都市騒動の決着
六十話
俺は足に魔力を纏わせ、足裏で爆発を起こす。超スピードで飛んでいく。間に合え!
「……相ルキフグス」
何の魔法だあれは。赤く、生み出している男性のフードが揺れているから、火だ。死人は出さないはずだから火力は低めと予想し、氷の盾を右腕に生み出す。
「参る」
男性がそう言うと共に魔法が放たれる。フーリエと男性の間に入り、右腕で魔法を弾く。男性の放った魔法も右腕の氷の盾も相殺され、消滅する。ギリギリ間に合った。驚いている男性を見て、言い放つ。
「参らせねーよ」
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少し前。
扉の開く音がして、私は振り返る。そこにはフードを被った男性がシロを抱えているのが見えた。
「シロさん!」
思わず駆け寄り、シロの手を握る。顔は青白く呼吸も荒い。
「これさえ飲んでくれたら、大丈夫になるはずなんだけどね」
シロを抱えてきた男性が液体を見せる。それを受け取り、少しだけシロに飲ませる。しかし、すぐに吐き出して咳き込んでしまう。ならばと思い、飲み物を口に含んでシロに口づけする。そのまま流し込むが、シロは吐き出そうとする。私はシロの体を抱きしめ、強引に飲ませる。ゆっくりと、全部。
口を離す。シロの顔色はもう良くなっている。安心で少し涙が出て、思わずシロを抱きしめる。口の中が変な味がする。今更だがあの飲み物は何だったのだろう。
「おい、悪魔……さっきの飲み物は何だ……変な物じゃ無いだろうな」
「あぁ大丈夫。マムシスッポン精力マックス即効飲料ってやつだよ」
「お前……なんでそんなもの持ってるんだよ……」
シロと悪魔と呼ばれた男性が何かを言っているがよく分からない。しかしシロの反応から体に悪い物ではなさそうだ。それにしてもこの味。なんだか嫌いではない味だ。
「大丈夫かルル? 水飲んだ方が良いぞたぶん」
シロがこちらを見る。顔が近い。でも顔色はいつも通りだ。良かった。
「大丈夫です。嫌いな味ではないですから」
「ルルちゃんは中々やるね」
悪魔はシロと親しげに話している。仲が良いのだろうか。
「その……悪魔っていうのは……」
「えぇ、僕は正真正銘悪魔のサタヌキアと申します。戦う?」
胸に右手を当てて礼儀正しく礼をしている。悪魔とは一体何なのだろうか。
「し、しないです。シロさんを助けてくれたので」
そう言った瞬間、私を抱きしめるシロの腕に力がこもる。顔を見ると、照れくさそうにしている。こういうところがこの人の可愛いところだ。
「助けたっていうよりは救い出しただけかな。このままじゃシロはまた監獄に逆戻りだよ」
確かに。むしろこの騒動で逃げ出したと思われかねない。
「ど、どうすれば」
「そこで僕に良い案がある。悪魔の賭けに乗るかい?」
「あぁ乗るさ。そうしなきゃいけないんだからな」
シロがため息を吐きながらそう言う。なら私は信じるだけだ。悪魔をではない、シロをだ。
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都市の門の前。
「おやおや、あなたは……」
「誰だって良いだろう。悪魔を倒す者だ」
「ほう、倒すと」
ルキフグスは眉を持ち上げる。
その後ろでサタヌキアが合流し、アガリアレプトが話しかける。
「めんどくさくしないために、あなたが向かったのでは?」
「いや、これでいいんだよ。彼はこのままじゃまた殺される。この街で生きていくためには街を救ったっていう功績が必要なんだよ。しかも悪魔とは敵対しているってお墨付きでね」
「なるほど。我らのせいで捕まっていたのですか……」
