悪魔による魔法の原理解説~火だるまを添えて~
四十一話
「この短剣のように金で生成するものもあれば、異世界ファンタジーにお決まりの手から火球が出る魔法なんかもある。中級、上級魔法は今は難しいだろうから、下級だけでも覚えちゃおうか」
「でも俺は身体強化魔法以外使えないって」
「それは魔力の存在を知らなかった君でしょ?」
「いやでも……」
「それじゃあやってみよう!」
人の話聞けよ。強引なんだよ。
「まずこの世界で魔法を使うには原理を学ばなければならない」
悪魔は、左腕を小さく前にならえのポーズをしながら、手のひらを上に向ける。
「火というものは、酸素や燃料を燃焼させて起こる現象、ではないんだよね」
左手の上に小さな炎の玉が出来上がる。
「さっきから気になっていたんだが、なんで旧世界のことを知っているんだ?」
「知っているというか、知らなきゃおかしいというか。僕達以外が知らなくてどうするって感じだから、かな」
僕達? というか知っていなきゃおかしい? ということは。それってつまり。
「お前も転生者なのか?」
「はいぶっぶー残念不正解。珍回答にもほどがある」
こいつ何言ってるんだ? みたいな顔でこちらを見る。もちろん顔は見えないので雰囲気だけだが。
「まぁ、僕は転生者でもないし、君が想像出来るような境遇でも無い」
「じゃあどんな」
「そしてそれを言うつもりも無い」
珍しく真剣な雰囲気を漂わせている。
「さぁてじゃあ訓練と行こうか」
「この世界の魔法は事象を手助けする存在だと思われているが、そんなことは無い」
「魔法学校の学長はそう言ってたけどな」
「どうやって起こるのか。それさえ分かれば魔法でそれを模倣することが出来る。要は知らないことは出来ない、と言うことだよ。そしてそんな事を知っているのは一握りの存在だけ」
どこか楽しそうな雰囲気で、そこに学長は含まれない。と付け足した。
「さっき火は前の世界とは違うって言ったけど、それは魔法に限る。そこらで火を熾せば酸素を使って燃焼するよ」
左手に浮かばせていた火球を、地面に転がっていた棒きれに引火させる。
「あれは今、酸素を使って燃えている状態」
先ほどまで左手の上で燃えていた火と変わりないように見える。
「違いが分からない。魔法で作った火と燃えている火に違いがあるのか?」
悪魔は嬉しそうな笑い声を漏らしながら、もう一度火を作る。
「見ただけじゃ何も分からないさ。触っても、水を掛けても。違いなんて分かりはしない。だって本物の特徴をそのまま魔力で作ってるだけだからね」
「本物の特徴?」
「火だったら輝いている、暑い、揺れる、火の粉を出す、水で消える、とかの特徴を真似た何かを、魔力で作ってるんだ。だから何をしても本物と偽物の違いなんてどこにも無い」
なんと言うか、無駄って感じだ。行程を踏みすぎていて、ムズムズする。
「というのがこの世界の魔法。だから知らないことは出来ないし、聞いただけじゃ真似出来ない」
「もっと簡単にできないのか?酸素を集めて火打ち石とかで火を付けるとかさ」
「着眼点は大外れっていうわけじゃないけど、もう一声かな。君は火の原理を知っているんだから、火そのものを作れるはずだよ」
いやぁ、無理でしょ。聞いていて頭痛いもん。
「体に纏わせていた魔力を火に変えるんだ」
とりあえずは言われた通りにしてみようか。
大きく息を吐き出す。口から漏れた煙を見て、ゆっくり目を閉じながら考える。
火は酸素を使って燃えている。だが酸素だけでは燃えたりはしない。火打ち石とかがあれば十分だ。酸素の塊に石二つを打ち合わせるイメージ。花火が出て、酸素の一部が光りながら熱を出す。そのまま全体に燃え広がって……
想像していると、口元が熱い。というか体全体が熱い。
「熱い熱い熱い熱い熱いなんで!?」
体全体が発火している。燃えている。吐き出した煙が体全体を覆ったまま発火してしまったのだ。
「あっづぃあづ……」
熱いのか痛いのか、寒いのか苦しいのか分からないまま、何も見えなくなってくる。最後に見えたのは、悪魔が腹をかかえて笑い転げている様子だった。
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「おぉwかwみよw彼の者にふたwたwびw立ち上がる勇気と力をwww」
神なんぞいてたまるか。
そろそろ助けに行かなきゃ……!




