打倒悪魔
四十五話
フーリエと悪魔が、にらみ合いながら魔法を撃っている。一発一発が地形を変えるほどの威力だ。
逃げるか。怖いし。
「逃げれると思うなよ!」
魔道師4人が逃がすまいと、取り囲んでいる。
仕方ないな。自慢の魔法を篤とくらえ。初めて使うけれど。
「喰らえ! アードゥル!」
魔道師が杖の先から火球を生み出す。
火と判断し、左手から風呂くらいの量の水を生み出す。そして、水を壁の形に形成する。火球は水壁に当たり、吸収されていく。
「くっ……! アードゥル!」
素人に魔法で負けたことが悔しいのか、火球を連発する。魔道師には見えないように、右手で金属板を生み出す。水の壁の形を変え、魔道師の体を包み、金属板で更に包む。そして、両手で生み出した火で金属を外側から熱する。
「あっづあづあづあづあついあついあつい!!」
昔は拷問にも使われたからね。仕方ないね。火と水と金属の混合魔法、名付けて五右衛門風呂。
「ゆけっ! フルール!」
「カリエル!」
「リフリュート!」
他の3人も同時に魔法を放ってきた。魔力球の残りも少ないが、出し惜しみはしている場合では無い。
右手に酸素、左手に水素、比率は1:2。俺と魔道師達の中間に混合させて、火をつける。
「うわっ!」
「爆破魔法か!」
魔道師の魔法を巻き込んで、大爆発を起こす。そして背後で3枚の金属板を生み出す。
酸素と水素の結合で、生み出されるのは爆発だけでは無い。爆発と共に生まれた水で3人を包み、更に金属板で包み、加熱する。
「あついあついあついあついあつい!!」
「あづいあづあづいあづいあづいあづ!!!」
目の前には4つの五右衛門風呂の完成だ。
魔力球は無くなってしまったが、中々な威力だった。魔力球は補充をしておこう。
初めての魔法、初めてのしっかりした戦闘。満点とは行かないが、及第点だろう。
振り返ると、悪魔の足下から生えた根がフーリエを雁字搦めにしていた。
「くっ……」
「人間にしては中々な技量だったが、やはり我々には遠く及ばんな」
隕石が2つほど降ったのではないかと思うくらい地形は変わっていたが、一応の決着は付いたようだ。
じっと見ていると悪魔がこちらに気が付いたようだ。
「五右衛門風呂とは風流だな」
なんで知ってるんだそんなもん。
「で? やるんだろ?」
仕方ない、と首を振りながら問いかける。
「シナリオ通りにな」
失神したフーリエの体が首から下が凍り始める。そして、悪魔がこちらに向く。勝てるだろうか。
「機転を利かせて、楽しませてくれ」
「大道芸じゃ無いんでね。高いよ」
俺も悪魔も笑う。
「ツケといてくれ」
と言うと同時に、悪魔の足下から氷で出来た龍が3匹向かってくる。
魔力球を少し使って火の剣を作り、足下に水の膜を作る。地面と水の膜の間に、先ほどの要領で爆発を起こし、龍を回避する。
「いいねぇいいねぇ」
回避したはずの龍が方向を変え、向かってくる。
爆発で出来た水で2匹の龍の頭同士を繋ぐ。水は瞬時に凍り、2匹は動きを止める。残りの1匹は目の前まで迫ってきていた。戦闘で使うのは初めてで不安は残るが、身体強化を行う。魔力を全身に、特に腕に重点的に纏わせる。
「うらぁああ!!」
腹から声を出す!音楽の先生が言ってた!
火で出来た剣を右から左になぎ払う。龍の首元まで一瞬で溶ける。
「中々良い身のこなしだが、さっきの魔法使いの方が面白かったぞ」
楽しませるためにやってるんじゃないんですが。
「溶かし、流し、支えよ」
悪魔が呪文を発すると共に、足下が泥濘み足首まで飲まれ、水の槍と炎の矢が迫ってくる。
土に飲まれて身動きが出来ない! あの槍と矢がどれくらいの強さかは分からないが、痛いと思う。多分。
ならばと思い、土の壁を全身を覆うように展開する。そして地中に穴を開け、悪魔の後ろまで続く道を作った。
「土に籠もったとしても、槍は突き破るぞ?」
悪魔の宣言通り、水の槍が土の壁を突き破る。空いた穴に火の矢が吸い込まれる、が中から反応は無い。
「断末魔を上げること無く死んじまったか?」
悪魔が首を捻った瞬間。
「爆ぜろぉおおお!!!」
後ろから、先ほどの火の剣より二回りほど大きな火の大剣を持って突撃する。
「見事!」
悪魔が笑うと共に大剣が体に吸い込まれる。そして、大爆発が起こった。
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とある部屋
ドーン!と遠くから大きな音が聞こえる。
「なんでしょうね今の音」
少女を着付けしている女性が話しかける。
「なんでも、魔族と大罪人が脱走したらしいですよ」
少女の髪を整えている女性が答える。
「でも副隊長のフーリエ様が来ているのでしょう? 安心ですね」
「その大罪人も、死よりも辛い苦しみを味わわせられるかも知れませんね」
「なんていう名前でしたっけ」
「たしかシロとかいう……」
そんな、という大きな声を出し、少女が立ち上がる。
「ど、どうしました?」
「それは本当なのですか?」
「は、はい。フーリエ様が」
「その話では無いです! シロという……」
「大丈夫ですよ。フーリエ様がいる限り心配なんてありません。ですから準備を続けますよ? ルル様」
シロさんが……と少女は小さく呟いた。
最近こんなんが書きたかったんじゃ無いって感じるんです。
夢にまで見た光景がこんなだったのか。
思い出せないです。