「まぁ起こしてしまった事は仕方がないよ」
「ですが、よりによってルキフグスですよ?」
「まぁね。僕の予想ではネビロスのタイミングだと思ってたんだよ」
「少し遅かったですね。ですが魔法隊副隊長を助けたというのは大きな功績になりそうです」
「じゃあ良いかな」
そう言ってサタヌキアもアガリアレプトも、戦おうとしている二人を見る。
ルキフグスは右腕に魔法を生み出しながら、言う。
「私達魔族に勝てるとでも?」
「御託はいいよ。ルルが待ってるんだから早くしてくれ」
「ほう……」
ルキフグスはその言葉を挑戦と受け取り、魔法を消す。
「良いでしょう。あまり馬鹿にされてもいい気はしないので」
そう言うとフードを脱ぐ。上半身には何も着ておらず、下も黒のズボンのみだ。筋肉は鍛えられ、髪を短くまとめている。ルキフグスは体を丸め、うなり声を上げる。背中の背骨の節々から棘が生え、肩甲骨辺りから翼が生える。右と左に一枚ずつ、計二枚。背筋を伸ばすと、筋肉がより一層盛り上がっている。
「我が名はルキフゲ。戦う時は我とだ」
中二病にしか見えないが、言っていることは本当だろう。雰囲気もしゃべり方も変わった。体感だが。
「さぁ、始めようか」
そう言ってルキフグス改めルキフゲは右手に金属魔法を生み出す。その魔法を剣の生成に使う。濁った銀色の長い剣を振り回す。それを見て俺も右手に剣を生み出し、足、右手に魔力を集める。大丈夫、勝てる。
「あぁ、始めようか」
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結果的に言うと俺の勝利だ。結構ギリギリだが。剣を打ち合いだけでなく、魔法での戦いにも発展した。その結果、地面は抉れ、門の一部が欠けている。
「はっ……! はっ……! くそがっ……!」
「ふぅ……俺の、勝ちだ」
俺が切り落とした右腕をルキフゲが拾う。右肩からはまだ血が流れ出ている。
「もういいだろ。帰れよ」
目一杯脅す。これは悪魔達を脅す事が目的では無く、俺が悪魔達と敵対していることを、この街の人に分からせるためだ。
「我はまだ……!」
「ルキフゲ、もう終わりだよ。僕も結構疲れたし、帰ろう」
サタヌキアがルキフゲを落ち着かせ、こちらを向いて言い放つ。
「さて、人間達。僕たちはまたここに来る。その時は全面戦争だ。この感じじゃ僕たちは負けなさそうだけどね」
そう言うとドラゴンの背に乗り、飛び立つ。
「今度は俺とやろーなー!」
フルレティの声が聞こえる。無邪気だなぁ。
ドラゴンの姿が小さくなっていき、見えなくなる。安心したのか膝から力が抜ける。
「シロさん! 大丈夫ですか!」
ルルが駆け寄り、支えてくれる。心配そうなルルの顔に、笑いかける。
「失礼。シロ殿、で間違っておりませぬか?」
がたいの良い男性が話しかけてくる。
「ええと……」
「あぁ、体は起こさなくて大丈夫です。私は騎士副隊長のバルモスと申します。この度は皆を助けて頂き本当にありがとうございました」
滅茶苦茶丁寧に礼をあれた後、副隊長は兵士を連れて行った。話を聞くところによると、彼は悪魔と一騎打ちをしたらしい。それで動けるほど元気なのは流石副隊長だ。
「さぁシロさん、休みましょう。立てますか?」
ルルに支えながら立ち上がる。結構限界が来ていたらしい。ルルはまっすぐどこかへ向かい、一軒の宿の前で立ち止まる。宿というよりはホテルだ。それも結構高級な。
「こ、ここにしましょうか。たまたま目の前にありますし。ね? ち、ちょっと休んでいきましょうか」
イブロからちゃっかり聞いていたんだな、邪魔されない宿の話。
次の次くらいでルルとHな事をします。
頑張って書きます。




