異界のレベルアップで全ステータスが0になりました。
二十五話
「「「「「うぉおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
怖じ気づいていた人々が、大きな声を上げながらドラゴンへと突撃する。
エルドラがこちらに戻ってきながら、また左手を挙げ、呪文を唱える。
「Buffing」
今度は小指が黄色に光り輝く。その光が分散し、みんなの体に入っていく。
「今のは強化魔法だ! 怖がらず、前に進め!」
「「「「「おおおおおおおおお!!」」」」」
エルドラがこちらを見、指示を出す。
「グリウスとガウルは我と共に前線へ。ルルは氷系の魔法をユーリの矢に付与せよ。その後は氷、水魔法を中心にドラゴンに攻撃。ユーリは氷矢で見晴らしの良い場所から攻撃。シロは矢の補充を主とせよ。以上!」
俺の仕事少ないし楽だし良いなぁ。ていうかバフを俺に掛けてくれたら戦えたりしないかなぁ。
「青白き精霊の加護をこの杖に。万物の変化を阻止する力を今ここに具現化したまえ。付与、フェンリル」
ルルが矢に向かって呪文を唱えると、ユーリの矢尻が凍り出す。これでドラゴンに良く効く攻撃になるんだろう。凄いな魔法。
エルドラの方を見る。ガウルとグリウスと共に頑張っている。グリウスがドラゴンの爪による攻撃を盾で止め、ガウルが攻撃を加える。エルドラは周りの戦況を把握しながら強力な一撃を入れる。
見事な連係プレーだ。ああいうパーティー良いよなぁ。俺もあんな風に……
「さぁこれで全ての矢に付与し終わりました。お互い頑張りましょう!」
ルルが握り拳を作りながら元気よく言う。
「えぇ。あなたも。気をつけてね」
「無理するなよ?」
ルルは大きく頷くとドラゴンの方へと歩き出す。
「さて。私は木の上から矢を撃つことにするわ。無くなり次第声をかけるからそれまでは自由にしていてね」
おっしゃ。ノージョブだ。よくよく考えるとここにいる意味無いよな、俺。まぁ人足りないんだろうけどさ。
俺にはエルドラのような強さはない。グリウスのような打たれ強さもない。ガウルのような屈強さもない。ルルのような魔法への適正もない。ユーリのように矢が上手く使えるわけでもない。
俺には何があるのだろうか。この世界に来て、みんなから何かをもらってばかりの俺は。進むことを諦め、現状に満足し、役に立てないことに心痛まない俺は。
やろうと思えば明日にでも中央都市に行けるだろう。でもそうしない。なぜか。ルルやガウルと離れるのが怖いからだ。守られて、安心したいだけだ。あの頃のように。自分の部屋という殻に閉じこもっているだけだ。
「きみー。そろそろー」
ユーリに木の上から声をかけられる。持って行こう。
三十本ほど掴んで木を上る。そして渡す。木の上からだと戦況がよく見える。こちらが押し気味だ。
「ありがと。ところで君、何もしないんだね。出来ないの?」
責めるようにではなく、純粋な疑問として言ってくる。刺さるなぁ。
ユーリに何も言わずカードを見せる。?な顔で受け取るユーリ。その顔が哀れみという感じの顔へ変わる。
「そっかぁ。これじゃ無理だよね。でもこれって……もしかして君、王族だったりする?」
それってどういう? と聞く前にエルドラの叫び声が聞こえる。
「全員下がれ! 炎ブレスが来るぞ!」
ドラゴンは大きく羽ばたき、飛翔する。牙と牙の間から炎が見える。
もう一度エルドラが叫ぶ。
「ルルは全力の氷魔法をドラゴンに! 他の奴らは我の後ろにいろ!」
ドラゴンが大きく息を吸い込む。探険者達がエルドラの後ろに下がる。ドラゴンが巨大な炎の塊を吐き出す。
エルドラは剣を天に掲げ、叫ぶ。
「絶対零度」
ドラゴンの炎ブレスがエルドラを包み込む直前、剣を振り下ろした。
口から放たれた炎そのものが凍る。炎の形の青白い塊が出来上がる。直後、パリンという音と共に、炎だった物が、砕け散る。
そしてルルの魔法が完成する。
「食め。フェンリル!」
杖の先に直径一メートル、長さ三メートルほどの氷の塊ができあがり、ドラゴンに向かって飛ぶ。飛んでいく間にゆくっりと形が変わり、氷の塊が口を開いた狼の形になる。そして、空中にいるドラゴンの腹部に深く刺さる。
グルォオオオオオオオオオオ!!!!
大量の血を吐き出しながらドラゴンが叫ぶ。エルドラも叫ぶ。
「畳み掛けろおおおお!!!!」
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
全員が剣で切りつける。斧で叩き切る。槍で貫く。弓で射る。
そして、ドラゴンが体を持ち上げ、翼を大きく広げ、倒れる。
ドラゴンの体から青白い光が全員に飛んでいく。俺にも。
「えっ? 俺にも?」
体に吸い込まれ、心臓が今までで一番強く、ドクンと鳴る。
慌ててステータスを確認する。
Name:シロ
Lv:15
HP:0
ATK:0
DEF:0
AGI:0
LUK:0
「へぇ。へ…………?」
オールゼロ? ビールかな? いや冗談を言っている場合ではない。まぁなんとなく予想はしていたが……まさかレベルアップすることで本当に全部0になるとは……
「やりましたね! ……大丈夫ですか?」
ルルが近寄ってきて声を掛けてくれた。何も答えられなかった。
「ステータス……全部ゼロになっちゃった」
「えっ」
驚く一方、理解したようだ。
「でもパーティーには……」
「そうなんだよね。いや、俺も皆が戦ってる姿見て、あんな風に一緒に戦いたいなとは思ったけどね? 荷物持ちのことをパーティーと思ってるやつとか」
「我がパーティーは全員無事か! ならば良い! 良い良い!」
いたわぁ……




