デート【クエスト(実験)】
四十九話
フーリエとの戦闘から一夜開け、お見合い会場でルルと二人で朝食を食べる。
「どうしよっか。これから」
「そうですね……中央都市に向かいませんか? この街でやりたいことは終えましたし」
魔法を学ぶっていう俺の目標も達成できたし、ルルが良いなら向かうか。ガウルにも会いたいし。
「問題は、金だな。一稼ぎするか」
「私のもうちょっと残っていますし、多分ですが足りますよ」
この街に入るときのお金はルルが工面してくれたからな。今回は俺がやんなきゃな。
「いやいや。大丈夫。この街で一稼ぎするよ。俺の魔法がどれくらい通用するのか試してみたいし」
「そうですか? あ、それなら」
ルルがウキウキで袖を引っ張り、顔を覗き込む。ご飯が落ちるから揺らさないで。
「一緒に行きましょうよ! クエスト!」
デートか。良いね。
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学校横の大きめの宿に入り、クエスト一覧を見る。色々張り出されていて、見ているだけでも面白い。
「これにしませんか? ゴブリン30頭の討伐。少し大変ですが、私達なら問題ないでしょう。お金も結構多めですし」
よっしゃ。対象が多い敵で試したい事もあったし。
「うん、良いね。やってみようか」
はい! と嬉しそうな声でルルが返事をする。
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木々が生い茂る森を歩いて行く。木漏れ日が気持ちよく、鳥の鳴き声が心地良い。ルルと2人で道を歩きながら色々な話をする。
「魔力って増えるものなの?」
「魔力はパラメーターと同じなので、成長すれば増えていきますよ」
それって俺減っていくんじゃ……
「あの、そのですね」
ルルは言いにくそうにモジモジしている。懐かしいなこの感じ。
「どしたの? トイレ?」
「ち、違います! あの……手、繋いで良いですか?」
あ、そういう。
「いや、全然……うん」
返事になっていない返事に、ルルは思い切ったように手を握る。
「え、えへへ。えへへへへ」
真っ赤になった顔でこちらを見ながら笑う。めっちゃ可愛いな。可愛いな!
「なんかこういうの久しぶりですね。こういうデ、デートみたいな?」
「そんなことあったっけ?」
ルルは、はぁーーーーっとため息を吐き出す。幸せ逃げちゃうよ。
「もういいです。さっさと行きましょう」
それでも手は離さない。小さな手に引かれ、森の奥へと進んでいく。
他愛ない話をしながら奥へ進んでいると。
「あ、いました! あそこです」
手を引っ張られ、茂みに隠れる。隣に座ったルルが指を指す。近いですルルさん。
「あのゴブリン達を30頭倒しちゃいましょう。全部シロさんが倒しますか?」
群生している。30頭は群生っていうより塊だな。
「そうさせてほしいな。試したいことがあるんでね」
「分かりました。一応私も準備しておきますね」
目の前に魔法を展開する。今回はゴーレムを生み出す。3mを超える土塊を生み出し、ある程度人の形に整える。今回はクエストを兼ねた、自律戦闘の実験だ。どうすべきか一晩考えてみたが、良い案は浮かばなかった。魔法は基本的に一つの命令しか聞かない。飛ぶ、燃やす、育つ、爆発する、など。この前フーリエが出したヒュドラのような、溶け、歩き、倒す、のような複数の命令は基本的にどうすればいいのか想像出来ない。なので、だ。
魔力球を細くし、ゴーレムに繋ぐ。学長曰く、魔力は行為の補助なので、神経を真似ることも出来るのでは?と思ったのだ。魔力は魔法にしない限り干渉はされないはず。使役している途中に魔力の線を切られたりは無いはずだ。命令をし続けるのも難しいが、やってみよう。
「さぁ、ゴーレム!敵を倒せ!」
ゴーレムはゆっくりと歩き出し、ゴブリンの元へと向かう。
「「「「「ギギュアアァアァアァァア!」」」」」
ゴブリン達はゴーレムを見て武器を持ち出す。ゴブリンの体長は1mは無い程度。武器を振り回してもゴーレムの足しか攻撃できていない。
