人としてか、悪魔としてか
八十話目
バリクソ長いです。
超完結に後書きにまとめたのでそっちを読んでも十分です。
「この世界と前の世界が同じ……?」
「そうそう」
サタヌキアはサラダを食べながら平然と言う。
「いやいや……」
「なんとなくは分かってたんでしょ?」
その通りだ。
「じゃあ簡単に説明していこうか」
サタヌキアは右手に小さい地球を生み出し、話し始める。
☆☆☆
2018年、俺は事故に遭った。即死だそうだ。トラックにはねられ即死。普通ならば遺体は家族によって葬式が行われる。しかし俺の家族は非情で、遺体を後世に活用したいという国の団体に売ったそうだ。
その頃、海中深くでとある物質が発掘された。目には見えないが、ウランよりも大きな力を持つ物質を。
☆☆☆
「それってまさか……」
「そう。魔力の事」
「魔力って何なんだよ」
「言わばこの世界の防衛線。この世界には物事を壊そうとする力と、正そうとする力がある。その正そうとする力の方。まぁ今でも魔力っていうのは詳しくは分かってないんだよ」
☆☆☆
俺の遺体は国葬などが行われるはずもなく、違法実験に使われた。発見された魔力を人体に注入する実験だ。死刑囚や国の権力で消された人間、引き取り手のない遺体が使われたらしい。
実験は失敗だった。体表の硬化。それだけしか起こらなかった。しかし国は実験に実験を重ねていく。動物や植物。虫に、果ては生きた人間まで。しかし全てが硬化以外の反応を見せなかった。
☆☆☆
「それがこの世界の……」
「全ての始まり。まぁここにいる全員が実験対象だったわけだよ」
その言葉に食卓を囲む皆を見る。皆は俺の顔を見て頷く。
「……そうか」
「じゃあ続きだね」
☆☆☆
天文学的な確率で地球に隕石が超接近した。その余波は肉薄した土地を焼き焦がすと予測されていた。しかし、これまた偶然にも巨大太陽フレアが発生した。それも隕石が接近したタイミングに起き、隕石の軌道が変わってしまった。太陽フレアは地上の連絡系統を麻痺させ、情報伝達が遅れたところに隕石。地上は衝撃や余波で崩壊していく。
☆☆☆
サタヌキアが出した地球から何かが吹き出し、赤く染まっていく。しかし、一点だけは緑のままだった。
「さっき言った実験で、魔力投与された木があったんだけれど、この木がこの土地を守ってくれた」
右手の地球が拡大されていく。その木から正方形に緑の土地が出来上がっている。世界地図で見たままだ。
「この木って妖精の街の……」
「そう。そしてこの残った世界が僕達のいる世界」
そう言うと、右手の地球を消す。そして話を続ける。
☆☆☆
この世界では色々な生き物が生まれ、環境に耐えきれず死んでいった。そして体内に魔力を宿せられる生き物だけが進化していった。人に近いモノから、動物や植物まで様々な物が変わっていった。
そうやって自然淘汰されていく中で、シロを含めた魔力を注入されていた者達が蘇った。世界の崩壊に伴う魔力の漏出によっての事だと思われる。
そんな中、種族が生まれる。元の人間の形を大きく崩すことはなかったヒューマン、そして魔力に適正のあったイニヒューマンに別れた。それぞれ生活体系は異なり、住む場所を分けることにした。
ヒューマンも魔力を取り込むことにより、種族が枝分かれしていき、エルフやドワーフや竜人等が生まれた。
それぞれ楽しく暮らしていたのだが、ある時異変が起こる。魔力だけで生物が生まれたのだ。それは醜く、ヒューマン達を襲い始めた。その化け物を、おとぎ話やゲームに出てくる物と結びつけ、魔物と呼称した。しかし、不思議なことにイニヒューマンは襲わなかった。これは魔力に適正があったためと考えられているが、やっかい事の種が生まれてしまったのである。
魔物も近づかなければ襲ってこないと分かれば、そこまでの被害を出すことはなかった。その頃には今と同じ種族や文明が出来上がっていた。
しかし、ある時事件が起こる。当時のヒューマンの世界を統治していた、ヒエローニュムスという者の息子が魔物に怪我を負わされたのだ。その息子曰く、イニヒューマンが指示をしたと。もちろん、そんなものは真っ赤な嘘だ。しかし親の地位が地位なだけに大問題へと発展する。
そんな中、ヒューマンと話し合ったイニヒューマンの長が居た。魔力に長け、唯一時間魔法が使えたイニヒューマンが。
☆☆☆
「それが君だよ」
サタヌキアは俺を指差す。
「いや……いやいや……そんな馬鹿な……」
「王国の地下に時間がゆがめられた書庫があったでしょ?」
