愛。故に愛
八十四話
さて、どこ行こうか。
「……ねぇルル。どこ行きたい?」
「どこでも良いですよ?」
嬉しそうに答える。一番困る解答だなぁ。
「じゃあ服を買いに行こうか?」
「ぜひ!」
ルルに掴まれた手が引っ張られる。ルルが嬉しそうでよかった。
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「どれが良いと思います?」
ルルの右手には水色のワンピース。左手には薄ピンクのスカート。
「どっちも似合うよ」
「えー。どっちかで言われたらどっちですか?」
「本当にどっちも似合い過ぎていて、最上決定戦みたいになってる」
「本当ですか~?」
本当本当。どっちを着ても天使。普段服も天使。むしろもう着なくても天使。
そんなアホなことを考えていると。
「じゃあどっちも買います!」
「えっあっそう?」
「似合うと言ってもらえたので」
そう言って笑うルルの顔から目が離せなかった。
★★★★★
地位、名誉、王妃としての座。様々な欲によって、俺は毎日のように多くの女性に求められていた。
愛などそこには存在しなかった。ただ、自分が求める物を手に入れるために。その為に、皇帝という座に即いた俺は、道具のように扱われていた。
俺は誰も選ばなかった。俺は誰も愛せなかった。人に愛されるということが、こんなにも恐怖になるとは思わなかった。
誰も信じることが出来ない。ただ一人を除いては。
「考え事かい?」
その一人が、俺に話しかけてくる。
「俺の体は道具としてしか見られていないんだ」
「あははっ。まぁ道具だしね」
「……慰めてくれよ」
「ごめんごめん。でも僕はそんなんじゃないさ。この座には君が即くべきだと思ってるよ」
「……ありがとう。そんな風に言ってくれるのはお前だけだよ」
「そんなことないよ。上級の皆は全員そう思ってるさ」
「ネビロスとかサルガタナスとかさ……特に女性は……」
「ネビロスは女の子好きだし、サルガタナスは……その……好きな人がいるみたいだよ」
「えっ」
「彼女本人が言っていたわけじゃないけれど、まぁ、見ていれば分かるでしょ?」
「えっ」
「えっ」
扉が開く音がする。
「サタもルシも何してんの-?」
「ばかっ! 皇帝って言いな」
フルレティとサルガタナスだ。
「いや……皇帝は俺も馴れてないよ。サルガタナスも皇帝じゃなくて大丈夫」
「はっ。あなた様がそう言われるならば」
「サルは固いなぁ」
フルレティが馬鹿にするようにサルガタナスに言う。
「サルって言うな!」
サルガタナスはフルレティの頭をはたく。
「ね? ルシももう分かったでしょ?」
そう言って笑うサタヌキアはどこか嬉しそうだった。
★★★★★
「さて、では行きましょうか」
ルルに手を引かれながら言われ、現実に戻される。ルルは、さきほど買った薄ピンクのスカートを履いている。気に入ったのだろう。そしてやっぱり似合っている。
懐かしい記憶だ。まだ皇帝という座に馴れていない時期。というか今でも言われ馴れてはいない。
「次はどこに行きますか?」
「うーん……ご飯とかどう?」
「行きましょう!」
ルルに聞かれるまでどこに行くか決めていないとか。ダメダメ過ぎる。昼ご飯の後はどうしようか、と考えながら歩き始める。
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「おいしいっ!」
ルルが頬を撫でながら言う。本当に可愛い。奮発して高級店に来た甲斐があった。
「この魚もおいしいよ」
「えっ。じゃあ遠慮無く……」
切り分け、口に入れ、本当に嬉しそうに顔を蕩けさせる。
「シロさんもどうぞ」
そう言ってルルがくれた肉を食べる。脂が旨い。しつこくなく、それでいて硬くない。高級な肉って感じ。最高。
「これも。これも! 全部おいしいですね~」
食べた野菜は、確かにおいしかった。だが、魔界で食べたあのサラダは格別だった。慣れ親しんだ味というのもあるだろうが、それでもおいしかった。旨味の情報などもあちらには残っているのだろう。
「おいしかったです! あれ、食べないんですか?」
「え? あぁ。いいよ。食べて」
「えっ。うーん……いいんですか?」
「うん。どうぞ?」
「ではでは。いただきます」
おいしく食べる人が食べるのが一番だ。
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「ふー。おいしかったです。ごちそうさまでした」
両手を合わせる。合掌。そういえばこの文化は残ってるんだな、大事大事。
「さて。じゃあ狩りに出ようか」
「戦闘ですか?」
「うん。ちょっと本気で魔法使ってみたいし」
「し?」
「ル、ルルと一緒に戦闘とかしたことあんまりなかったなぁと思って」
気恥ずかしくなり、思わず目線を外してしまう。
「えぇ~?」
含みのある言い方に、嫌だったのかと顔を向ける。すると、ニヤニヤと笑っているルルと目が合った。
「一緒にですか~そうですか〜。いや~シロさんがまさか~。ほぇ~」
珍しいモノを見るようにニヤニヤしてくる。そんな態度を俺にしていいのかな?
「嫌ならいいよ。ごめんね。今のは忘れて」
「い、いや! そういうのではなくて! 違うんです!」
「あれ~? もしかして一緒に行きたいのはルルさんの方では~?」
もはや習慣のようにルルと手を繋ぐ。そしてゆっくりと歩き出す。
ルルの可愛らしい姿が書きたかったです。
ハーレムものって、可愛らしくて特徴のある女性がたくさん出てくるので、読者の性癖に刺さりやすいと思います。でも一途さって大事だと思うんです。
まぁ、主人公の女性に対する価値観も書けたんで、僕は満足です。愛って大事ですね。愛。絆的なね。バーチャル的なね。