ゴーレムはゴブリン2体分程の腕を振り回す。巻き込まれたゴブリンは吹っ飛ばされ、体を変な方向に曲げながら絶命する。思ったより威力高めだった。だが実験はゴーレムの使役だけでは無い。右手に杖を生み出す。ゴーレムと俺の魔法を同時に使えるかどうかの実験をする、というのが今回の本当の目的。
「融かせ。ヒュドラ」
だっけか? 金属の龍を生み出し、凝縮した熱を中で解放する。ドロドロに溶けた金属龍の完成だ。
ゴーレムの腕から逃れようとしたゴブリン達を追撃する。頭を噛むような位置に龍を飛ばす。ゴブリンに触れた瞬間、上半身が蒸発する。まぁ俺も腕消し炭になったし、そりゃ強めの火力だろうな。ゴーレムで倒しながら残党を龍で消していく。
「もう十分ですよー」
後ろからルルの声がする。ゴーレムを土に戻し、地面に穴を開け、そこに龍を入れる。土をかぶせて証拠隠滅。まぁ熱は冷めるし大丈夫だろう。
「30頭討伐完了です。ちょっと多めに倒しちゃいましたが、報酬は上乗せにはならないと思います」
実験をしている間に終わっていたらしい。帰る準備をする。
「今回の報酬で中央都市には行けそうです。でも凄いですね、同時に魔法を使うなんて。それも使役魔法を」
そうだ。使役魔法って普通はどうやってするんだろう。悪魔曰く、物事の仕組みを知っている俺は魔法の使い方が違うらしい。神経なんて概念この世界に無いらしいし。
「普通使役魔法ってどうやってやるの?」
「い、今やってたじゃ無いですか。普通というのが分かりませんが、敵を補足し攻撃する、という命令句を入れるんですよ」
「命令句? 命令句っていうのは」
「穿て! だったり喰め! だったり駆けろ! だったり、さっきシロさんが使っていた融かせ! だったり。その魔法にどういう効果を持たせるのか。それを決めるのが命令句です」
命令句とやらを使えば、二度と命令しなくても一生その行動をし続けるのか。便利。そして俺の魔法不便。
「でも行動の決定に矛盾があったり、少しでも敵が想定外の行動を取ると、その魔法はほとんど効果を持たなくなりますし、その魔法を消すのにも結構手間がかかるんです」
なるほど。さっきはゴブリンという分かりやすい敵だったが、もし相手が降伏したとしても魔法自体は攻撃を続けるのか。逆に、降伏したと思って魔法を消し、相手が消した隙を狙ってきた場合はもう一度魔法を作る必要があるのか。それも不便。
「ゴーレムは命令句無しで使役してましたよね! どうやったんですか! 教えて下さい!」
ルルは嬉しそうに引っ付いてくる。教えるの難しいなぁ。
色々聞いてくるルルと手を繋ぎながら、宿へと帰る。クエストの完了を報告し、報酬金を受け取る。中々の重さだ。
「おいしい物でも食べに行きましょう!」
ルルに連れられて宿の食堂に向かう。
「肉も良いですし、魚も良いですね。何にします?」
メニューには多くの料理が載っている。どれもおいしそうな料理の絵が描かれていて迷う。魚にしようかなぁ。
「……ンだー! ドラゴンが来たぞー! 戦闘準備ー!」
ほう……デジャブだ。前もこんな事あったような。
「そうだ! ドラゴンの素焼きにしましょう!」
ルルが嬉しそうに手を引っ張り、宿の外に連れて行く。今日は魚の気分だったんだがなぁ。
外はたくさんの魔道師であふれかえっている。なんだかみんな楽しそう。
「フーリエ様の魔法が見られるらしいぞ!」
「魔法副隊長のか?」
「魔道師でも無いのに、魔法があんなに使える人間は見たことが無い」
「なんたって直属だ。その力は折り紙付きだぞ!」
みんなフーリエが見たくて来たらしい。なるほどね。帰るわ。
「皆の者! 見逃すなよ? 私の魔法は安くは無いのだからな!」
遠くの方からやって来るドラゴンに背を向け、観衆に杖を見せびらかしながら言い放つ変な男。フーリエだ。
「フーリエ様だ!」
「こっちを見て下さい!」
「ドラゴンなんか一瞬で倒しちゃって下さい!」
観衆の黄色い声に満足したのか。
「一捻りにしてやろう」
マントをバサッとしながらドラゴンの方に向き直る。
魚食べに戻っていい?
最近気が付いたんですが、この主人公食事も睡眠も摂ってないっぽいんですよね。大丈夫なんでしょうか。
ここからは異世界チート多めになると思います。あんまり気が乗らない部分です。