半日ほどいたはずなのに、ほとんど時間が経ってなかったあの場所だ。
「あれは君が作ったんだよ。僕達魔族がまだ国と仲良かった頃の話さ」
「お、俺が知っている事と全然違う! 魔族は悪と語られて……しかも国の全員がその事実を……」
「それも話すからもうちょっと待ってね。それで……」
サタヌキアはゆっくりと話し始める。俺が混乱しないように。
☆☆☆
しかしヒューマンは聞く耳を持たない。魔物はイニヒューマンが生み出したと言い出す人もいた。そして隕石もイニヒューマンの仕業だと。そう言い出す人もいた始末だ。
もちろん魔物も隕石もイニヒューマンとは何の関係もない。しかしヒューマンは引かず、最終的に戦争が起きた。
魔物がイニヒューマンの支配下だと思い込むヒューマンは多かった。ヒューマンの統治者のヒエローニュムスが情報操作を行っていたのだ。
様々な種族が生まれることにより、元々の世界を知る者は少なくなっていった。イニヒューマンが悪だという情報、そしてこの世界は隕石で滅んだのではなく、元々こういう世界だったという情報を浸透させるには、時間は有り余りすぎていた。その結果、イニヒューマンは悪とされ、魔族の生みの親ともされた。
イニヒューマンは長を先頭とし、ヒューマンの領に侵入した。しかし戦争のためではなく、和平のためだ。
ヒューマン達は次第に疑問を抱く。本当にイニヒューマンは悪なのだろうか、と。
その疑問に焦ったのはヒエローニュムスだ。真実が公にされれば自分の命、そして執権が危ういと思ったのだろう。イニヒューマンの長にとある魔法を掛けた。その魔法は。
☆☆☆
「人体根幹器部分干渉魔法及び範囲的拡散存続魔法」
「人体こんかん……き……?」
「人体の命。生きるという機能全ての破壊。そして、その破壊により生まれた魔力を世界各地に飛ばす魔法」
「……長っていうのは俺だよな」
「そうだね」
「つまり俺が……」
「……続けるね」
☆☆☆
目の前で長を消された。その衝撃は、イニヒューマン達には大きかった。元々は魔力への適正で選出した長。最初は刃向かう者も多かったが、その長は人格が優れていた。多くのイニヒューマンを惹きつけた。命を救われた者もいた。他愛ない相談に乗ってもらった者もいた。そんな長が目の前で殺されたのだ。黙っていられるはずがない。
結果的に、戦争の火ぶたは切られた。それもイニヒューマンが仕掛けた形で。
戦争はヒューマンの圧勝だった。数が違いすぎたのだ。いくらイニヒューマンのこの力が優れていようと、圧倒的な数の前では焼け石に水だった。
そしてイニヒューマンは不可侵の制約を契り、総称を魔族と改めさせられた。
ヒューマンは種族毎に名前を決め、住む場所も世界各地の住みやすい場所へ移っていくことになった。しかしヒエローニュムスはそれだけでは満足しなかった。己の権力を絶対な物にするため、一つの魔法を全ヒューマンに掛ける。
その魔法は、魔力を礎とし、己が力にする魔法。この魔法により起こる現象を、これもまたゲームから取ってこう名付けた。
☆☆☆
「レベルアップ、と」
「……」
「しかし人々は文句を言う。レベルアップをしたらどれだけ変わるのか分からない、と」
「だからステータスカードが……」
「そうだよ。どれだけの魔力がそれぞれの力に干渉しているかを計るための装置。元々は僕達魔族が生み出した物なんだけれどね。それの改良版がステータスカード。そしてヒエローニュムスの思惑通り事は進んだ。人々の信仰、そして自警団の発足。そしてその自警団の国営化」
「それがギルドか……」
俺の呟きにサタヌキアは頷く。
「国王としての力は完璧な物となり、絶対的な政治を行ったのさ」
「もしそれが本当だとして、俺は何で目覚めたらあの場所にいたんだ?」
「それを話すには蘇生魔法の話からしないとね」
☆☆☆
魔力はこの世界における正そうとする力。故に理に相反する事は行えない。しかし、夢を叶えようとする力。それはこの世界の理に反しない。夢を叶えようとする正しい力が、蘇らせようとする相反する力を凌駕するには、それ相応の思い、そして相応魔力が必要となった。肉体は、細胞そのものが復元しようとする力を魔力で促進させ生み出した。
戦争締結から二十数年の時間が経った時、皇帝ルシファー、シロの復活に成功する。魂を輪廻の輪から引き出し、生み出した肉体に戻した。しかし、肉体の情報が色濃く残っていた地。最果ての街と境界の森の間に復活した。それはシロがイニヒューマンだった頃、ヒューマンとの戦争を止めようとし、命を落とした場所だった。
