魔力と再現度
八十三話
道ばたで魔道師っぽい人物を見つける。そして右手にはルル。ちょっと前から気になっていた実験をしてみようか。
「あのー……ちょっといいですか?」
「はい?」
普通の男の子って感じ。
「あの、魔法使えますか?」
「え、まぁ……っていうかシロさん……ですか……?」
こいつぁ困った。すっかり有名人だ。
「ええと……まぁ……」
「ほ、本物だ! 凄い魔法をたくさん使えると話に聞いて! は、話せるなんてこんな……」
好意はあるようだし、俺のいいように使わせて貰おう。
「ちょっと実験に付き合ってくれないかな?」
「よ、喜んで!」
「ルルも、いいかな?」
「はい。もちろん」
そう言って握っている手に少し力が込められる。可愛い。圧倒的に可愛い。
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魔道師君の階級は三級。手伝ってくれてサンキュー。
一人でニヤニヤしていると、ルルに袖を引っ張られる。
「何をするんですか?」
「あぁ、そうだった」
まず二人に水魔法を作ってもらう。
「出来ました!」
「はい」
手の平に乗るくらいのサイズを作ってもらった。
「じゃあ凍らせてもらっていいかな」
パキパキという音と共にルルの水球が凍る。しかし。
「すいません……私は水球と氷球は別々にしか作れなくて……」
ここまでは予想通り。
「じゃあちょっとその水球貸してね」
そう言って、水球の形は保ってもらったまま、俺の手元に持ってきてもらう。
雲は氷と水で出来ている。そして雲が空にしかないのは、上空は空気が薄いからだとどこかで読んだ。たぶん中学校の教科書とかだったと思う。
教科書に習って空間を生み出し、真空に近づける。具体的には、水球に張り付きそうな水の膜を生み出す。そしてその膜を限界まで伸ばす。これだけ。サンキュー教科書。フォーエバー教科書。
そうやってドンドン伸ばしていくと、中は真空に近づいていく。すると、三級魔道師の生み出した水球ははじけ飛んだ。氷の粒になることもなく、そして水の粒にもならなかった。ただはじけ飛んで消えていった。恐らくだが、魔力になったのだろう。
ルルの水球は氷の塊に。魔道師君の言葉を借りるなら氷球になっている。
では続いて。
「じゃあルルの氷も貸してね」
ルルの氷球は金族の箱で覆う。そして全方位から熱する。十分に熱した後、金属の箱を広げていく。元の三倍以上に広げ、金属の箱を開く。中から水が滴ってくる。それを口に含む。
「あっ……」
ルルが驚きの声を挙げる。その驚きの意味が分かった。これは水であって水じゃない。口に入った水は水ではない。なんだか……なにかが入ってる感じはするんだが……水でもなく……なんだろう。不思議な感じ。
「普通魔法で出した水は飲まないですよ」
馬鹿にしたようにルルが笑うので、金属で器を作り、水を注ぐ。
「はい。これ」
「えぇ……じゃあ一口だけ」
疑いながら飲んだ水にルルは目を丸くする。
「えっ! おいしい!」
「えっ! わ、私にも下さい!」
そう言って魔道師がルルの器をもらおうとする。させるか馬鹿野郎。
「い、いやいや。君にも作るからさ」
「ほ、本当ですか!」
そう言う魔道師君に同じ物をあげる。ルルと間接キスなんかさせるか。
とりあえず実験は終了だ。
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「こんな私でもお役に立てて良かったです!」
「はーい」
そう言ってあしらい、帰ってもらう。
やはり魔法は事象の復元だ。時間も生きたいと願う事も魔力で再現が出来る。じゃあ魔力って何だよって話だよな。サタはこの世界を正そうとする力と言っていた。願う力の集合体のような物だろうか。願う力が魔力という結晶体となり、様々な現象を引き起こす……まぁ突拍子もない発想だ。
「シロさんシロさん」
ルルが握った手をクイクイ引く。
「ん? どした?」
「結局どうやって飲める水を作ったんですか? どれだけ難しい魔法で作れば、あんなに水そのものっぽいものが作れるんですか?」
「あー……その……」
「前も命令句無しにゴーレムを操っていましたし、教えて下さいよ~」
ルルは嬉しそうに手を前後に振る。繋いだ俺の手も前後に振られる。首がガクガク動く、ちょっと激しくないですかルルさん?
ルルは満面の笑みで俺を見る。そんな顔をされたら何も言えなくなるな。
「……なぁルル」
「なんですか?」
「その……」
「なんです~?」
「……で、デート……しよっか」
「っ! しましょう!」
強めに腕を引っ張られる。その顔は本当に嬉しそうだ。やっぱりルルは世界一可愛い。
前々から書こうと思っていた、魔術師の階級による魔法の違い、そして主人公なりの魔力への見解です。
個人的に、階級三級手伝いサンキューは気に入ってるんですけれど、どうですかね。
このレベルが面白いと思うようになったのが年を取った証拠でしょうか。証拠でしょうこ(か)!なんちゃって!
これから数話はルルとのデートをします。今回の話を書いていて、デートしたいなって私が思ったからです。




