懐かしの騎士長様
六五話
「これでしまいか。二人とも付き合わせてすまんかったな」
「それはいいんだけどさ、ガウル」
そう言って青白い剣を持つ。
「これは誰用のやつなの?」
「あぁ……これはな」
俺の腕の中から剣を取り、まるで王に献上するかのように丁寧に俺に差し出す。
「これは、ワシがお前の為に鍛えた剣だ。大切に使ってくれ」
「俺に?」
「そうだ」
受け取る。重たく、冷たく、どこか熱を感じる。
「いいの? これ」
「あぁ。大きさも重さもお前に合わせたんだ。馴染むはずだぞ」
剣を鞘から引き抜く。刀身は綺麗な銀白色。刃こぼれも曇りもない名刀だ。刀なんて昔はまともに見たこともないが、素人目でも分かるくらい美しい刀だ。
「綺麗だ……」
「ガハハッありがとうな」
「いやいや、こっちこそだよ」
ガウルからの意外なプレゼントを受け取って、荷台を降りる。街の門近くにガウルは馬車を留める。
「さて、昼飯でも食いに行くか? それともどこか寄ってくか?」
「いや、食べよう。腹減ったし」
「そうですね。私もそろそろ」
「じゃあ食うか。どこかいい場所は……」
ガウルとルルと歩きながら話をしていると、前方で大声が起こる。
「騎士長様だー!」
「騎士長様が通られるぞー!」
「道を空けろー!」
「キャー! 格好いいー!」
悪魔に襲われた時にいなかった奴か。どんな奴だろう。
「見に行きます?」
「ワシは見てみたいな」
じゃあ行くか。
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人混みをかき分けて進む。かき分けてるのはガウルだが。
「さあ、最前線だぞ」
「ありがとうガウル」
ガウルに感謝して軍隊を見る。この歓声を鑑みるに、相当な人気なようだ。
隊列の一番最初に見知った顔があり、俺に声をかけてくる。
「おぉ! シロ殿! 私です! バルモスです! ……騎士長様! この方に魔族の襲撃時に助けて頂いたのです!」
副隊長バルモスが隊の後ろの方を見る。そしてそこから一人の男性が歩いてくる。
「おぉ、そなたが風の噂に聞く英雄か」
金ピカの鎧を着て、腰には装飾ばかりの剣。金髪碧眼のイケメンで、ゴテゴテの指輪を付けた手を俺に向ける。
「お初にお目にかか……?」
あぁ、俺こいつ知ってるわ。
「おぉ! シロか! 久しいな! ドラゴン戦以来か? あの時は戦えぬと聞いていたが嘘をついたのか? まぁいい、助けて貰った礼だ。城に来るといい。さぁ」
矢継ぎ早に言われてアワアワしていると、バルモスが騎士長に話しかける。
「騎士長様、お知り合いだったのですか?」
「あぁ、昔一戦共にした仲間よ」
そう言うと騎士長様は指輪だらけの右手を左胸に当て、自己紹介をする。
「王族直属騎士隊長、エルドラ。ここにいる皆に代わって礼を言おう」
エルドラ。懐かしい名前だ。
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「先ほどはああ言ったが、我は王に報告があるのでな。またこちらから伺わせてもらうよ」
そう言ってエルドラは城に向かった。
「どう……しましょうか……?」
「まずは飯だな!」
「……そうだね」
三人で昼食を食べる。昔話に花を咲かせながら、店を出ようとすると。
「きゃーーーー!!!!」
と外から叫び声が聞こえた。
「なんだ!?」
「行ってみましょう!」
ルルの言葉に頷き、外に出る。顔を青くした女性が指を指して言う。
「魔道具が暴走して……!」
魔道具と思しき金属の塊を中心として大きな火球が生まれていた。魔道具は火柱を生み出し、家々を破壊していく。
「家が……!」
「誰か……!」
「助けてー!」
家から子どもが叫んでいる。逃げられないのか。まずいな。
「ルル! 水か氷魔法を!」
「あれ系の魔道具は中の魔力を出し終わるまで止まらないんです! そして大量の魔力が入っているので……」
普通の魔法じゃ焼け石に水ってか。じゃあやるしかないな。
「ガウル、早速だけど剣使わせてもらうぞ」
「お、おぅ」
腰に下げた剣を引き抜き、刀身に分厚めの氷の膜を張る。全身に魔力で鎧を作り、圧縮した空気を足裏で爆発させる。飛ぶような速さで魔道具に突っ込み、剣を振り下ろす。手応えありだ。
駆け抜け、後ろを振り返る。魔道具は真っ二つに裂け、被害が出ないほどの小さな爆発を起こし、消えて無くなる。
それを見届けてから魔力の鎧を解く。
「おおー!」
「すげー!」
「あの人って……」
「魔族から守ってくれた人だよな!」
「英雄だ!」
「えいゆうさんだー!」
街の人が口々に言う。悪い気はしない。
剣を見下ろす。魔力補正ありとは言え、金属の魔道具を切っても刃こぼれ無しだ。名刀だな。
「お、おおおおお!!!! お前!! 強くなったな!!」
そう言ってガウルが背中を叩く。あの頃と色々変わったが、この痛みは変わらない。痛いです。
シロと城って変換面倒くさいです。




