大事な話
七十一話
ルルが大皿に料理を載せ終わり、ガウルの方へと向かう。
「ガウル。楽しんでる?」
「おうよ。デカい街は祭りも賑やかで良いな」
「そうかもね。ちょっとうるさいけど」
後ろでは騎士達の飲み比べが始まっている。ヒルベルトが強いらしい。期待を裏切らない人だ。
「すまなんかったな、助けてやれなくて」
「何の話?」
「魔物との戦闘のだ。何もしてやれなかった」
ガウルが本気で申し訳なさそうにしている。
「全然。俺なんて魔法二発撃っただけで英雄扱いされてるし」
ガウルは俺の方を見る。嬉しそうな、申し訳なさそうな、複雑な表情をしたまま、俺の頭を撫でる。
「ガウルさんは、街の人の誘導をしていたじゃないですか」
ルルがそう言う。
「じゃあ、十分に活躍したんじゃん。何もしてないなんて言わないでよ」
「いや、お前さん達の力になれなかったって言う意味であってだな」
「ルルだって俺を助けに来たわけじゃないさ。街の人達を助けようとしたんだぞ? じゃあガウルだって十分してくれたじゃん」
「……ありがとうな」
「礼を言うのはこっちだよ」
そのまま少しだけ談笑していると。
「シロさん!」
突然呼ばれて振り返ると、そこには一人の男性が立っていた。
「大丈夫ですか? 私の連絡が遅れて、本隊の到着前に接触したと聞いて……大丈夫でしたか?」
「ええと……」
「城から送っていった馬車の御者です」
俺に金属の魔物のことを教えてくれた人か。完全に忘れてました。
「あの人か! あ、そうだ。馬車の中に誰かいませんでしたか?」
「いや? 誰もいなかったですよ?」
あの悪魔め。逃げたか。
「そうですか……あの、色々ありがとうございました」
さっきの話を聞くに、この人が城に連絡してエルドラ達を連れてきてくれたのだろう。
「いえいえ、こちらこそです! 街を救って下さりありがとうございました!」
そう言って御者の人は戻っていった。本当に色んな人に助けて貰ってたんだなぁ。
「ガウルさん、ちょっといいですか?」
振り向くと、ガウルのそばに女性が立っていた。ガウルとキスしていた人だ。
「おう。たぶんこのままワシらは帰ると思う。また明日な」
そう言って、ガウルと女性は二人でどこかへと向かう。
「なんだか良い雰囲気ですねあの二人」
ルルがどこかうらやましそうに言う。
「たぶん付き合ってるぞ」
「本当ですか?」
「馬車の中でチューしてるところ見ちゃった」
「……ガウルさんもちゃっかりしてますね」
まぁあの風貌だしモテるだろうな。
「ルルはどうする? もう帰る?」
「シロさんが帰るなら」
もう十分喋っただろう。それに結構疲れたし。
「じゃあ帰ろっか」
「はい」
ルルと手を繋いで城を出る。道は街灯が照らしているが、もうひと一人いない。
「ルル、ちょっと寄り道していいかな?」
「はい。どこですか?」
城の中庭に出る。噴水や色とりどりの花が月の光に照らされている。
「うわぁ……凄く綺麗ですねここ……」
前に城に来た時に見えた中庭が綺麗だったので、こういう夜には連れてきたかったのだ。
「なぁ、ルル。大事な話があるんだけれど」
「はい?」
ルルが花を触りながら答える。
「俺さ、結構強くなったと思うんだよね」
「本当にそう思いますよ」
「ルルを守れるくらいには、強くなれたよね」
「私どころか街を守っちゃいましたし」
「クエストで稼げばある程度の収入にはなるし」
「そうですね。頑張れば小金持ちにもなれちゃいそうですね」
「その……凄い待たせちゃったんだけど……」
ルルはこちらを見る。首をかしげている。何を言うか分かっていない様だ。
月明かりの綺麗な庭園で二人きり。シチュエーション的にはほぼ完璧だろう。
「……け、結婚しよう」
「…………へ?」
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「さて、イポス。どうだろうか?」
「このままでは良くない方向に事が進むのではないかと」
「あの人はこっちに来るかな?」
「分かりません……」
「未来は見られないの?」
「……見る勇気がありません……」
「ネビには黙っておくからさ、頼むよ」
「……分かりました。…………全部済んで……これは……私達は……もう……そんな……」
「教えてもらえるかな?」
「……このままでは……魔族は……滅びます……」
「そっか……そっかぁ……」
中央都市の外壁の上で一組の男女がため息を吐く。
魔族の一人として。彼の友達として。未来を憂いていた。
未来ってなんでしょうね。
考えてないので本当になんなんでしょうね。




