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異世界で全ステータスが赤ちゃん並なんです。

三話目

「シロって言うんだ。よろしくな」


 格好良く決めてやった。男といえど惚れるだろ。だろ?


「へぇ……んな名前だな」


 感心と感想を続けて言うんじゃない。

 ガウルは俺の名前にはさして興味を示さず、カードを見つめていた。あとは俺がカードに手をかざせばステータスやら適正職業やらが分かるらしい。超便利。前世はニートだったからなぁ。普通の仕事とかは無理だなぁ。


「ガウルはステータスどんなもんなの?」


 手をかざしながらガウルに聞いてみる。


「ワシか? ワシは全部2000くらいじゃの。兄ちゃんらヒューマンは1500あれば強い方じゃないか?」


 ガウルが確認するように係員の方を向く。係員が答える。


「そうですね。私を含めヒューマンの方々のステータスは平均が1100ほどです。」


 ということは俺は20000とか、それ以上かもな。と思いながらカードに手をかざす。カードが青白い光を放ちながら文字を刻んでいく。


 見ていてもいいのだが、少し離れる。


 カードに映し出された超絶最強のステータスに皆が驚く。俺は別に普通じゃん? という反応をする。完璧に、スマートに。今度こそ格好いい姿を見せてやる。


 受付けの横にあるクエストボードを見つめる。ワイバーン退治12000、ドラゴン退治30000、ゴブリン8頭の退治1900等がある。通貨の単位がないが……万国共通なのだろうか。いや、でもそういう問題か? そして、クエストボードを見ていて気がついたことがある。この街に来てからずっと感じていた違和感の正体がようやく分かった。言葉も文字も全部日本語なのだ。


 道理ですんなりとここまで来られたわけだ、と納得していると係員とガウルが大きな声を出した。


「「ええええええーーー!!!!」」


 ふふん。想定内想定内。出身不明の素性を明かさぬ最強戦士、カッコいいじゃないか。


「「赤子じゃん!!!!」」


 どういうことだってばよ。


「兄ちゃん今までこんなステータスでよく生きて来られたな!」

「赤子以外でこんなステータス見たことありません!」

「こんなので歩いたら、す、すぐ骨折れるぞ!?」

「人間として、どうしたらここまで低い値が出せるのですか!?」


 前世の話かと思うほどの罵声をガウルと係員に交互に浴びせられながら、自分のカードに書かれているステータスを見てみる。



 Name:シロ

 Lv:1

 HP:5

 ATK:3

 DEF:3

 AGI:2

 LUK:1



 ふ、ふーん………?


 ゲーム用語と同じなら、HPはヒットポイント、体力の意味。

 ATKはアタック、攻撃力。

 DEFはディフェンス、防御力。

 AGIはアジリティ、素早さ。

 LUKはラック、運。となる。


 ヒューマンの平均が1100だっけ?それから考えるとゴミ中のゴミである。人がゴミのようだと形容した人物もいたが、これでは本物のゴミである。


 神は私に味方しなかったのか……? というか流石におかしくないか? 二人の言ってることを鵜呑みにするならば、赤子のステータスだという。成人こそしていないものの、長く生きてきたはずだがステータスには反映されていない。


 周りがうるさくなってきた。


 筋トレをしていたのにこれはおかしい。なぜ赤子と同じ? この世界に生まれて間もないからか? ということはここで長く過ごせば最強になれる可能性も?


 最弱だのなんだの周りがうるさい。考えがまとまらない。


 レベルの関係か? レベルを上げれば強くなれるのか? とりあえずレベルを上げることを目標にしよう。じゃなきゃ最弱だのなんだの言われたままだ。


 やってられるか。


 ガウルの方を向き、言い放つ。


「ご飯が食べたいです! あと宿屋で寝たいです! 金は働いて返します! どうでしょう!?」


 やけくそになってしまった。働いて金を返す、なんて元の世界の時では考えられない発言だ。


 (いつく)しみにあふれた目をしながらガウルはゆっくり口を開く


「お、おう。無理すんなよ? 兄ちゃん。」


 優しさが痛い。でもガウルは優しい人だ。


「あの……適正職の欄なんですけど……」


 係員が言いづらそうにこっちを見ている。


 そう言えばまだ聞いてなかったな。


「なんですか? ニートとかですか?」


 切れ気味に係員に言う。何も悪くないのに、ごめんね。


「いえ……あの……」


 よほど言いづらいのだろうか。なんだろう。逆に興味がわく。


「なんなんですか?」

「えっと……成長……です……」


 比喩(ひゆ)抜きで赤子なのね。俺は。

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