デート
二十九話
さぁ問題だ。男として外してはいけない問題。可愛い女の子を前にして頼む料理についてだ。肉か野菜か。メニューには、肉料理と野菜料理が半々に載っている。
男らしく肉料理か? がっつり食べて男らしさを前面に出すか?
ヘルシーに野菜料理か? 野菜大好きベジタリアン派がルルは好きかもしれない。
メニューを前にウンウン唸っているとルルが声をかけてくる。
「ここの料理おいしいらしいんですよー。何にしようかなー」
凄く嬉しそうにメニューを見ている。俺も迷い倒してるんだよね。
「よし、決めました。シロさんはどれにします?」
ニッコニコだ。可愛いかよ。
「めっちゃ迷ってる。ルルは何にしたの?」
「肉野菜料理っていうのがあったのでそれにしました」
良いなそれ。
「俺もそれにしよっかな」
これで、男は肉か野菜かについて考えなくて良さそうだ。
ルルの方を見る。顔が真っ赤だ。え? なんで?
「それでいい?店員呼ぶよ?」
「あ、は、はい。お願いします」
なんで赤いの? 俺また何か言った?
料理を頼む。二人分。
「ねぇルル」
「は、はい? 何でしょう」
「なんで赤くなってるの?」
「べ、別に赤く無くないですか?」
どっちだよ。
「いや赤いけど」
「……お揃いだなと思って」
「料理が?」
「……」
無言で頷くルル。初心かよ。その点に関しては何も感じなかったわ。
何を話して良いのか分からない。いつも何話してたっけ?
「ルルは今日午後からどうするの? 探険?」
「まだ決めてないですけど……シロさんはどうするんですか?」
「そうだなぁ」
俺も探険に行ってお金を稼ぎたいところだけど、戦闘開始すると死んじゃうからな。金髪イケメンみたいな人の良いやつがいたら、荷物持ちすら出来ないからなぁ。どうしよう。
「宿で寝てるかもしれない」
「そ、それなら、どこか一緒に出かけませんか?」
「デート?」
ニヤニヤしながら聞いてみる。
「っそ、そうですかな?」
顔が真っ赤になりながらルルは答える。いや答えられてないけど。落ち着いて。
「じゃあデートしようか。どこ行きたい?」
「ど、どこでも?」
指先をツンツンさせながら答える。一々可愛いな本当に。
「ここら辺でどこか行くって言ってもな。鍛冶見るとかそんなんしかないけど」
「それなら洋服屋さんとかどうでしょう?」
「あぁ、良いね。じゃあご飯食べたら行こうか」
「は、はい!」
嬉しそうだ。何よりだ。
料理が運ばれてくる。ステーキ肉と別皿で野菜。凄くおいしそうに焼かれてある。
「おいしそうですね!」
ほんとにな。何かしら良い香りが立ちこめる。香草だろうか。野菜の香りだろうか。よだれが出てくる。
肉を切る。肉汁が出てくる。熱々の鉄板に流れ、音を立てて肉の香りを強調させる。肉を口に運ぶ。柔らかいが肉って感じの歯ごたえもある。旨い。
穫り立ての野菜を洗って盛りつけたのだろう。甘い香りと滴る水が肉の味を引き立てる。
ルルは幸せそうに食べている。肉と野菜のどっちが好きなのだろう。
「おいしいですね」
「そだね。肉は柔らかいし野菜は新鮮だし」
「本当ですね。特にこの黄色いの何でしょう。凄く甘くておいしい」
カボチャみたいな甘さの、レモン色の何か。おいしい。
「ルルは野菜と肉だったらどっちが好きなの?」
「お肉ですね。脂身が少しあるお肉が好きです」
肉を食べながら話す。
「この肉は?」
「滅茶苦茶好きです」
リスみたいに頬を膨らませ、満足顔でそう答えた。
料理店を出て、服屋に向かう。
「ルルはいつも同じ服着てるけど、それは魔法を強化する効果があるの?」
「これは魔術学校で着てた服なんです。魔法強化とか特にそういう効果は無いんですけど、着心地良いし、ゆったりしてるので凄い好きなんです。変ですか?」
自分の裾や背中を確認している。
「いや似合ってるけど、戦闘の時もそれだったからさ」
「あ、ありがとうございます。普段の服を持ってないからいつもこれなんです」
だから買いに行こうって言ったのね。行こう行こう。そんなにお金無いけどね。
「だから」
ルルは言葉を切り、少し小走りで数歩先に行く。そして振り返る。
「選んで欲しいなって思ったんです!」
はい見返り美人。
店の中で色々な服を選ぶ。背は低いが、スタイルは良いので何を着せても似合う。困る。
「ルルは何色がすき?」
「青系が好きです」
青系か。よし、これにしよう。
薄い青色で裾が短いワンピースを選んだ。足がだいぶ出るがこの時期は大丈夫だろう。
試着室から出てくる。凄い似合っている。
「うん。可愛い」
「ほんと可愛いですねこの服」
ルルも可愛いんだけどね。
服を持って会計に行く。値段は可愛くはなかった。手持ちギリギリだった。
店を出て、宿への帰り道。お昼ご飯が少し遅かったのでもう良い時間だ。
「今日は本当にありがとうございました。これから普段はこれ着ますね」
裾を摘まんでヒラヒラさせている。
「俺も楽しかったよ。また行こうね」
「はい!」
ご飯を食べ、お風呂に入る。そして布団に入って。
「この前さ、ガウルに邪魔されたけど」
ルルは、? な顔をしている。
「その……いやなんでもない」
そうですか、とルルは呟いて瞼を閉じる。今日は俺に付き合ってもらったし、疲れていたのだろう。
規則正しく呼吸をしている。顔を近づける。その白い頬にそっと優しく唇を押し当てる。心臓バクバクです。これくらいは許されるだろう。
ゆっくり目を閉じる。深呼吸をする。今日はたくさん喋ったし、歩いた。こんなに長い時間ルルと一緒にいたのは初めてだ。
明日からは俺は調べ物をしなくては。ルルは冒険でお金を稼ぐらしい。
今日は、この街で最後のゆっくりした時間になるだろう。




