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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
第二章 魔法の存在
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異界のレベルアップで全ステータスが0になりました。

二十五話

「「「「「うぉおおおおおおおおおお!!!!」」」」」


 怖じ気づいていた人々が、大きな声を上げながらドラゴンへと突撃する。


 エルドラがこちらに戻ってきながら、また左手を挙げ、呪文を唱える。


「Buffing」


 今度は小指が黄色に光り輝く。その光が分散し、みんなの体に入っていく。


「今のは強化魔法だ! 怖がらず、前に進め!」


「「「「「おおおおおおおおお!!」」」」」


 エルドラがこちらを見、指示を出す。


「グリウスとガウルは我と共に前線へ。ルルは氷系の魔法をユーリの矢に付与せよ。その後は氷、水魔法を中心にドラゴンに攻撃。ユーリは氷矢で見晴らしの良い場所から攻撃。シロは矢の補充を主とせよ。以上!」


 俺の仕事少ないし楽だし良いなぁ。ていうかバフを俺に掛けてくれたら戦えたりしないかなぁ。


「青白き精霊の加護をこの杖に。万物の変化を阻止する力を今ここに具現化したまえ。付与(エンチャント)、フェンリル」


 ルルが矢に向かって呪文を唱えると、ユーリの矢尻が凍り出す。これでドラゴンに良く効く攻撃になるんだろう。凄いな魔法。


 エルドラの方を見る。ガウルとグリウスと共に頑張っている。グリウスがドラゴンの爪による攻撃を盾で止め、ガウルが攻撃を加える。エルドラは周りの戦況を把握しながら強力な一撃を入れる。


 見事な連係プレーだ。ああいうパーティー良いよなぁ。俺もあんな風に……


「さぁこれで全ての矢に付与し終わりました。お互い頑張りましょう!」


 ルルが握り拳を作りながら元気よく言う。


「えぇ。あなたも。気をつけてね」


「無理するなよ?」


 ルルは大きく頷くとドラゴンの方へと歩き出す。


「さて。私は木の上から矢を撃つことにするわ。無くなり次第声をかけるからそれまでは自由にしていてね」


 おっしゃ。ノージョブだ。よくよく考えるとここにいる意味無いよな、俺。まぁ人足りないんだろうけどさ。


 俺にはエルドラのような強さはない。グリウスのような打たれ強さもない。ガウルのような屈強さもない。ルルのような魔法への適正もない。ユーリのように矢が上手く使えるわけでもない。


 俺には何があるのだろうか。この世界に来て、みんなから何かをもらってばかりの俺は。進むことを諦め、現状に満足し、役に立てないことに心痛まない俺は。


 やろうと思えば明日にでも中央都市に行けるだろう。でもそうしない。なぜか。ルルやガウルと離れるのが怖いからだ。守られて、安心したいだけだ。あの頃のように。自分の部屋という殻に閉じこもっているだけだ。


「きみー。そろそろー」


 ユーリに木の上から声をかけられる。持って行こう。


 三十本ほど掴んで木を上る。そして渡す。木の上からだと戦況がよく見える。こちらが押し気味だ。


「ありがと。ところで君、何もしないんだね。出来ないの?」


 責めるようにではなく、純粋な疑問として言ってくる。刺さるなぁ。


 ユーリに何も言わずカードを見せる。?な顔で受け取るユーリ。その顔が哀れみという感じの顔へ変わる。


「そっかぁ。これじゃ無理だよね。でもこれって……もしかして君、王族だったりする?」


 それってどういう? と聞く前にエルドラの叫び声が聞こえる。


「全員下がれ! 炎ブレスが来るぞ!」


 ドラゴンは大きく羽ばたき、飛翔する。牙と牙の間から炎が見える。


 もう一度エルドラが叫ぶ。


「ルルは全力の氷魔法をドラゴンに! 他の奴らは我の後ろにいろ!」


 ドラゴンが大きく息を吸い込む。探険者達がエルドラの後ろに下がる。ドラゴンが巨大な炎の塊を吐き出す。


 エルドラは剣を天に掲げ、叫ぶ。


「絶対零度」


 ドラゴンの炎ブレスがエルドラを包み込む直前、剣を振り下ろした。


 口から放たれた炎そのものが凍る。炎の形の青白い塊が出来上がる。直後、パリンという音と共に、炎だった物が、砕け散る。


 そしてルルの魔法が完成する。


()め。フェンリル!」


 杖の先に直径一メートル、長さ三メートルほどの氷の塊ができあがり、ドラゴンに向かって飛ぶ。飛んでいく間にゆくっりと形が変わり、氷の塊が口を開いた狼の形になる。そして、空中にいるドラゴンの腹部に深く刺さる。


 グルォオオオオオオオオオオ!!!!


 大量の血を吐き出しながらドラゴンが叫ぶ。エルドラも叫ぶ。


「畳み掛けろおおおお!!!!」


「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」


 全員が剣で切りつける。斧で叩き切る。槍で貫く。弓で射る。


 そして、ドラゴンが体を持ち上げ、翼を大きく広げ、倒れる。


 ドラゴンの体から青白い光が全員に飛んでいく。俺にも。


「えっ? 俺にも?」


 体に吸い込まれ、心臓が今までで一番強く、ドクンと鳴る。


 慌ててステータスを確認する。




 Name:シロ

 Lv:15

 HP:0

 ATK:0

 DEF:0

 AGI:0

 LUK:0




「へぇ。へ…………?」


 オールゼロ? ビールかな? いや冗談を言っている場合ではない。まぁなんとなく予想はしていたが……まさかレベルアップすることで本当に全部0になるとは……


「やりましたね! ……大丈夫ですか?」


 ルルが近寄ってきて声を掛けてくれた。何も答えられなかった。


「ステータス……全部ゼロになっちゃった」


「えっ」


 驚く一方、理解したようだ。


「でもパーティーには……」


「そうなんだよね。いや、俺も皆が戦ってる姿見て、あんな風に一緒に戦いたいなとは思ったけどね? 荷物持ちのことをパーティーと思ってるやつとか」


「我がパーティーは全員無事か! ならば良い! 良い良い!」





 いたわぁ……

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