謁見
六一話
宿に宿泊の予約を入れ、部屋に入る。大きなベッドに机、椅子だけの簡素な部屋。だが綺麗に掃除してあり、色合いも赤と白が豊富で高級感が漂っている。
「大丈夫ですか? 座れますか?」
ルルに座らせてもらう。すまんのぅ。
「ありがとう、大丈夫」
「魔力をほとんど限界まで使ったんですね。今日はもう休みましょう」
「ありがとう」
ルルに水を貰い、口を付ける。全身の疲労感と頭痛が少し緩和される。恐らく魔力で生み出した水なのだろう。
「お風呂どうしますか? 先に入りますか?」
「そうしようかな。今日はごめんだけど寝させてもらうね」
「……? あっ! いえ……その……そういう感じでは……」
ここまで状況が出来上がっていて手を出さないのはどうかと思うが、正直もう無理だ。五教科のテスト解いてトライアスロンした感じだ。したことないが。
「これお風呂にどうぞ。私の魔力じゃ少しの足しにしかならないでしょうが、回復はするはずです」
「ありがとうルル。でも大丈夫?」
「はい。申し訳ありませんが、万が一を考えて戦うだけの魔力は残してあるので」
何が申し訳ないんだろう。全部魔力をあげられなくて的な意味だろうか。もう天使。ルル天使。
「そっか。ありがとう。じゃあ先に貰うね」
「はい!」
ルルに貰った入浴剤のようなモノを風呂に入れる。少し青くなる。綺麗だ。
「ふぃ~」
おじいちゃんのような声を出し、湯船に入る。湯加減完璧だなぁこれ。
先ほどの悪魔との戦闘は、この街の住人の信頼を得るためとはいえ、流石に悪魔との戦闘は疲れた。出来ればもうしたくはないかな。でもまぁ、魔法隊副隊長や騎士副隊長を圧倒する悪魔を倒せるんだ。十分に力はついただろう。
体を洗うために立ち上がる。もう疲労感や頭痛が引いてきている。そして湯船の色は戻っていた。ありがとうルル。
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「ありがとうルル。おかげでだいぶ良くなったよ」
「本当ですか。良かったです。これどうぞ」
ルルは水を用意してくれていた。本当に天使。
「ではお風呂いただきますね」
「うん。温まってね」
「はい」
ルルが風呂場に入ったのを見て、ベッドに横になる。フカフカだ。緩和されたとはいえ、まだ倦怠感も頭痛も少しする。寝てしまおう。あぁ、意識が…………
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「シロさん? 起き上がれますか?」
ルルの腕に支えられ、体が起こされる。
「ん? えっと?」
「すみませんご休憩中のところ」
どこかで見たことのある男性が目の前にいる。
「誰でしたっけ?」
「王族直属騎士副隊長、バルモスと申します。先ほどは助けていただき本当に」
「い、いや別に全然気にしないで下さい。それでええと、ご用件は?」
「おぉ、申し遅れました。中央都市を御されている国王様が是非シロ殿とお会いしたいとおっしゃっております。来てはいただけないでしょうか」
「国王が? 俺に? なんでですか?」
「魔法隊並びに騎士隊の全滅を防いだ英雄に、感謝の言葉はあって当然でしょう」
あぁ、そういうね。信頼どころかそれ以上なのか。罪悪感がある。ごめんね、マッチポンプみたいになっちゃったね。
「はぁ、そういうことなら」
「ありがとうございます。面識のあるフーリエ殿が宿の前で待っております。後はフーリエ殿に」
そういえば頭痛いし体痛いんだった。寝ていて良いですか?
「シロさんシロさん! これは凄いことですよ! 英雄ですよ!」
ルルがキラキラした目で俺を見ている。これは行く流れですね分かります。
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もうすっかり外は暗くなっていた。星を探していると、フーリエに声をかけられる。
「やぁ、三度目だね」
「嫌な顔を見るのがな」
悪魔と会いたくないが、それ以上にこいつに会いたくない。自分の強さに自惚れて、過信して、あげく誰も守れないのだ。そして上から目線。あとイケメン。本当に嫌い。
「なぜ君はそうも僕に喧嘩を売るんだい?」
「胸に聞いてみろよ」
「ははは。胸が喋るわけがないだろう」
単にアホなんだろうか。
「さぁ、馬車を出すぞ。乗りたまえ」
この街に来るときの荷馬車とは違う。客人用の馬車だ。
「ルルはどうする?」
「私は遠慮しておきます。今回呼ばれたのはシロさんですし」
「そっか、じゃあ行ってきます」
「はい。行ってらっしゃい」
ルルに見送られて、宿を離れる。
「それで? 国王様がなんで俺なんかに」
「バルモヌ殿から聞かなかったのか? 我らを救ってくれた礼だ」
「救ったって言ってもなぁ。最後おいしいところ持っていっただけなんだけどな」
「ははは。謙遜するな。私は君の力を認めている。何でも宰相クラスの魔族の片腕を切り落としたらしいじゃないか」
「あれもたまたまだよ」
「それにしても買ったのは事実だ。それに君に感謝している人間はたくさんいる。私も含めてね」
そういうフーリエの表情は真剣だ。良い奴なのかもしれない。
「まぁ、なんだ。みんなのおかげで悪魔も弱っていたし? 俺が勝てたのも運みたいなものだし? そんな国王がわざわざ俺を」
「謙遜するな。君はもう立派な英雄だ。胸を張れ、英雄」
そう言ってフーリエは肩を叩いてくれる。こいつ良い奴だわ。そして俺はチョロいわ。
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街の門以上に大きな城門をくぐり、大広間に入る。たくさんの兵士が俺に感謝の声をかけてくれる。罪悪感と、少しの優越感。嘘だ。結構な優越感。
「こちらへどうぞ」
メイド服の女性に更衣室のような場所に通され、色々な服を着せられる。
「これにしましょう」
「そうですね。これがいいですね」
黒色のタキシードのような服。結構格好良く見える。馬子にも衣装だ。
「どうかな?」
フーリエが入ってのぞき見る。
「できました」
「完璧です」
この二人、昼間の拷問官かっ!? 最後まで気が付かなかった!
「では行こうか」
待って。お礼をさせて、あの二人に。
フーリエは自尊心が高くて偉そうで上から目線で格好つけたがりなだけで、良い奴です。




