挨拶、行っちゃう?
二十二話
ルルから話を聞いた後、自分の話もした。ここではない世界があること。そこから来たこと。何故来たのか分からないこと。ガウルにもこの話をしたことも。
「そうなんですか」
「受け入れられないよね」
結構難しいですね、と笑いながらルルが言う。
「でも、私がもしその立場だったら、泣いちゃいますね。受け入れられ無さすぎて」
「簡単に想像できるよ」
ルルがこっちを見て、頬を膨らましている。え? 可愛すぎか?
「冗談冗談。でも完全に受け入れているかと言われると、難しいな」
「この世界でたくさんの人と話をして、食べ物を食べ、寝て、生きようと頑張ってる。それだけで十分じゃないですか」
「そういうもんかね。前の世界のセオリーだったら、異世界に来ると、決まって何かしら強かったりするんだよ。誰にでも勝てるような力を持っていたり、その世界にまだ無い知識を持ち出したり。そんななんだけど、俺のこれは身の丈に合った力なのかもね」
俯きながら小さな声で言うと、ルルが顔をのぞき込んで、
「誰かさんがスライムくらい簡単に倒せるようだったら、私は今こんなに幸せじゃないですよ?」
励まし方が上手い。
「確かにね。こんな可愛い子を幸せに出来たならこの力も悪くないかな」
ルルはこちらを見たまま一瞬考え、顔を赤くする。そして背ける。
「結構頻繁にそういうこと言いますよね。誰にでも言ってるんですか? 最低です。たらしですね」
「言わない言わない。ルルにしか言わない」
こっちを見る。耳まで真っ赤だ。
「そういうのを誰にでも言ってるんでしょ!」
そっぽを向いたまま、布団を勢いよく被って寝る態勢に入る。
可愛いなぁ。流石チョロイン。
背中合わせにし、ゆっくりと布団に入る。夜遅くまで起きていたせいか、すぐに眠たくなる。すると、背中から声が聞こえてくる。
「本当にありがとうございます。私の勇者」
勇者、か。小さい頃は憧れて、なろうと努力し、もがき。いつしかあきらめる夢。勇者やヒーローは自分でなる物じゃなくて、誰かに持ち上げられて、なるものなのかもしれない。
そんな事を考えながら眠りに落ちていった。
翌朝は、快晴だった。ルルの可愛い寝顔をずっと見ていたら、起きてしまい、目が合って気まずくなった。でも可愛かった。
ルルと一緒に街へ出る。ルルは一昨日組んだパーティーと一緒に探険に出た。
俺は俺で見つけなければ。
募集掲示板に荷物役、と書いた。パーティーとしてカウントしなくていい、と書いただけで引っ張りだこだ。ガウルに言われて書いただけなのに。
俺を選んでくれた探険者達に話を聞くと、パーティーっていうのは、経験値を分配してしまうものなのだそうだ。荷物役をパーティーに入れると、戦闘をせずに経験値が稼げるので、楽して強くなりたい人が荷物役をやることもあるそうだ。俺は経験値はいらないのでWin-Winだ。しかも、仕事は大量にあるので凄く助かる。
今日一日で、七回も荷物役をした。重い物を持ちながら体を動かす練習になった。草木が生い茂る中、ぬかるんだ泥の中、浅い川の中、様々な場所での、気をつけるべき点を教えてもらった。
お金は入るし、経験値はもらわずに有益な情報をもらい、それを現場で学べる。凄く良い。
もらったお金を全部ガウルに返した。渋々だが、受け取ってもらえた。それでも少し足りなかったので明日もだ。
宿屋に帰り、ルルと話をして、寝ようとすると、ルルが話しかけてくる。
「あの、もし良かったらなのですが」
「うん?」
「私の出身都市に来ませんか?」
「えっと」
「もちろんそんなに時間は取らせませんし、一週間後ですし、嫌なら全然大丈夫なんですが」
「いや、ルルが生まれた街を見てみたいな」
「ほ、本当ですか?」
凄く嬉しそうだ。俺は眠い。一日体を動かしたのはスライム討伐以来だ。眠い。
「やっぱこう、なんていうか、まだ早いとは思うんですがこう。親と」
「うん。大事ね」
「そ、そうですか! 分かりました! それってそういう意味で…い……ね? ……た…………すね」
うんうん。そうだね。意識は半分夢の世界だ。眠たい。ダメだ。
「……ございます。おはようございます」
凄く嬉しそうなルルに起こされた。なんだろう。可愛いけど。
「えへ、今日も一日頑張りましょう!」
「う、うん」
え、本当に可愛いな
「それで……えっと……」
「どした?」
「私達の結婚式は魔術都市で良いですか?」
は?
魔術都市はサクッと終わらせます。たぶん。
そしてそろそろ全ステータス0になると思います。たぶん。




