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謎の辻斬り

七十五話

 木を生み出します。その木の皮をはぎ取ります。網目状にします。これで緊急ネットの完成です。急いでルルと俺の前に展開させる。


「ふべっ」


 顔面からダイブする。せめてルルだけは優しくキャッチ。


 ネットをゆっくりと下ろし、自転車もどきは溶かして地面に流す。


「た、楽しかったですね!」


 ルルがいやに興奮した目をしている。変な事を覚えさせてしまっただろうか。


「帰りもする?」


「します!」


 覚えさせてしまったようだ。


 妖精の街を見る。草原と花畑が広がっていて、遠くには大木が見える。街と外の境界は分かりづらいが、街の中にはたくさんの人がいる。普通のヒューマンに見える。妖精とは?


「そういえば聞いてなかったけどさ、なんでこの街に来たいと思ったの?」


「この街は、魔法使いならば一度は訪れるべきなんですよ」


 なんで? と聞くより先にルルは歩き出す。まぁ楽しそうだしいいか。


 楽しそうなルルの横顔を見ながら手を繋ぐ。歩いていると、どこからか声を掛けられる。


「そこの御仁。中々の剣術の持ち主と見受けられる。手合わせ願おうか」


 横から男性が歩いてきた。着物を着て、大きな笠を被っている。腰には二本の剣。辻斬りですか。この街危険すぎませんか?


「なぁルルこの街やばいって。帰ろ?」


 ルルは嬉しそうで羨ましそうな顔をしている。


「受けた方がいいですよ! 絶対に!」


 ルルがサイコパスになってしまった。まぁでも、じゃあ隣の女性を切らせて貰おう、なんて言い出さないように相手してやるか。ルルもやった方がいいって言ってるし。ルルの言葉はこの世界の定理だしね。


 ガウルの剣を抜く。この剣に名前付けてあげよう、なんて考えながら力を抜く。


「いざ尋常に。勝負!」


 男性が剣の柄に手を掛けた瞬間、男性が消える。


 視界の右側に何かが動く。無我夢中で剣を持っていく。何かが剣にぶつかった瞬間、剣ごと吹き飛ばされ、金属同士の独特な音が辺りに鳴り響く。


 吹き飛ばされながら右下を見る。先ほどの辻斬りが、剣を振り切った姿勢で立っていた。笠は走った勢いでか脱げている。


 顔が見える。三十代後半の渋いおじさん。そんな雰囲気を感じる。髭を格好良く蓄えた口は、嬉しそうに笑っていた。これは二撃目が来ますね。


 空中に飛ばされている間に魔力で鎧を作る。持てるだけの魔力で剣と腕を包む。攻撃力全振りでぶっ飛ばす。


 両足をしっかりと地面に付ける。もう気は抜かない。


 辻斬りは抜いていた刀を鞘に収める。そしてもう一般の剣を抜く。刀身は赤く輝いている。格好いい。


「初撃を防がれたのは主で二人目だ。二撃目は、未だ無し」


 赤い剣をまっすぐにこちらに構える。そういう格好いいのは俺にもやらせて欲しいものですね。


「じゃあ俺が最初なわけだ」


 安い挑発。こんなもので剣筋がぶれるほどの鍛錬ではないだろう。


 そんな気休めの挑発に、辻斬りは笑みを更に深める。体を俺から見て左に向け、膝を曲げる。剣先をこちらに向け、柄を右肩に乗せるような態勢をとる。突きの姿勢だ。


 突きへの対処なんて知らない。しからば弾くだけだ。剣を持つ手に力を込める。


 辻斬りが腰をより一層深く落とした瞬間、また消える。そう錯覚するほどに速く動いているだけだが。だけというのは速すぎる。


 正面から辻斬りが迫る。まぁ辻斬りと分かるほどしっかりとは見えない。速さの体感、距離を鑑みるに後少しで辻斬りの剣は俺の喉に届く。


「ここ!」


 叫びながら剣を右から左へと振り払う。俺の剣は辻斬りの剣を捉え、弾くことに成功する。顔の左側で剣同士が起こす火花が散る。


 辻斬りは弾かれたまま、まっすぐ俺の後ろに駆け抜ける。次撃を警戒し、後ろを向く。しかし、辻斬りは途中で止まり、こちらを向き、剣を収める。


「まいった」


 両手を軽く上げて、あっけらかんと言う。


「いや、まだ決着はついてないだろ?」


 その声に辻斬りは笑うが、剣を抜こうとはしない。


「初撃、次撃を防がれた私に勝ち目はほとんど無いさ。それに」


 そう言って辻斬りはルルの方を見る。俺もつられてルルを見る。


「あ、終わりました?」


 ルルは犬っころを撫でていた。何してるんですかルルさん。こっちは死闘だったっていうのに。


「では契約を。汝、我が血を代償に力を与えたまえ。フェンリル」


 ルルがそう言って犬の頭を撫でる。すると、犬の体から光が生まれ、ルルに吸い込まれていく。


「さて、ではそこの剣士様とも契約を結びましょうか」


「契約?」


 辻斬りがこちらに近づいてくる。


「我が名は塚原卜伝。名を聞いたことは?」


「……ないですね」


 有名人なのだろうか。俺の反応に塚原さんはがっかりしている。ごめんね?


「では二人とも、手を出して下さい」


 剣を収め、ルルに言われるがまま手を出す。剣士も同じように手を出す。


「汝、彼の者の血を代償に力を与えたまえ。塚原卜伝」


 剣士の体から生まれた光が体に流れ込んでくる。


「これで契約は完了しました」


「さっきも思ったんだけど契約って何?」


「この街の住人は妖精種なんです。戦いにおいて魔法や剣術で手助けをしてるんです。その契約なんですが……言ってませんでしたっけ?」


「言ってませんでしたね」


 ルルが魔法でフェンリルを使っていることはよく見たが……


「契約する前と契約した後は何が違うの?」


「簡単に言うと威力ですかね。精霊の意のままに敵を倒してくれるのです」


 使役魔法の上位互換が出来るってわけか。俺にはあんまり必要なさそう。


「あ、そういえば剣士さん」


「卜伝とお呼び下さい」


「ぼ、卜伝さん。あの……俺より前に初撃を防いだ人って誰なんですか?」


「エルドラと名をなのられていました。黄金の鎧を着られた面白い方でしたよ」


 知ってるわぁそいつ。

最近昼夜が逆転しています。でも仕事の時間は変わりません。


辛いです。

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