結論から言うとハーレムは出来ない
七話目
「結論から言おう」
酒場でガウルと面向かいながら、晩飯をつつきあってる。
「戦闘とは、相手と戦うこと自体を指すので、俺がどうとか相手がどうとかは関係ない、と。」
もうヤケ酒だ。イッキだイッキ。
「そして戦闘になると、ゴミカスステータスの俺はアリのようにサクッとやられる訳だよな?」
「そうだな」
「なので!食っちゃ寝生活をしたいと思いますが何か意見は!」
「金はどうする?」
「か、貸して貰えると有難いのですが……」
「まぁ、ワシもこの街に来たのは暇を潰すためでもあったからな。良い良い」
「本当にありがとうございます……必ずお金は……」
「あぁ。まぁゆっくりで良いぞ?」
ガウル優しい好き。
☆☆☆☆☆☆
酒が回ってきたのか、ガウルが立ち上がる。お勘定かね。
「さて! 酔いが良い具合に回って来た! 帰って寝るぞ!」
「酔いが回ってからが楽しいんじゃないのか?」
「酔ってると感じている時が楽しいのさ」
前世では未成年だったからお酒なんて飲まなかったが、そういうもんなのかね。
気持ちよくよってるのか、歌を歌っている。いい声だ。
☆☆☆☆☆☆
歌が終わるタイミングで宿に着いた。なかなかいい宿だ。
「さて、と。お前は101な! 朝にまた会おう!」
一人一つの部屋を取ってくれたらしい。安くはなかっただろうに。
「ありがとう」
ガウルは何も言わず、笑いながら階段を上がって行った。いい男は背中で語る、か。いや、酔ってるだけだなあれ。
宿は思っていたより綺麗な部屋だった。タンスに机に椅子、そしてベットがあるだけの質素な部屋だが、木造の良い香りがする。
ベットに横になり、今の自分の状況を整理する。まず、少女を助けて事故に遭い、異世界に転生され、最弱のステータスで俺の物語は始まった。そして戦闘と名がつくものでは無能オブ無能になってしまう、と。
「俺が知ってる異世界転生とは違うなぁこれ…」
異世界に行き、最強とも呼べる能力を持ち、前世で救われなかったので異世界では、とでもいうかのように無双しまくる。可愛い女の子が主人公の強さだけでなく、優しさにも惚れて……そういう感じなはずだ。そういうのなんだよ。なんだよこれは。今日は色んなことがありすぎた。頭も体も疲れてるのだろう。
フラフラだ。今日はもう寝よう。頭にモヤがかかり始めて、ゆっくりと、思考が溶けてゆく。
☆☆☆☆☆☆
またあの声が聞こえる。
「気づかないのか? 気づけないのか?」
何の……話だ……
「君は……」
☆☆☆☆☆☆
「起きてください!」
可愛らしい声をかけられると同時に体を揺らされた。
「んぇ?」
頭がまだ寝ているが、どうやら目の前の美少女に起こされたようだ。美少女に起こされる経験など生まれて一度も無かったが、ここはクールに紳士的に。
「おふぁようございます。起こしていただきありがとうございます」
朝にふさわしい笑顔と全力の爽やかボイスで、目の前の少女に感謝の意を示す。
一昔前のメイド服を着た可愛らしい女性がニコッと笑う。やはり女性には笑顔が一番似合う。
「タンスの中にお召し物を置かせていただきました。朝食時はその服で来てください」
メイドさんに言われた通りに着替えて、部屋を出る。右の方から賑やかな声が聞こえる。
あそこが食堂だろうか?そこに向かうとガウルに声をかけられた。
「おう! 目覚めはどうだ?」
「絶好調でもないけど悪くもないよ」
ガウルは、なら大丈夫だ。と言って、俺の背中を叩いた。ガウルと共に食卓につく。運ばれてきた美味しそうな朝食を眺めながら、昨日の夜に頭をよぎった話をする。
「ガウル。パーティーを組むと、パーティーメンバー全員に経験値が行ったりしないのか?」
ハムエッグもどきを飲み込んでガウルが答える
「行く。戦闘に参加しなければ微々たるものになるがな」
やっぱりそういうところはゲームっぽさがあるよな。
「じゃあさ」
「すまんが、今日はワシは予定が入ってるのでな。同行はできん」
……まぁ、そうだよな。ガウルにも予定くらいあるよな。考えがいたらなかった。
「じ、じゃあ、誰か紹介してほしいな。出来れば可愛くて強い子が良いな」
「足手纏いを連れていく物好きがいると思うのか?」
ド正論でぐうの音も出ない。