すごいとおもいました(小並感)
五十一話
学長が杖で床を何度か叩く。火球、水流、木片、土塊、銀の剣が四方八方から生まれ、悪魔へと向かう。
「おぉ怖い怖い」
悪魔にそれぞれの魔法がぶつかる直前、水球、土壁、金属盾、草木、火球で打ち消す。
「詠唱も起文も無しに魔法を出すとは。珍妙な」
学長の言葉通り、悪魔は口も、指一本も動かしてはいない。
「僕ら悪魔には色々あるんですよ。この本を取り戻さないといけない、とかね」
「魔族の事情には、生憎興味が無くての」
学長の声が低くなり、次々と魔法が放たれていく。
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「魔族……!」
フーリエが憎たらしそうな声を出す。あいつに気絶させられたもんね。
「いやはや良いメンツ! 面白そうな奴らばかり!」
フルレティは嬉しそうにケタケタ笑いながら近づいてくる。なんだろう。あいつの周りに違和感を感じる。
「魔道師の街に迫る軍団! 強大な魔法で消し去られる軍団! その中から現れる俺様! 最! 高!」
「何をしに来た魔族。貴様一度ならず二度までも」
魔道師達は悪魔に向け、魔法を撃つ準備をする。一応俺も準備をする。
「ほほう。もう準備は出来てるらしいな。じゃあ、一暴れと行こうか」
悪魔が右手に黒い大剣を生み出す。魔道師達はその行動を見逃さず、魔法を撃つ。火の。水の。木の。土の。金属の。それらが悪魔に被弾する直前、体を捻る。視認するのも難しい魔法を目にも留まらぬ速さで避けていく。
「アッハッハッハ! 良いね良いね! 最高だぁ!」
避けられそうな魔法は避け、当たりそうな魔法は剣で弾く。ドンドンこちらに近づいてくる。魔道師達は必死に魔法を撃っているが、当たりはしない。
「くそっ……!」
フーリエが大量の水を生み出し、足止めを試みる。
「ダメダメだなぁ!」
悪魔が水流に飲まれる直前、悪魔は上空に飛ぶ。水流も悪魔を追う。悪魔は前に進もうと水に足を付ける。その瞬間、水が凍る。悪魔が水を踏み、前に進もうとする度に凍り、道が出来上がる。
「もう終わりか」
水を渡りきり、目の前に着地する。黒剣を消し、腕組みをする。
「魔道師達もこんなものか。王族直属騎士達の方がもう少し楽しめたぞ?」
「なっ……! 王国にも攻め入ったのか!」
フーリエが声を荒げる。
「まぁ安心しろ。誰一人として傷つけちゃいないよ」
悪魔は面倒くさそうにあしらう。
「それよりも、だ。そこの人間! 以前に俺様を倒したそのの貴様! もう一度やってみないか? ん?」
「遠慮しておきます。前勝てたのは奇跡みたいな感じでしたから」
「ん? あぁ? 奇跡で負けたと? 運が俺様に味方しなかったと? そう言いてぇのか? 喧嘩売ってるのか?」
おぉ、こいつ本当に面倒くさいな。言っているセリフは怖いが、声が笑っている。戦う口実を見つけようとしてない?
「そこまでだ。フルレティ、もう十分だ」
街中からもう一人の悪魔が出てくる。俺に魔法を教えてくれた悪魔だ。
「もう終わったのか? サタ、あの本は?」
サタと呼ばれた悪魔は、フルレティに一冊の本を渡す。
「よっしゃ。んじゃ帰るか」
悪魔二人は俺達に背を向ける。その姿にフーリエは杖を向ける。
「僕達にそういうのは無駄だってそろそろ気づきましょ」
その一言で周りにドラゴンが20頭ほど現れる。魔法で生み出したと言うより、魔法で姿を隠していた感じがする。なんとなく感じていた違和感はこれだったのか。
「今回は時間切れだったな。またな!」
フルレティは嬉しそうに手を振る。精神年齢低めの悪魔が可愛い件について。
ドラゴンを引き連れ、飛び立つ。本当に騒動を起こしに来ただけだったのか。
「行ってしまったか」
軽く足を引きずって学長がこちらに向かってくる。あの悪魔、怪我人出さないって言ってたはずだが。
「大丈夫ですか学長先生!」
「大丈夫じゃ。怪我は無い。魔法を使いすぎただけじゃ」
そういう事ね。良かった。いやあんまり良くはないか。
「大人達は集まりなさい。少し話がある」
学長が大人の魔道師を呼び寄せ、学校へと入って行く。なんだろう。作戦会議かな。
「お腹すきましたし、何か食べませんか?」
気が付くとルルが袖を引っ張っている。
「ごめん、さっき食べちゃった」
「えぇー! いつですか!」
「フーリエが何かしてる間に」
「はぁーーー……これからそういう時は呼んで下さい」
「ごめんごめん」
でも魔法を撃ったせいか結構腹が減った。悪魔の襲撃に参加するのは予想外だったが、結構魔法が使える事が分かった。収穫ありだ。
ルルに手を引かれ、先ほどの店に入る。
「何か食べますか?」
「じゃあ……柔肉のグリル岩塩焼き一つ」
お肉も良いですねーと悩むルルの横顔を見ながら、中央都市の事を考え始める。
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とある一室にて。
「西暦2035年の悲劇、奪還!」
「おーめ、だねー」
「魔道師の街ってどんな感じなん?」
「割と普通だったぞ。つまんなかった」
「今は王の器がいるのでは?」
「その子は良い感じだよ。何せ僕が直々に魔法を教えたんだからね」
「だからーふあんー?」
「不安ですね。非常に」
「みんな酷くないかな?」
賑やかで、楽しそうな声が部屋に響く。
次に中央都市に向けての旅に出ます。




