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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
第二章 魔法の存在
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謎の男

三十話

 目を覚ます。今日は良い朝だ。いやなんとなくだが。ルルはまだ寝ていた。


 朝食まで時間があるので散歩するか。


 宿から外へ出る。壁の穴から日の光が漏れ出ている。朝に見える星空の様で綺麗だ。


 宿からまっすぐ進むと、大通り。左へ行くとノイマーの家。右は図書館だ。


 今日は一日図書館に行くつもりだが、まだこの時間では空いていないだろう。


 大通りを進む。道沿いは大きな店ばかりだ。もう開店しているところもある。流石に客で(にぎ)わっているところはないが、談笑しているところがちらほらだ。


 ゆっくりと歩いて行く。大通りの中盤ほどまで歩いてきた。少しずつ街が活気(かっき)づいてきた。


 この街の住人は亜巨人族ばかりだが、客には様々な種族がいる。エルフにドワーフ。ヒューマンにデミヒューマン。魔道師もちらほら見受けられる。


 一時期は敵対した種族である魔道師。今では談笑するほどの仲になっている。


 ガウルは見た目は年を取っているようには見えないが、昔と呼べるほど前の戦争に参加している。ルルは見た目と年齢が一致している。亜巨人族は長生きなのだろう。


 この街に来ている魔術師は戦争に参加していたのだろうか。その手で亜巨人族達を殺したりもしたんだろうか。亜巨人族達は何も思っていないんだろうか。話したくないと、殺したいと思ってはいないのだろうか。


「いやぁ探した探した」


 後ろから声を掛けられる。振り返ると一人の男性がいた。


 背丈は俺とほとんど同じ。全身黒ずくめでフードを被っている。


「君は僕のこと知らないよね? やっと見つけたよ。良かった良かった」


「あの……誰ですか?」


「あはぁ、いや失敬。名乗るほどの者ではないんだけどね? 君を導く者って感じかな」


 何言ってるんだろう。


「染まりそうなら良かったんだけどね。中々上手くはいかないよね」


 フード越しに頭をかく。そしてこちらに右手を伸ばす。


「いやぁ、じゃあちょっと失礼ね」


「何がっ……っえ?」


 左胸を、差し出した右手で一刺し。手を体の中でウネウネ動かす。痛みを超えて眠たくなってくる。


「ほーら力抜いて。楽になれるから」


 影になっていて顔は見えないが、嬉しそうな声で言ってくる。


 ダメだ。今死んではいけない。死んでしまえばこいつの素性が分からない。


「ぐっ……」


「頑張るねぇ。目の前であの女の子にもこうしたら良いのかな?」


「やめっ……」


「名前はなんていったっけな?」


「や……め……」


 意識が薄れる。力が抜けていく。


「おぉ頑張ったねぇ。そいじゃちょっと混じらせてもらうね?」


 どういう意味だ。誰だ。聞く前に意識が飛ぶ。



「おぉ、神よ。彼の者に再び立ち上がる勇気と立ち上がる力を!」


 やられた。



 教会から出る。そこにあいつはいなかった。結局誰だったんだ。


 混じると言っていたが、あれはどういう意味だ?


 分からない。分からない事が多すぎる。何も分からないが、俺はあいつが嫌いだ。それだけは分かる。



 宿に帰る。ルルが無事なことを確認しに行く。大丈夫だとは思うが。


 部屋のドアを開ける。起きたばかりなのか、腰から下は布団に入ったままだ。


「あ、おはようございます。今日は起きるの早かったですっ!?」


 抱きしめる。無事で良かった。死んでも生き返られるから問題ないとは言え、やはり嫌なことには変わりない。


「あ、あの……どうしました?」


 顔を見る。見つめる。


「あ、あの……」


 顔が赤い。ルルがつばを飲み込む音が聞こえる。


 顔が近づいて、目を閉じる。そして唇が重なる。



 一瞬とも、ずっととも思える時間が経った後。ゆっくりと離す。


 ルルが目を開ける。顔は赤く、息が荒い。


「本当にどうしたんですか?」


「ごめん。色々あって」


「そ、そうですか」


 色々で察してくれたのだろうか、それともそんな酷い顔をしていたのだろうか。


「その、大丈夫ですか? ご飯もそろそろですよ?」


「うん。そうだね」


 ゆっくりと体を離す。ルルは困った顔で笑っていた。


 ルルが無事で良かった。それにしてもあいつは一体何だったのだろうか。謎の男。嫌な予感がビンビンする。



 朝食をルルと一緒に食べた。味のしないご飯を。



「では行ってきますね!」


 どこか嬉しそうな顔をして出掛けて行った。


 さて、俺はどうしようか。怪しいやつについて、ノイマーに話でも聞いてみるか?


「いやぁ可愛いねあの子。キスされたことが嬉しかったんじゃない?」


「なっなんでおまっ」


 後ろにあいつがいた。さっき俺を殺したあいつが。


「いや、別にどこか行くとは言って無くないかい?」


「いや、でも、ていうかなんで俺を!」


「あ、ごめんね?そうするしかなくてね。現王に言われたら仕方ないよねぇ」


 なんだこの気ままなやつ。


「さて、君は聞きたいこと多いだろうけど、一個だけなら質問を許してあげよう」


 一個だと?何について聞くべきか。お前は誰なのか、王とは何か。なぜ俺を殺したのか。色々聞きたいがどうしようか。


「うんうん君のそうやって一考する癖良いね」


 馬鹿にされている。やっぱり嫌いだ。


「お前は誰だ」


「そうだねぇ、君達の言う悪魔だよ」


 悪魔? 悪魔ってあの?


「なんて言うか。あんまり悪魔らしくないな」


「君以外と酷いね!」


「悪魔っぽくないっていうか」


「悪魔っぽい悪魔がうろついていて良いと思う?」


 純粋な疑問だ、と言う声で聞いてくる。


「いや悪魔の時点でダメだろ」


「なんで? 悪魔はダメなの?」


「いや……なんでって……名前が」


「名前で判断するのかい? 悪魔でもキラキラでも良いじゃないか! 個性だよ!」


「う……いや……でも」


「まぁ僕は悪なんだけどね」


 なんだよお前。ほんと嫌い。大っ嫌い。


「さて。やはり君は面白いね。またどこかで会うと思うよ。それまで息災(そくさい)でねー」


 殺したやつが何を言う。


「いや待て! まだ聞いていないことがあるから!」


「質問は一個まで。ね?」


 指を口と(おぼ)しき所に当てて、シーのポーズをする。そのまま姿が蜃気楼(しんきろう)のように揺れて、消えた。


 なんだったんだ。


 悪魔のことについてノイマーに聞きに行ったが、何も得られなかった。


 次に図書館に向かう。本を何冊か選んだ。タイトルは悪魔に関する物ばかり。


 だが、特に何か詳しく書いてあるわけではなかった。


 この世界で悪魔と言うと、知性を持った魔界の生物という認識らしい。それ以上有益(ゆうえき)な情報は何もなかった。


 やはり中央へ行くべきだろう。


 その日、宿に帰ってご飯を食べた。風呂に入り、ルルと話をしながら寝た。


 次の日もその次の日も。その間、あいつは姿を見せなかった。


 そして四日後、ご飯を食べながらルルが話す。


「お金が貯まりました! 明日出発しましょう!」


 お金はルルが全持ちだ。ありがとね。ごめんね。



 さて、ようやく魔術都市だ。三つ目の街はどんな場所だろうか。

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