初めての街
1話目
「……痛い」
右半身に走る痛みで彼は起き上がった。
真夏の代名詞とも言える鋭い日差しはなくなり、空を占める雲が9割を超えていた。この天候は気象庁の規定によると、確か曇りだ。
コンクリートではなく、岩と砂が入り交じる荒野と呼ぶに相応しい地面。それは硬く、本物であることを教えていた。
「いや…いやいやいや、教えてる場合じゃないでしょ。どこだここ」
さっきまで何をしていたのか。どうなったのか。
「少女を颯爽とイケメンの如く助けて……何かに、恐らくトラックに轢かれて……」
生きてる。助けられた? だとしたら患者を荒野に野ざらしにする病院は怒られるべきだが。たぶんそうではない。
「異世界転生しちゃったかなぁ……」
元居た世界では無い、どこか。異なる世界。
トラックにぶつかって生きていられるほど、自分の体は頑丈じゃ無かったはずだ。タンパク質が主成分だったはずだ。きっと、恐らく。
テンパっているせいで、自分は非人間説を唱えてしまっている。落ち着け自分。
「難しいことを考えたところで、すぐに答えが出る訳でもないし、とりあえず」
定番である街探しだ。ぐるっと周りを見渡す。
すると、後ろに巨大な崖がそびえ立っていた。
「高いな。ビルくらいはあるだろ」
ひとまずソレに向かって歩き出す。
周りには赤黒い地面が続くばかりだ。右手には小さいが木々が生えていて森の様になっているが、それくらいしかない。周りを見渡しながら歩いていると、崖に一層近づいていた。
黄土色の土だ。岩と言うよりは粘土を塗り固めて作ってあるように見える。
崖の中から人の声が聞こえる。
崖じゃ無く、もしかして大きな壁か?
壁らしきものに沿って歩いていると、扉のようなものが見えてきた。
そこには二人、おそらくだが門番がいた。
異世界に転生して初めての生物との会合となる。
中世西洋の甲冑を着用し、手には背の丈よりも少し長めの2mほどの槍を持っていた。
「ヒューマン?」
「見たことない格好だぞ」
「怪しい?」
「怪しい怪しい」
「死刑?」
何やら恐ろしい事を話し合っているが、両手を上げながら話しかける。無抵抗アピール大事。マジガンジー、略して卍。
「旅人なのですが、道に迷ってしまい。この……街? に入れないでしょうか?」
門番は顔を見合わせ話し始める。
「旅人?」
「ここに?」
「怪しくない?」
「死刑?」
「困ってる風だけど……」
「「うーん……」」
やたらと俺の命を取りたがるが、もう一押し。
「ここ二日何も食べてないのです……せめて食べ物だけでもでも……」
門番二人は顔を見合わせてアイコンタクトを取る。ちゃんと通じてる? それ。
「「ようこそ旅人さん! 最果ての街へ!」」
「は? 最果て?」
読んでくださった方はありがとうございました。
異世界で弱すぎたらどうなるのかなぁ、とか、経験値とかステータスとかの概念を真剣に考えた結果生まれた作品です。
頑張ります。たぶん。きっと。