活きの良い魔力は要らんかね
三十七話
ルルに別れを告げられてから、図書館に籠もった。
読む本は身体強化の魔法について書かれた本。中身は正直あまり分からない。
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簡単に説明すると、命を持つモノ、生物と呼ばれるモノは皆、魔力を持っている。それの容量、体の内から外に出すときの変換効率が種族によって違うのである。
身体強化魔法は、魔力をステータスへと変化させる魔法である。イメージだが、ステータスは数値などでは無く、魔力のように、入れ物になっているモノである。魔力の容器から魔力を取り出し、他のステータスの容器に魔力を注ぎ込む。それが身体強化魔法だ。
まだ俺は自分の中にあるであろう魔力を感じられていない。まずはそこからだ。
例えば。指先に少し力を込める。目の前の本のページを指先から出る力で捲るイメージ。指が少し伸びた感覚。本の感触を想像し、触れ、摩擦が起き、ゆっくりとページが……捲れない。
才能が無いのだろうか。でも魔力以外に望みは無い。
何時間も練習するしか無い。
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「はぁぁああああ……」
体感にして二時間以上。ページを捲る事以外しなかったが、一切動くことは無かった。
「才能が無いんだろうか……」
「違うんだよなぁ」
目の前から声がする。どこかで聞いた事ある声だ。どこかで……
思い出し、勢いよく顔を上げる。
「お、お前は……!?」
「やぁやぁ久しぶり。懐かしの僕だよ。悪魔さんだよ」
俺の左胸に手を突っ込んだ悪魔だ。前の時と同じく、フードを被っていて顔は見えない。
「僕のこと覚えててくれるとはね。嬉しい限りだね」
「なんでここに……」
「魔力調整に悪戦苦闘している姿を見ていてね。苦しくなって」
「俺を殺した奴が何を言っている」
一切信用しない。
「いや笑いすぎてね。お腹が苦しくなっちゃってね」
手をヒラヒラさせながら笑っている。顔は見えないが、声が嬉しそうだ。
「流石悪魔」
「お褒めにあずかり光栄ですよ。さぁて、君は知りたいかな? 魔力の使い方を」
信用して良いのか? どこの誰とも……悪魔だけれども。悪魔を信用して良いのか?
「信用してくれて良いよ。悪魔がいつでも騙すとは思わないで欲しいよ。まったく、心外だ。」
肩を竦めてやれやれといったポーズをする。
「じゃあ、教えて欲しい」
悪魔が腕を組んで首を軽く捻る。
「条件が二つ。一つ、悪魔から教えてもらったなんて言わない事。二つ、ルルちゃんを救うこと」
「は? なんでルルが出てくるんだよ。魔力にもお前にも関係ないじゃないか」
「条件だよ。飲める?」
飲むしか無いだろう。
「わかった。俺に、魔力の使い方を教えてくれ」
フードの奥で、悪魔が笑った気がした。
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図書館から少し離れた場所の広めの公園に場所を移す。近くには誰も居ない。
「ちょっと痛いよ」
悪魔がそう言うと腰付近からナイフを取り出す。そして俺の手を取り、人差し指の先端を切る。痛い。
血が出てくるが、それを紙のようなもので拭う。血の付いた紙を何度か折り、中指と親指で挟んだ状態で呪文を唱え始める。指の間の紙が燃え始めた時、指を鳴らす。指パッチンだ。
「さぁ、これで準備完了。始めようか」
「今ので何が出来たんだ?」
「君の蘇生場所をここに移したのさ。契約書を使う原始的な魔法」
あんなのも魔法なのか。
「さて、まず魔力だが、目的を持って行うことで発動する。ページを捲るなんて非生産的な事はしなくていい」
「でも魔法の本には最初はそうすべきだって書いてあったぞ」
「あれは魔法の素質があれば出来るけど、君には無いからね」
きっぱり言わなくても良いじゃ無いですか。
「さて、じゃあ、戦闘開始と行こうか」
「え?」
フードの中の目があるだろう位置が赤く光る。ゆっくりと喉が苦しくなっていく。
悪魔は右手を伸ばし、手のひらを上に向ける。そこに黒い球体のようなモノが生まれる。意識が飛びそうだ。
息をしなければ。魔力を体力の容器に移すのを……感覚を……
手のひらをこちらに向ける。意識が飛ぶ直前、球体は悪魔の手を離れ、俺の心臓を貫いた。
「おぉ神よw彼の者に再びw立ち上がる勇気と力をwww」
悪魔は笑いながら俺の顔を覗き込んでいた。
なんだか混沌としてますね。
主人公は大丈夫なんでしょうか。
心配です。