魔族の中でも死霊操作に秀でていたネビロスは、シロの復活に感づく。しかしその時にはもう最果ての街へと赴いてしまっていた。
魔族の中で多くの会議が行われた結果、様子を見ることとなった。しかしシロの力は予想よりも弱々しく、幾度となく見失う。それを防ぐために、サタヌキアは自分の魔力をシロの中に注入した。
☆☆☆
「注入……?」
「君の心臓手を突っ込んだ時あったでしょ?」
「……あっ」
鍛冶の街の事か。あったなそんなん。滅茶苦茶痛かったわ。
「その時に君がどこにいるかの把握だけをね」
だからいつでも俺の側に現れたのか。ストーカーじゃん。
☆☆☆
そうしてシロは段々と力を取り戻す、事は無かった。魔族に課せられた枷のせいだ。
ヒエローニュムスがイニヒューマンを魔族と名付けた時、一つの禁忌魔法を魔族全体に掛けた。魔力を直接体に取り込むことで死を迎えるように、と。魔物を倒す時に生み出される魔力が魔族の体を蝕んでいった。その魔法の効果は絶大で、ヒューマンのレベルアップとは真逆のレベルダウンが発生した。中には命を落とす者も。ヒューマンは着実に力を付けていき、魔族は力を失っていく。その力の差は取り戻せないほどに大きくなっていった。
☆☆☆
「レベルダウン……?」
「そう。僕達は強くなる手段を失った」
「でも、俺は……強くなってる……はず……」
「君のHPはもう1じゃない。いや、ヒューマン基準ではどうかは分からないけどね。でも、世界各地に散った君の魔力を君が吸収することで、昔の力を取り戻した。その結果、成長とは呼べないけれど、君は強くなったんだよ」
「そんな……」
「でも僕達は強くなれない。それは変わらない。けどね、魔族には希望があった。ルシファー、皇帝の復活だよ。そして復活が成功した時、魔族の夢は果たされるんだ」
「夢っていうのは……?」
「……この世界を元に戻すこと。昔の、あるべき姿に」
俺が元いた世界に戻す。そんな事が出来るはずがない。
「無理だ。そんなの不可能だ」
「不可能じゃない。可能さ、君が居れば」
「……仮に、だ。仮にそれが可能なのだとして、代償は? 膨大な魔力はどこから集めるんだ? 俺一人を復活させるのにも大量の魔力が必要だったんだろう? そんな魔力集めることなんて出来るのかよ」
「代償は……この世界のヒューマン全員だ」
「……は?」
魔力とか言う高エネルギー体が発見される。
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主人公を含め何十人もの人がその魔力を注入され、復活後魔族に。
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色々あって地球崩壊からの今の世界へ。
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魔力に適正のないヒューマンと適正のあるイニヒューマンに別れる。
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ヒューマンのせいで戦争勃発。
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主人公は色々あって死んじゃう。
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ヒューマンは魔族に色んな罰を与える。
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主人公復活。
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色々あって主人公が旅をした結果魔界に来た。←今ココ!
さて、色々矛盾はあると思います。何故ならこんなこと全然考えてなかったからです。
というか最初の方に王たる器とかなんとか言ってるシーンからして矛盾ですからね。
でもそんな事を、そんな小さな事を気にする大人になって欲しくはないんです。大きな、デッケェ大人になって欲しいんです。
この話でネタバレ回は終了の予定でしたがもう一話続きそうです。長かったしね。
読み返しなんてしていないんで誤字脱字多いと思います。許して下さい。あったとしても気にしないで下さい。そんな小さな事を気に(ry




