カッコいい。カッコいい?カッコいい!
二十四話
ルルと唇どうしの握手を交わせないまま、ドラゴン討伐のメンバーとなる。
ゆっくりだが確実に酒場に人が集まってきている。周辺の街にもヘルプを出したらしく、竜人族やエルフがちらほらいた。
ガウルやルルと話をしながら、指示を待つ。ルルは掻い摘んで、昨日の話をガウルにした。ガウルは辛そうに、でもしっかりと話を聞いてあげていた。仲は深まっただろうか。
ガウルとルルの会話に笑顔が増えてきた頃、酒場の受付係の人が声を張る。
「お集まり頂いた皆さん!ありがとうございます!これより、ドラゴン討伐作戦の内容をお話します!」
さっきまで大声で話していた厳つい人達が静かになる。
「ドラゴンは竜族の上位種です。主攻撃は炎ブレス。他には尻尾での攻撃や羽ばたきによる風圧です。皮膚は硬い鱗で覆われていて、全力で斬ったとしても致命傷には至りません。」
羽ばたきがあるってことは西洋だな。
日本の、玉を七個集めると出てくる竜のような感じではない。日本は細長く、鬣がモワモワしていて、手足が二本ずつある、とも限らないな。何本もある奴もいる。まぁそんな感じだ。雲の中を飛び交ってるイメージ。
対して西洋のドラゴンは、大きな羽が生えていて鬣は無い。背中には棘が生えていて、炎を吐く。体はそこまで大きくなく、日本の竜に比べて全ての部位が太めだ。空をバタバタ羽ばたいて飛んでるイメージ。
というか竜人族いるんだし話し合いとか出来ないのか?出来たらやってるか。
六人グループを作り、それが十四出来上がった。八十四人も?多くね?そんなにドラゴンは大きいのだろうか
ガウルとルルと、俺。そして、分厚い甲冑を着たおっさんに、優しそうなお姉さん。あとは……。
「やぁやぁ皆の衆!我は孤高にして最高の騎士。その名も!エルドラ!努努足を引っ張るな?」
金ピカの鎧を着て、腰には装飾ばかりの剣。金髪碧眼のイケメン様だ。ゴテゴテの指輪を付け、髪をかきあげる。様になるなぁ。
もうこいつの名前も忘れたが放っておいて、自己紹介をすべきだな。
「初めまして。俺の名前はシロ。戦闘では一切役に立たないので、荷物運びをさせてもらうけど、良いかな?」
「うむ! シロとやら! 己が力を見極められているのはとても良いことだ! 我が荷物を持つことを許そう! して、名前が出てくるのは二十三話ぶりか?」
そういうのはやめて。メタいから。そろそろ出さないとみんな忘れるでしょ?ガウルとか忘れっぽそうだし。俺も本名怪しいけど。ゴリ……なんだっけ。
「まぁまぁ俺はいいから、次はルル」
ルルと目が合う。オドオドしているかと思ったが、意外としっかりした目をしている。そういえば一昨日も知らない人と探険に行ったんだよな。場馴れは俺よりしているか。
「初めまして。ルルと言います。魔道士でデミヒューマンです。魔法はたくさん覚えているので何かしらの役に立てるように頑張ります!」
ハキハキと。凄いなルルは。本当に。
「うむ! 魔道士よ! 我は前衛なので後衛は任せた! 我の指示通りの魔法を出してくれていれば、それで問題ない!」
「は、はい!」
なんで上からなの? なんで? ねぇ? そういう奴に限ってめっちゃ弱いんだぞ?
