大逆転劇はここから始まる。
三十二話
「まずは、魔法について話そうかの」
「魔法ですか」
「おぬしは魔法について、何を知っているのかの?」
魔法といえば、ルルに教えてもらったな。なんだったか。
「たしか、何かの事象を手助けするモノだと」
「その通りじゃ。では、何故それが出来ると思う?」
「何故って……魔法だからですか?」
ほっほと学長が笑った。
「その通りではあるんじゃがの。魔法は魔力によって起こるモノじゃ。では魔力とは何か」
「分かりません」
「魔力とは、ステータスの一つなのじゃよ。カードには書かれないがの」
顎髭を撫でながら嬉しそうに話す。
「カードを作ったのは魔術学校だと聞きました」
「その通りじゃ。というかワシじゃ。まぁ大元だけじゃがな」
へぇ。え?
「あんなの作れるんですか?」
「カードに魔力を込めておくのじゃ。そしてカードの持ち主が手をかざすと、カードの魔力が持ち主の体を駆け巡る。どれくらいの力があるのかをカードに書いていくのじゃよ」
「仕組みとしては知っていましたが……そんなこと出来るんですね」
「おぬしおかしいと思ったことは無いかの?」
何がだろう。顎髭に長さだろうか。似合ってますよ?
「カードの数字は誰が決めたと思う? ワシじゃよ」
この人凄いな。いや本当に。
「平均のヒューマンのデータを取る。そして数値化する。そしてその差分を計算し、カードに写す。それだけじゃよ」
それだけでは無いと思います。
「故に魔力はカードに出ないし、学力魅力気品その他諸々は出ないのじゃ」
どんな種族でも、共通して持ってるステータスのみがカードに出る訳か。分かりやすい。
「さて。では魔法に戻ろうかの」
椅子に座り直す。長い話になりそうだ。飲み物とかありませんかね?
「魔法は事象の手助けをする。原則的にじゃがな、ありえないことは魔法では起こせない。例えば時間を戻すなどは無理じゃ。原則から外れるからの」
だから魔法は、自然現象で見たことあるのしかなかったのか。
「じゃあ僕のステータスを底上げすることは無理なんですか?」
事象の模倣だ。無理ではないのか?
「いや? いけるはずじゃぞ? 魔法が使えればじゃが」
あ、そうなんすね。
「事象の手助けじゃ。火事場の馬鹿力とかあるじゃろ。それに人は成長する。それを魔力で補えばいいだけの話じゃからの」
なるほど成長。うん。成長?
「僕成長するとステータス下がるんですが」
学長が目を見開く。
「今はもう全部のステータスが0になりました」
「それは本当かの?」
「はい」
ゆっくりと椅子から立ち上がる。そして右手を差し出す。
「おぬしは魔法が使えるはずじゃ。こちらに」
手を掴み、立ち上がる。何だろうか。というか使えるのか。
水晶の前に連れてこられた。中に煙が入っているように見える。
「これは魔力に反応するように出来ている。触ってみなさい」
そっと触れる。すると中の煙が濃い緑色になる。そして激しく渦巻き始める。
「えっと。これはどういう感じなんですかね?」
「色はその者の得意とする魔法分野。そしてどれだけ動くかは魔力量によって変わる」
「つまり?」
どういうことだってばよ。
「緑は身体強化魔法」
「しんたいきょうか?」
偏差値20くらいの受け答えになってしまった。
「ただ、身体強化魔法以外適正がないのが、玉に瑕じゃの」
いやそれでも良いです。全然良いです。むしろウェルカム。
「それじゃ、身体強化で最強になれるんですか?」
「最強かどうかは保証は出来んが、まあ強いじゃろうな」
ついにか。長かった、ここまで。異世界チーハーを夢みてここまで来た。
最強になれる日は近い。
「では早速練習をお願いします!」
「ふむ。それもよいのじゃが、勉強をしようではないか」
はえ? 嫌ですけど?
「そんな顔をするでない。学力は魔法使いにとっては欠かせない物なのじゃよ」
「そういうもんなんですか」
「そういうもんなのじゃよ。おぬしは戦闘前に、思考で世界がゆっくり感じることはないかの?」
「ないですね」
「勉強するしかないの」
なんでですかね。嫌なんですが。本気で。
「理由がないことにはモチベーションが上がらなくなり、結果に出ないと思うんですが?」
はあ、とため息をつく。ごめんね。でも嫌なんだもん。
「魔法使いは、どの魔法をどこに使うかというのをなるべく早く決めねばならん」
顎髭を撫でながら続ける。
「戦闘が始まると共に世界の時間がゆっくり進むように感じ、その間に何を使うのか考える。そのゆっくり考える時間を生み出すのは学力なのじゃよ。今までにどれだけ物事を学んできたか。経験を積んで来たか」
なるほど。漫画の登場人物があり得ない速さで思考してるやつですね。
「なるほど」
「というわけじゃ。図書館に行き、本を読んで来なさい。それが強くなるための、最短の道じゃよ」
なるほど。仕方ない。行くか。
「どれくらい学べば良いんですか?」
「一週間ほど本の虫になっておればいいじゃろう」
絶対嫌なんですが。やらなきゃダメですぅ?
「ルルが帰ってきたらわ図書館に向かったと、そう伝えておくよ。門を出て左にあるからの」
ありがとうございましたと言い、門を出る。
さっきまで言わなかったが、テンションが凄く上がっている。
異世界に転生してから、最強になることを考えない日はなかった。単純に強くなりたかった。誰にも馬鹿にされたくなかった。
遂に、ここまで来た。
さぁ、逆転劇を始めよう。
事故で右手折ってました。
異世界転生はしませんでした。




