告白
二十話
「ふぇ?」
顔を真っ赤にしたルルが、こっちを見ている。いや、変な意味じゃなくてね?
「あ、いや、その、そういうんじゃなくてね?」
「そ、そうですか」
そっぽ向いてタコを食べる。てかタコ多いな!
「おぉん? 青春か? ワシには過ぎ去りし青春か?」
ガウルがニヤニヤしながら肘で突いてくる。
「うるさいな……なんでもないよ……」
ルルは俯いたままタコを食べている。耳が赤い。
ガウルやルル達と色々な話をしながら、タコを食べ、みんなで後片付けをする。今回倒したタコはかなりの大物だったらしく、みんな食べ終わってもウキウキしている。
空いた皿を運んでいると、ルルがトコトコ寄ってくる。
「楽しかったですね」
「そうだね。もし俺がパーティーとして参加してたら、レベルが上がって大変なことになってたかもね」
「あはは。そうですね。でも、どうしてそんなにステータスが低いのでしょうね」
「この前会いに行った学者さんでも分かんないんだってさ」
「そうなんですか。手詰まりですね……」
自分のことのように落ち込んでくれる。この世界の人は優しい人ばかりなのだろうか。
「それで中央都市はどうかって。その学者さんが」
「中央都市というと、エルメロッジですか」
「そうそう。文献が多いからってさ」
「なるほど。ということはお別れですね」
「え?」
「魔術都市に一度帰ろうと思うんです。魔法が実践で使えるようになったので、その報告に」
「あ、そ、そう」
何故だか。何故だかルルとずっと一緒にいられると思っていた。このまま冒険を一緒にし、強くなる方法を見つけ、イチャイチャし。そんな、そんなものだと思っていた。
「ガウルさんにお金返してきますね。全然足りないですけど」
「あ、うん」
ルルが背を向ける。小さな背中だ。俺よりずっと小さいその背中で、自分の街を一人で出て、強くなるために最果ての街まで来た。今では一人で敵も倒せるし、こんな大物も助力ありとは言え、倒せる。一方俺は、である。
ガウルとルルが話している姿を見ながら、考える。試行錯誤ではあるが、俺も進もうとしている。ルルみたいに金をかせいでガウルに渡す。全部返して、その上で貯金して、自分の力で一歩ずつ進む。これ以上ガウルに迷惑はかけられない。だが、その一歩はルルの方が早く踏み出した。
ルルが嬉しそうに帰ってくる。
「ガウルさん、受け取ってくれました!」
「良かったね。頑張って稼いだもんね」
「はい! ……どうしました?」
「いや、色々考えてさ。ルルはすごいね。俺よりずっと小さいのに。すごく頑張ってる」
「そんなことないですよ。できることが少ないので迷わずにやってられるだけです」
こちらを見ながら口を開く。
「もし私がステータスが低かったら、たぶん絶望して何もしなかったです。一歩踏み出すことがどんなに辛いか。私には……分からないです」
「俺は……俺は全然すごくないよ。みんなに助けられなきゃ何もできないさ。それに……」
それにこの世界はどこか、ゲームっぽさを感じている。だから余裕を持っていられるだけだ。生き返れるし。
「それに……?」
「いや……こんなに可愛い子がそばにいてくれるなら、頑張るしかないしね」
我ながらクサすぎただろうか。顔を俯かせている。
「たらしですね」
こちらを見上げるルルの顔は、真っ赤に染っていた。チョロインかよ。
「まぁでももうすぐ行っちゃうんでしょ?残念だよ」
「心こもってないですよね?」
「こもってるこもってる」
笑い合いながら話をする。こんな関係になったばかりだというのに。もうすぐ終わりなんて。
「それで? いつくらいに出発なの?」
「そうですね……もう少しお金を稼いでからになるので一週間後くらい後ですかね」
まだ結構いてくれるようだ。凄く安心している自分がいる。俺チョロくね?
「そっか良かった良かった。俺も稼ごうと思うんだ。探険者の荷物持ちとかあるらしいし」
ルルが驚いた顔をしている。そして、言いづらそうに口を開く。
「ガウルさんは迷惑だとは思ってないと思いますよ。私のお金も渋々、という感じでしたし」
「いや、ガウルがどう思ってるかっていうより俺が嫌なんだよ。こう、何も返せてないことに甘んじることが」
前の世界のように。仕方ない、で片付けてしまうことが。
その思いが伝わったのかは分からないが、ルルは納得してくれたようだ。
そして決心したような顔をし、一言。
「今夜、お話があります」
えっ?
ケルト音楽とか聴きながら読んでもらうと、また違った味があるかもです