「では次、ワシはガウル。亜巨人族だ。前衛で肉弾戦が役割だ。盾として使って欲しい」
いやいや、ダメだろ。と言おうとすると。
「ガウルと言ったか? それは出来んな! 我が隊から怪我人は出さぬ! 盾役なぞ以ての外よ!」
「お、おう? でもだな」
「でももだってもないわ! 貴様は赤子か?」
「う、うむ。すまん」
「分かれば良い!」
ふーん。良い奴じゃないか。
次にお姉さんが、鎖骨と胸の間に左手を添えて自己紹介をする。
「次は私ね。私の名前はユーリ。覚えなくて結構よ。弓矢を使うのが得意だから、君には矢を沢山運んでもらおうかしら」
こちらを見ながら言ってくる。まぁ大船に乗ったつもりで任せておきたまえ。
「うむ! ユーリ! ルルと共に後方支援は任せた! ルルの魔法を矢に付与すると良いだろう!」
そんなことが出来るのか? という顔でルルを見る。自信満々な顔だ。出来るんだ。すげぇ。魔法って便利。
「わた、しは、グリウス、です。よろ、しく。盾を、持ってる、から、攻撃、は、ふせ、ぎます」
早口言葉苦手そう。
「グリウスとやら! 生麦生米生卵と言えるか?」
「なま、むぎゅ………」
「よく分かった!」
何が? ねぇ、何が? 出来ないこと?
もう分からなくなっただろうから整理しよう。
金ピカのエルドラ。お姉さんのユーリ。ゆっくりなグリウス。
エルドラがグリウスの方へと歩いてゆく。そして兜を剥ぐ。
そこには可愛らしい顔があった。しかも本来顔があるべき位置より、ちょっと低くて小さい。
「グリウス! その鎧は貴様にはデカすぎる! 変えてこい!」
「は、はい」
中から出てきたのは、ルルよりかは少し背が高いくらいの男の子。よくドラゴン討伐をやろうと思ったな。
すぐに小さい鎧に着替えてきた。今度は安定している。用意はしていたんだろうか。
「グリウス! なぜあんな格好をしていた!」
「こんなに体が小さいと隊に入れてくれないと思って……」
滑舌いいなおい。
「我は見た目や種族で判断はしない! 見るのは強さと心だけよ!」
カッコいいなぁ。カッコいい。
ここで、受付の人がまた声を張る。
「それではこれより討伐作戦を開始します! 皆様のご活躍をお祈りしています!」
体が震える。武者震いだ。
背中を叩かれる。エルドラだ。
「安心しろ。死なせはしない」
イケメンか? いやイケメンだけど。
道中、エルドラから少し話を聞いてみた。どこから来たのか、と。
「我は中央都市から来た。あそこは良いぞ。活気が溢れている。皆元気な都市だ。」
中央都市から来たのか。エルドラが帰るタイミングが、俺と一致したら一緒に行けるかもしれない。
そしてもう一つ質問。なぜこの討伐作戦に参加したのか。
「人を救うことに理由を求めているのか? まだまだよの」
笑いながらそう話す。そういうもんかね。命がかかってるというのに。命を顧みず助けるのが勇者様なのかもね。まぁ生き返れるから問題は無いのだが。
歩いていると、先頭が立ち止まる。前方には討伐対象の竜がいる。いるのだが。
「で、デカすぎだろぉ!」
誰かが叫ぶ。俺がドラゴンの足の爪くらいしかない。ドラゴンの顔の長さだけで電柱くらいある。デカすぎて困る。
まだドラゴンには気が付かれていないが、みんなの足が止まる。そして、無理だ。そう感じていた。勝てる相手ではない。
そんな中、エルドラが歩き出す。
右手を左腰にある剣へ。
左手を顔の前に持ってきて、甲をドラゴンに向ける。
「Boost」
呟くと共に、左人差し指の指輪が赤く光る。
足を止めない。
ドラゴンがエルドラに気付く。後ろの俺らにも。
剣を抜き、剣先を天に向ける。
剣の柄を左手も握る。
「光舞う剣の舞い」
めっちゃ舞うじゃん、とツッコミそうになるが。
振り下ろしたのが見えなかった。恐らく、剣先から出た光の集合体が三日月状になって、ドラゴンへと飛んで行く。
皮膚を切り裂いた。
血が吹き出る。
グォォオオオオオオ!!!!
ドラゴンが鳴く。
エルドラが振り返り、叫ぶ。
「さぁ! 戦おうぞ! 鬨の声を上げよ!」
技名以外カッコいいじゃないか。
ちょっと長くなりました。
さんざん持ち上げて、実は弱い。でも良かったんですが面白そうなのでこっちで。




