選択と決断
七十八話目
「お待たせしました!」
嬉しそうな顔のルルが家から出てくる。
「いや、全然」
気持ちをまとめられていない。だが何はともあれ魔族に会うことが優先だろう。
「あのさ、ルル。ちょっと魔界に行ってみようかと思うんだけど」
「えっ……ど、どうしてですか?」
「なんていうかその……」
なんだろうな。自分自身を知りたい的な。中二だな。
「……前の世界のことと何か関係があるんでしょうか?」
「……うーん。そんな感じかな」
その言葉にルルは俯いてしまう。
「私も行ってはダメでしょうか?」
まぁそうなるよね。あの悪魔の事だし面倒くさいことになりそう。というかなんというか。俺と悪魔どもには少なからず何かあるだろうしな。あんまりルルには知られたくないこともあるだろう。
「うーん……危険だしさ」
「シロさんも危険じゃないですか」
「いやほら、俺はいざとなれば死んで帰れるし」
「私も出来ますけど」
うーん正論。どうしたものかと悩んでいると。
「ていうのは嘘です。大丈夫です。行ってきて下さい」
ルルは笑顔でそう言ってくれる。だが、作り笑いの嘘笑いだろう。ルルの優しさだ。受け取っておこう。
「ありがとう。じゃあ中央都市に送ってから行くよ」
もう一度自転車もどきを生み出す。ルルの顔を見られないまま乗る。俺が何なのか、そしてルルが何を思っているのか。色々な思いを抱えたまま空へと飛び立った。
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「おぉ! 新婚旅行はどうであった?」
嬉しそうに笑うガウルに、ルルを任せる。
「ごめん、行ってくる」
そう言ってルルの額にキスをする。なんか死亡フラグが立ってるな。
「……行ってらっしゃい」
心配そうに俺を見るルルに笑いかけ、自転車を飛ばす。
「おーーーーーーい!!!」
後ろからガウルの叫び声が聞こえた。
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自転車を飛ばす。最果ての街を越え、境界の森を抜ける。魔界が見えてきた。
魔界は見渡す限りの平野。遠くに一つ大きな街が見える。あそこだろう。
自転車を飛ばす。魔族が俺と知り合い。そして妖精族は俺のことを知っている。俺だけはこの世界の枠組みから外されている。それらの疑問に答えてくれるはずだ。自然と飛ばす速度が増す。
境界の森と魔界の街の中間ほどに来た頃、上空から何かの咆吼が聞こえる。首を上に向ける。ドラゴンが俺を追ってきている。それも三体。
「じゃまだぁああああ!!!」
妖精の森への行きも、帰りもルルが乗っていて暴れることは出来なかった。久しぶりに全力でいかせてもらおう。
自転車を上空へ向かわせ、飛び降りる。上空で最低限の魔力の鎧を作る。ガウルから貰った剣を抜き、氷を剣に纏わせる。足裏に炎を作り、飛行を試みる。全然制御は取れないがまぁ初回だし。
ドラゴンがこちらに向かって火を吐く。それをギリギリで躱す。もう一体も火を吐く。それも躱す。次の一体は火球を飛ばしてくる。その火球は剣で切り裂く。楽しいなこれ。
だいぶ制御が可能になってきたので、戦闘を始めようか。
まずは一体目。飛翔し、背中の上へ飛ぶ。鱗は硬いだろうが魔力で強化した氷付きの剣ならいけるだろう。剣を逆持ちにし、大きく振り上げる。背中へ突撃する勢いで下降し、剣を突き立てる。血が噴き出して深く刺さる。その剣を横へ捻る。ゴキッと音を立てて背骨を折った。
糸が切れたように落ちていくドラゴンを一瞥し、もう一度高く飛ぶ。
次に二体目。顔めがけて飛んでいく。ドラゴンは口を大きく開け、火を噴き出す準備をする。それを見て魔力の鎧を厚くし、そのまま口の中へと突っ込む。熱い……が耐えられるほどだ。口の中で剣に力を込める。剣先の氷が肥大化していき、ドラゴンの喉を破る。血をまき散らしながらドラゴンだったモノは落ちていった。
最後に三体目。魔力も減ったし、楽にいこう。足の炎を大きくし、推進力を得る。ドラゴンが吐き出す炎を時には避け、時には切り、接近する。背中へ跳び、翼の根元を切る。筋力と鎧に剣が一瞬阻まれるが、足裏の炎を爆発させ、なんとか切り落とす。片翼を失ったドラゴンは飛ぶことも出来ずに落ちていく。この高さなら即死だろう。
魔力の鎧と、剣に纏わせた氷を解く。自転車は落ちちゃったしどうするか……このまま飛んでいくか。
やはり、戦闘になっても死なない体になっている。成長か、はたまた世界の枠組みから外されたことと、何か関係しているのか。
空中飛行は、制御できるようになれば、小回りのきく飛行機のように飛べる。結構便利だ。飛行訓練が終わる頃、魔界の街の門が見えてきた。中央都市よりは小さいが、頑丈そうな扉。その扉の前に降りる。
「やぁ、来ると思っていたよ。久しぶり」
扉の前には悪魔が居た。事ある毎に現れる悪魔、サタヌキア。いつもは被っているフードを今日は脱ぎ、嬉しそうに笑っている。
「色々聞きたいことがたんまりでね」
「だろうね。それじゃあ、行こうか」
サタヌキアがそう言うと、扉が開いた。さて、ネタばらしと行こうじゃないか。
次とその次が怒涛の答え合わせです。
まぁ答え合わせというより辻褄合わせです。




