クエストという名のデートという名目の実験
八十五話
「お願いします!フェンリル!」
ルルの杖の先から氷の狼が飛び出る。そして前方の敵を蹂躙し尽くす。
「確かに威力上がってるなぁ」
複雑な命令句が必要なく、意のままに操られる。そりゃ魔道師は行きたがるわな。
ルルと一緒に受けたクエストは、ゴブリン四十頭の討伐。そして火竜二頭の討伐。ゴブリンの方はもう半分くらい片付いた。
「では次はシロさんの番ですよ」
よし。土塊を生み出す。そしてそれを人型に整える。金属を生み出し剣に変え、人型の土に持たせる。
「さて、塚原殿。お頼み申す!」
ちょっとそれっぽく言ってみる。俺の中に存在する俺ではない魔力。それを土塊に乗せる。
「ふむ。中々」
そう言って人型の土あらため、塚原剣士が生まれる。体を動かし、フィット感を確かめている。良い感じっぽい。つかッチ頑張って!
「お願いします」
「応」
その一言と共に塚原剣士は走り出す。そして目にも留まらぬ速度で剣を振り、ゴブリン二体を同時に切り伏せる。そのまま流れるように次々倒す。十頭倒したところで止まる。
「私はここで」
それだけ言うとつかッチは俺の中に入ってくる。目の前に残ったのは土塊のみ。早業で真似は出来ないが、分かったことが一つ。俺の魔力は消費しないようだ。その代わり、俺の中に戻ってからはしばらく休息が必要みたい。魔道師からすれば、魔力無しに使役魔法が使え、しかもその間に自分で魔法が使えるのか。便利だなぁ。
納得したところで。
「さて。やりますか」
剣に水を纏わせ、その上に火を纏わせる。熱で変形しないように気を使っての事だ。
そして走り出し、剣を振る。ゴブリンの傷口を焼き切る。意外と派手さがないな。
じゃあ次だ。表面の火を消す。剣の刃の片面に酸素、もう片面に水素を生む。皆大好き爆発魔法。魔法って言うか化学って言うか。
剣を振り、切り裂く。そうやって出来た傷口に、酸素と水素を塗るように固定させる。結果、切れても血が出ない不思議な傷口の完成。
切られて痛みはあるが血は噴き出さない。それを不思議に思いながらも、切り傷のあるゴブリンもこちらに向かってくる。
三体を切り、酸素と水素を固定した。そして後ろを向く。こちらに向かって走ってくるゴブリン。全員腹に切り傷がある。そしてその傷口には爆発気体が眠っている。
よし。
「爆ぜろ」
格好良く言い放ち、左手に小さな火球を三つ作り、発射する。その火球はゴブリンの腹に向かって飛んでいく。しかし、その小ささ故にゴブリンは避けようとはしない。
そして傷口に火球が当たった瞬間、ドンッと大きな音を立て爆発する。そこまでの量がなかったので、爆発はしょうもない。だが傷口は柔らかいので、爆発を直に受けて、肉がえぐれている。結構グロテスク。
本当は、剣を鞘に入れると同時に爆発、みたいな居合いのような事がしたかったんだけれどもね。
次だ。
剣を次々生み出す。魔力の限界近くまで。
まだこちらに気が付いていないゴブリンは十頭。剣の数は、もう俺でも分からない。百を優に越している。生み出した剣に次々魔力で意思を繋ぐ。どれだけの数を生み出せるのか。そして、どれだけの数を使役できるのか。
どれくらいたっただろうか。秒に一本ずつ生み出すペースで三十分以上生み出している。合計で……あれくらいかな。うん。だいたいそれくらい。というか魔力の底が見えない。
ルルを待たせるのもあれなので、そろそろ攻撃のターンといこう。剣一本一本に意識を向ける。あっ、これは無理だ。頭痛くなってくる。
仕方がないのでお手紙を書こう。剣から剣に向かって。要は剣に繋いでいた魔力線を他の剣に繋ぎ、伝達方式で全部の剣を使役する。直接俺が動かすのは十本ほど。それ以外の剣は直接使役している剣の動きを模倣。
面白みはないが十分に強いだろう。
十本の剣を動かし、ゴブリンに突撃させる。前から後ろに。右から左に。グルッと円を描くように。様々に動かす事一分ほど。ゆっくり剣を取り除くと、そこには血しか残っていない。
「け、結構えげつないですね……」
ルルが引きつった笑みでこっちを見ている。そんな顔で見ないで。
「思ったより酷いことになっただけで、狙ってやったわけじゃないからね?」
ルルに一歩近づき、弁明する。俺の一歩前進に対し、ルルは一歩後退する。
「いや……ルルさん?」
「いえ……その……」
「ち、違うんだけど?」
一歩踏み込む。
「え、えへへ」
笑いながら一歩下がる。
「ちょっとルルー!」
叫びながらルルに向かって走り出す。
「キャー!」
どこか嬉しそうに叫びながらルルが逃げる。砂浜でないのが残念だ。
「捕まえ……た!」
そう言い、ルルの腕を掴む。その反動で倒れ込む。俺が仰向けで下敷きになり、その上にルルが俯せえで乗っかっている状態。
「ふふふっ」
ルルが嬉しそうに笑う。
「あははっ」
俺もつられて笑ってしまう。こんなのは久しぶりな気がしてならない。
「もう一回走ります?」
「僕は結構疲れました」
えー、とルルは不服そうに言う。
「いやほら、もう一つの火竜退治が残ってるしさ」
「そうですねっ」
ルルは立ち上がり、手を繋いでくる。
走ったからか、ルルの手はいつもより少し温かかった。
毎日更新とか抜かしてた奴がいるんですよ~
な~に~?
やっちまいました。




