
先ほどの火竜よりも何倍も大きな火竜が上から降りてくる。そして口を大きく開く。炎を吐くつもりか。
水の壁を分厚めに生み出す。防げるはずだ。そしてルルを後ろに隠す。
火竜の口から吐き出された炎は周辺の草木を燃やす。右や左から炎の熱気が当たる。余波にもかかわらず、腕が燃えそうな程熱い。
「フェンリル!」
ルルの叫ぶと同時に、氷の狼が炎を裂きながら火竜に向かっていく。しかし、火竜の口に到達する前に消えてしまう。
「くっ……」
フェンリルじゃダメか。火力も先ほどの火竜とは段違いだ。
だが稼いでくれた時間を無駄にはしない。魔力で足と腕に鎧を生み出し、火竜に向かって走り出す。火竜はゆっくり降り、着地しようとしている。周辺は焼け焦げ、遮るものはない。このままならば間に合う。届け!
伸ばした剣が、火竜の喉に刺さる直前、火竜は大きく羽ばたく。その羽ばたきによって生まれた風で吹き飛ばされる。思ったよりも飛ばされ、ルルの足下まで転がっていく。
「大丈夫ですか!」
「うん……ありがと」
差し出された手を掴み、立ち上がる。
ありえないほど強いわけでもないけれど……勝てそうなほど弱くもないな……
「大丈夫です。任せて下さい!」
ルルが俺の前に立つ。
「いや……ルル……」
「守らせて下さい。久しぶりに、ね?」
優しく笑うルルに何も言えなくなる。仕方ない。だが、ルルには怪我一つ負わせるつもりはない。
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「恐らくですが、火竜の中でも上位種です。強さ的に、最果ての街の時に戦ったドラゴンと同じくらいの強さのはずです」
あの時って、何十人も束になって倒した記憶があるんですけれど。
「まぁ、ルルなら大丈夫だよ。全力でサポートもするし」
「えへへ。ありがとうございます」
ルルは笑うと、前を向く。火竜は息を大きく吸っている。
「お願いします! ウンディーネ!」
火竜と同じくらいに大きな水球が生まれ、女性の形になっていく。四大精霊の一人だ。
ウンディーネは手を大きく広げると、水の膜を張る。火竜の炎はしっかりと防がれている。もしかして俺は必要ない?
「お願いします! ノーム!」
火竜やウンディーネに比べると小さいが、がっしりとした体つきの男性。この人も四大精霊の一人。
ノームは一度拍手し、地面を両手で叩く。かかって来いよド三流とか言い出しそう。格の違いを見せつけられそう。
ノームが両手を地面に付けた直後、火竜の足下から尖った土塊が生まれる。しかし、火竜の体を貫通はしない。
「そんなっ……」
ウンディーネ体の七割ほどを失っている。水の防御壁に回し、蒸発して失ったのだろう。
「シロさん……ごめんなさい……」
ルルの後ろから横に行く。そして頭を撫でる。
「大丈夫。ルルを守って、ルルに守られる。そういう関係の方が良くない?」
ルルは一瞬驚いた表情をした後、笑う。
「分かりました。じゃあそれでいきましょう」
ルルが左手を出してくる。それを右手で握る。もう日は落ちてしまったが、ルルの顔はしっかり見えている。うん、今日も可愛い。
「ウンディーネはあと一回しか防げなそうです。そして、シルフやサラマンダーは相性が悪いですし、ノームでは……」
「大丈夫だ。任せろ」
その言葉にルルは頷く。
任せろ。
何も考えてないけど。
僕も何も考えてないんですよね。
そして四大精霊はもう出ないとか言ってましたね。
たぶん人界の最後の戦闘ですから格好良く決めたいです。




