情報の対価
五十六話
「情報屋イブロちゃんとは、ずばり! 私のことだよ!」
真っ黒のフード付きコートを着て、フードも目一杯深く被っている。身長はルルより低く、声も可愛らしい女の子の声だ。
「さぁて、いくらで買ってくれるかな?」
嬉しそうにこちらを見上げる。フードが少しずれ、上がった口角と綺麗な黄色い目が見える。
「おっとっと……それで? どれが知りたいのかな?」
目が合った瞬間、フードをもう一度深く被る。取り繕うように聞いてくる。
「ええと……どれっていうのは? どういうこと?」
「探し物や探し人、宿から店から酒場まで。色々知ります知ってます、情報屋イブロちゃんにおまかせ!」
滑らかに喋る。おまかせ! の時には左手を腰に当て、右手を前に伸ばしピースをする。俺もルルも苦笑いをする。その空気に耐えられなかったのか、イブロは咳払いをして続ける。
「んんっ……で? ガウルって人? 悪魔が持って行った本? それとも誰にも邪魔されない宿? どの情報が聞きたい?」
最後から二番目の一言にルルは顔を少し赤くする。眼福眼福。
「どれも知りたいが……ガウルの話にしようかな」
「りょーかいだよ! じゃあ情報料はイブロちゃんのお昼ご飯を奢るって事で!」
「あ、あぁ別に良いけど」
おー!と声を出し酒場の椅子に座る。
「モノアイ竜の尾輪切りと、白脂魚の中落ち刺身下さい!」
あいよっと店員は言い、厨房に引っ込む。俺はイブロの横の席に座り、問う。
「それで? ガウルはどこにいるんだ?」
「君達が魔術都市に着いてから二日後、ガウルさんは鍛冶の街を出たんだよ。その後最果ての街に寄って、頼まれていた武器を届けたの。そしてムルフォスって名前の村にも寄って武器を届けて、今中央都市に向かって来てる。明日の午前中には着くはずだよ」
ヘラヘラした雰囲気は無く、真剣な顔で言う。この情報が嘘かどうかは分からないが、もし本当ならば明日の昼飯はガウルと食べられそうだ。
「それは本当の話か? まぁ嘘をついていても俺達には分からないが」
「安心してもらって良いよ! イブロちゃんの情報に外れは無いんだから!」
う、うさんくせぇ……
「んー、じゃあこれは貸しにするけど」
そう言って椅子から降りる。そしてルルの前に行く。
「今日のルルちゃんのおパンツはー? レースの黒!」
叫びながらルルの裾を捲る。透けている黒いパンツがチラッと見える。ほぉう。
「いやぁあぁああああ!!!」
ルルは叫びながら裾を掴み、しゃがんでしまう。ほほぉう。
「なるほど。信憑性は確かなようだ」
握手を交わそうとイブロに手を伸ばす。その手をイブロは笑顔で握りしめる。
「ニヒヒ! 分かってくれて良かったよ。それで? お兄さんは他に何が知りたいのかな?」
「じゃあ大声を出しても誰にも何も言われない宿を」
「それ以上言ったら今日は別々に寝ることになりますよ」
しゃがみながら、ルルが低い声で言う。
「じょ、冗談冗談。そうだな、さっき言ってた悪魔が持って行った本の話を聞きたいかな」
「りょーかいだよ! その前にご飯食べさせてね」
イブロがご飯を食べている間、情報料が必要ない話を聞かせてもらった。要するに何気ない会話だ。
「んっ、よし。じゃあ教えてあげよう。でもその前に」
イブロは立ち上がり、俺の前に立つ。
「情報料が欲しいな?」
「あ、あぁ。今度は何だ?」
イブロは自分の右手の人差し指を俺の鎖骨の間に当てる。そのままゆっくりと下げていき、へそ辺りで下げるのをやめる。思わず生唾を飲む。イブロがゆっくりと顔を上げ、フードの奥から甘えた声で言う。
「お、に、い、さ、ん、を、知りたいな?」
「だだ、ダメです! シロさんは私の!」
「じょーだんだよルルちゃん安心していいよー。イブロちゃんのタイプはこんなんじゃないよー」
酷くないですか。別にルルに好かれていればそれで良いけどさ。ってそうじゃない。
「ええと、俺を知りたいっていうのはどういう?」
「ニヒヒ! 君がいた前の世界の話だよ」
最近運動すると心臓が痛いです。
寿命が先か、書き終えるのが先か。




