中央都市に向けて、しゅっぱーつ!
五十三話
目はウルウル、身はプルプルしてるグリウスの頭をルルが撫でる。
「そ、そうだったんですか……以外というか……何というか……」
失礼だとは思いながらもグリウスの体を見る。裾どころか下半身丸々泥にまみれ、髪も一切手入れされて無く、手も土まみれ、顔も所々汚れている。申し訳ないが女の子には見えない。
「ほ、本当に女の子? 体は男でも心は女っていう複雑な感じとかじゃ無く?」
焦りから結構失礼なことを言う。
「ほ、本当ですよ! ほら!」
言うなりルルの手をふりほどき、服を肩までまくり上げる。下着は着ていたが、男性特有の膨らみは股間に無く、女性特有の膨らみが胸にはあった。服を勢いよく下ろし、怒りと羞恥で赤くなった顔で怒鳴る。
「どうですか! 女でしょう!? 私は女なんです!」
「ご、ごめん。いや本当に」
顔を背け、反省の言葉を口にする。その姿に怒りが収まったのか、肩の力を抜き始める。冷静になるにつれ、自分のした行動が恥ずかしくなったのか、座り込み、背を向けてしまう。
「わ、私もすみませんでした。ついカッとなって」
いや、役得でしたけどね。
「なんですかこの空気。なんなんですか?」
ルルは笑顔で俺に問いかける。目が笑ってないですよルルさん。
「いやでもほんと、服も変えて髪も綺麗にしたらもっと女の子っぽくなるんじゃないかな」
「そう……ですかね?」
背は向けたまま、顔だけこちらを見る。その仕草は反則級に可愛い。
「うん。ルルもそう思わない?」
一瞬俺を睨んだが、すぐに笑顔にし、グリウスの方を向く。俺なんかしたっけ……
「まだ出発まで少し時間ありますし、一緒に服買いに行きませんか?」
「ほ、本当ですか?」
「時間があるって言ったって、そんな買いに行くほどの時間あるかな?」
「さっき門の外に砂が舞っているのが見えたんです。この時期砂嵐が起こることが多くて。夕方までは出発しないと思いますよ」
「そっか。じゃあ良いんじゃない? いってらっしゃい」
にこやかに女の子二人を送り出そうとする。出発まで寝ていようか。
「え、来て欲しいです」
ルルに頼まれたら行くしか無いな。それが男だもの。
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グリウスは、ルルの家で水浴びをしている。流石に俺も入るわけにはいかないので、居間で待たせてもらう。ルルのお父さんと一緒に。気まずいなぁ。聞いてみたかったこと聞いてみて良いだろうか。
「その……ルルのお母さんは……?」
「あの子の母親、私の妻は、あの子が小さい頃に病気で死んだよ。急なことだった。あいつの遺言でな、ルルを、あの子を立派な魔道師にして下さいって言われたんだ。それからの私は色々な事をした。あの子が母親に誇れるような魔道師にするために。そんな考えがダメだったんだろうな。結局あの子を魔道師にしたのは……」
そこまで言い、こちらを見る。
「あの子から少し聞いたが、魔法が使えるようになったのは君のお陰らしいな。ルルを、あの子を頼む」
その言葉に少し考え、返事をする。
「はい。でもルルさんの今があるのはお父さんのお陰だと思いますよ」
お父さんは少し笑顔になる。一件落着。
「はい! どうでしょうか!」
ルルが嬉しそうに部屋に入ってくる。その後ろからグリウスが申し訳なさそうに出てくる。服は汚らしいが、髪は泥が落ち、梳かれて綺麗になっている。顔や腕、足の泥が落ち、彼女の綺麗な肌が見える。
「ど、どうですかね」
「うん。綺麗になったね」
思ったままの言葉を口にする。
「そ、それってどういう……」
グリウスは赤くなり、ルルはため息を吐く。ルルのお父さんからは殺気を感じる。褒めただけじゃ無いですか。
「そういう意味じゃ無いからね、本当に。ただ綺麗だと思っただけで」
「は、はい。大丈夫です。ルルさんからも聞きましたし」
どんな話をしたんだろう。今度はルルが赤くなる。うーんやっぱりルルが一番。
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これですかね? いやこっちの方が……と言いながらルルが服を選んでいる。俺もグリウスも疲れてしまっている。
「じゃあこれを着てみて下さい。気に入らなければこっちを。私はあっちの方を見てきます」
ルルが嬉しそうに歩いて行く。
「ええと……これを着れば良いんですかね」
そうじゃない? という意味を込めた目線をグリウスに向ける。正直ここは俺の体力を吸っている気がする。HP1しかないのに。
グリウスが試着室に入ってすぐ、俺の名前を呼ぶ。なんだろう。腰が痛くなってきた。
「あの……これでいいんでしょうか?」
流石に見るわけにはいかないので適当に相づちを打つ。すると、腕を引っ張られる。咄嗟のことでバランスが取れず、上半身を試着室に突っ込んでしまう。トラブルゥ!
目の前には下半身が下着姿のグリウスがいた。上半身は服を着ているが、下半身は綺麗な足が丸見えだ。男性と見まがうほどの姿だったが、こうやって四肢をみると、彼女がしっかり女性であることを教えてくれる。
「あっ、ひっ、きっ」
あぁやばい。何してもやばい。
「~~~~!!」
決断をしてからは速かった。靴を脱ぎ、試着室に入り、グリウスの口を塞ぐ。グリウスは目を見開くが、この状況は誰のせいなのか理解する。
「いいか? 今大声を出すと俺がやばい。めっちゃやばい。もう牢獄には行きたくない」
グリウスは口を塞がれたまま、首を縦に振る。良かった。グリウスの口から手を離す。
「とりあえずルルさんが来る前に外に出たらどうでしょうか? その……それも……」
グリウスが人差し指を立て、下に向ける。その指につられ下を見ると、グリウスの足の間に俺の固くなった棒が挟まっていた。あぁ、道理で気持ちいいと思ったわ。
「ご、ごめん」
さっと退き、試着室を閉める。危なかった、色々と。最近放出する機会が無かったからね。
「どんな感じですかね」
大量の服を抱えてルルが戻ってくる。本当に危なかった。
「そんなに持ってこなくても」
言いながらルルの服を持とうとし、ルルとくっつく。
「あの……好意は嬉しいのですが……外ではちょっと……」
ルルにアレが当たる。違うんです、違うんですよ。
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色々な服を試したが、結局青のワンピースに落ち着いた。グリウスも嬉しそうだし良かった良かった。
「そろそろ出発するぞー」
門へ向かうと、フーリエ軍の一人が声を掛けてくれる。
馬車に乗り、中央都市へ向けて出発する。
「さぁ! 中央都市へ向けて出発だ!」
外でフーリエがかけ声をかける。
お前が言うとテンション下がるわー。
繋ぎの話です。




