異世界で魔法を使ったら最強になれました。
五十話
フーリエが外で戦っている間、店の中で飯を頼む。
「この赤身魚のカルパッチョと白身魚のムニエルで」
あいよーっと店長の声がする。
「いやぁここのお魚は僕もオススメだよ」
この声、このフード、この妙に距離が近い感じ。
「なんで悪魔がここにいるんだよ」
「まぁまぁ固いこと言わずに。柔肉のグリル岩塩焼き1つ」
「魚じゃねぇのかよ……」
隣を向き、悪魔に話しかける。
「何しに来たんだよお前」
「観光だよ観光」
「案内してやろうか? 牢獄っていう良い場所があってだな」
「ちょっとここで騒動を起こさないといけなくなってね」
俺の話は聞いていない。ていうか騒動?
「騒動って何する気だ」
「今に魔界の軍がここにやってくる。争いが起こっている間、ちょっと盗み出したい物があるんでね」
「騒動起こす必要あるのかそれ。普通に盗めば良いじゃ無いか」
「まぁ、そうなんだけど……っと」
大きな肉が悪魔の前に運ばれてくる。旨そう。俺の前にも二皿運ばれてくる。良い匂い。肉も旨そうだが魚にして良かった。
モグモグ食べながら話す。
「まぁ人殺すつもりもないし、盗むと言っても返してもらうだけだし」
「じゃあ尚更騒動なんて起こさなくて良いだろ」
「まぁまぁ、僕にも事情ってのはあるからさ。あ、そうだ。何か一つだけなら教えてあげても良いよ?」
嬉しそうに指を一本立てる。
何かっていってもな。正直襲撃に興味ないし。何を聞こうか。
「じゃあ一つ。なんでお前は俺が転生者だって知ってるんだ?」
「あれ? 今回の話のつもりだったんだけどなぁ」
「一つは一つだろ? 答えてもらうぞ」
「はぁ……えぇっとね、君が計画の中心であり、僕達はこの世界で君に色々としなくちゃいけないから、かな」
計画? この世界?
「全然意味が分からないんだけど」
「簡単に言うと、この世界は……って俺が言っちゃダメだったんだっけ」
何言ってるんだこいつ。とにかく聞かせて。中途半端に濁されるの嫌いだから。
「じゃあ僕はこれで。ごめんね、色々順序っていうのがあるからさ」
いつの間にか悪魔は食べ終わっていた。
「なぁ、俺はHPは1なんだよな?」
「ゴミ雑そうだよ?」
「ゴミ雑魚って言いかけたよな、今? まぁいいや。右腕失っても死ななかったんだけど、なんで?」
「君が成長してる証さ」
「いや成長って……」
「じゃ、ちょっと賑やかになるけど、ごめんね」
そう言って悪魔は店の外に消える。その直後。
「襲撃だー! 戦闘準備ー!」
その声で外に出る。フーリエは無事ドラゴンを倒せたようだ。
「大軍だー! 気を引き締めろー!」
その声に上空を見上げる。先ほどのドラゴンが、見ただけで10頭。街の入り口の先から多くの足音が聞こえてくる。どれくらいいるのだろうか。
「シロさん! 一緒に来ていただけませんか?」
ルルに上目遣いで頼まれたら断れないな。
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どれくらいいるのだろうか。気持ち悪くなるくらいたくさんいる。
「敵の総数、およそ300!」
魔法都市の門の前に、20人前後の魔道師達が集まる。こんなんで足りるんだろうか。
「学長はこういう時に出てこないのか」
「もし街中に入ってきたときは学長先生の出番ですよ」
なるほどね。
「それでは皆様! 魔法の展開をお願いします!」
その一言でみんな呪文を唱え出す。フーリエもルルも、他の魔道師達も長い詠唱を行う。命令句を複雑にする事で、色々な状況に対応できる魔法が生み出せるらしい。クエスト途中にルルが教えてくれた。
さて、この前の実験の集大成だ。魔力全てを使役魔法にする。土のゴーレム、金属のゴーレム。木で出来たゴーレムを2体ずつ生み出し、使役する。まだいけそうだ。木で人型の剣士を10体ほど生み出す。まだ余裕がある。ひと一人ほどの大きさの水の塊を生み出し、ドリル状にする。まだ作れそうだが、一旦ストップする。
「あいつ誰だ?」
「ヒューマンか?」
「それよりフーリエ様だ!」
「魔道師がこれだけいれば安心だ!」
「蹴散らしちゃえー!」
魔道師全員が魔法を発射する。空のドラゴンに向け、地の大軍に向けて。色とりどりの魔法が放たれ、着弾し、様々な効果を見せる。燃え、凍り、爆ぜ、流し、巻き付く。それを見た街中の魔道師達が歓声を上げる。
自分たちでも魔法使えるだろ。なんで驚いてるんだ? と思ったが、俺の周りの魔法使いは、ルルやフーリエみたいな強いやつしかいないからな。普通の魔法使いはこんな魔法は使えないのだろう。
そんな事を考えながら使役魔法で敵を倒す。俺の場合感覚共有魔法みたいな感じだけど。もうちょっと魔力に余裕あるし、もう何体か作ってみようか。
追加でゴーレムを作りより前に、魔道師達からの放たれる魔法が少なくなっていく。敵が思いの外簡単に倒せてしまっている。肩すかしだ。まぁあの悪魔も騒動を起こすだけって言ってたしな。
ゴーレム全てを土の中に埋め、ドリルで蓋をした瞬間、鬱陶しい大声がする。
「孤高で! 最高で! 最強の! フルレティ様! 再び参上登場仕った!」
土煙の中から、脱獄の時に助けてくれた悪魔が出てくる。
「胸、貸してやろうか」
悪魔が両手に魔法を生み出しながら、こちらに向かって言い放つ。
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魔術学校の地下。
「さてさて、これかな。うんうん。この本は僕たちのだからねー」
「何をしておるのかの? 学校の文書は共有財産じゃよ?」
「あれ、流石学長先生。敏感ですね。でもこれだけなので。また機会があれば」
「逃がすと思うかの?」
「共有財産燃え尽きちゃいますよ?」
「ほっほ。加減が分からないほど年老いちゃおらんよ」
肘を痛めました。
異世界転生したかもしれないです。
異世界で見つけたらご連絡下さい。




