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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
第二章 魔法の存在
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人の心に触れ、考えは変わってゆく。

十六話目

「決して下心ではなくてね?」


「正義の味方になりたかったのかい? ゴミのような人生を歩んできた、せめてもの罪滅ぼしと。自己満足に他人の命を巻き込むことで正当化して、自分の心すら誤魔化して」


「そんなんじゃない。別に罪滅ぼしなんかじゃなかった」


 反論する言葉が浮かんでこなかった。彼の言葉は正しい。また誤魔化した。その思いすら見透かされているのだろう。


「まぁいいさ。君が転生者だとしても、そのステータスの低さはなんなんだろうね。イレギュラーすぎやしないだろうか」


「あなたに分からないなら俺にも分からないや。俺みたいに異常にステータス低い人って過去いました?」


「僕の知りうるかぎりではいなかったね。それも含め、最大都市である中央の方が資料が多く揃っているよ」


 中央。次の目的地はそこに決定になりそうだ。


「中央ですね。ありがとうございます。それと」


 これは少し聞きづらい話だったが


「なぜあなたは。ノイマーさんはは中央へ行かないのですか?あなたほどの学力があれば、中央で立派な学者になれるでしょうに」


 世辞抜きだ


「さっきも話したけど、僕の幼なじみがここにいてね。彼は寂しがり屋なんだ。だから僕一人でってわけにはいかない」


「その幼なじみさんと一緒には行けないのですか?中央でも仕事はたくさんあるでしょう?」


 中央の方が賃金は高めだと思う。一般論だが。


「僕に遺骨を運べと?」


「ッ…………」


 ひどく寂しそうに、悲しそうに彼は笑っていた。


 窓を開ける。赤い光が差し込んできた。もう夕方だ。


「戦争でね。探険者達を避難させるために最前線まで出て行って、ね」


「戦争っていうのはどことの……」


「あぁ、そうか。最近来たばかりだったんだよね。」


 少し冷たい風が頬を撫でる。


「魔族との戦争さ。大きな大きな戦争でね。全人類対全魔族だったよ。少年もかり出されてね。あれは本当に酷かった」


 もしかして、亜巨人族が生まれるきっかけになった戦争だろうか。


「亜巨人族……」


 聞こうと、ノイマーの方を見ると、泣いていた。何を思いだしてか、何を考えてなのか。分からないが、悲しそうに、悔しそうに泣いていた。


「……ごめんごめん。亜巨人族が何かな?」


「い、いえ……」


 涙を拭っているがそれ以上に(こぼ)れている。思い出させてしまった。配慮が俺には足りていない。


 何を言うべきなのか言葉に詰まっていると、鐘が鳴った。


「あぁ、もうすぐ夜になる。良い子は家に帰りたまえ」


「はい……あがとうございました。それと……すみません辛いことを思い出させてしまって」


「いやいや。こちらこそごめんね。何年経ってもこんなままなんだ。すまないね」


「いえ……」


「さぁ、帰宅の時間だよ。夜は冷える」


 促され、屋敷を出る。


「また困ったことがあれば寄ると良い。いつでも歓迎するよ」


「はい。今日はありがとうございました。それでは」


 今朝来た道を歩いて行く。すると右手に細い道が見える。草木に囲まれているが、道はしっかりと踏み固められている。


 あんな話を聞かなければ寄ることはなかっただろう。(げん)に行きは気がつきもしなかった。


 ほんの少し、道を進む。街を一望できる崖の先端に、墓石が立っていた。


 ウルド・ゲーテル ―――ここに眠る―――


 ノイマーの幼なじみのことだろう。


 手を合わせる。面識はないが、気持ちの問題だ。



 宿屋への道を歩く。オルトゥには亜巨人族ばかりだ。たまにヒューマン、デミヒューマンを見かけるくらいだ。ガウルの言っていたとおりならば、亜巨人族は()の戦争で呪いをかけられた一族。


 そういえばガウルの過去など、何も知らなかったな。これだけお世話になってるというのに、も聞いてないし、言ってこない。言いたくないことなのだろうか。


 宿屋に着き、ルルの帰りを待つ。晩飯を食べ、風呂から上がると、裾に泥がついたままのルルが笑顔でVサインをしていた。


「5000! 稼いで来ました!」


 この宿屋の一泊の賃金は2000。十二分な稼ぎだ。


「おぉ!! おめでとう!!」


 俺が稼いだわけでもないのに、自分のこと以上に喜ぶ。


「ありがとうございます! 明日ガウルさんに少し払ってきます!」


 本当にルルは良い子だ。俺だったら遊ぶ金に使うかもしれない。


「うん。ガウルもきっと喜ぶよ。さ、お風呂は入ってきな」


「はい!!」


 元気だ。よほど嬉しかったんだろう。


 ガウルには俺もお世話になってばかりだ。何らかの形で恩返しをしなければ……


 だが、素性が分からない俺みたいなやつにどうしてここまで接してくれるのか。何も返せない。返せる見込みもないやつに。


 ベッドから下りる。ルルに「出てくる」とだけメモを残し、宿を出る。向かう先は決まっている。ガウルの工房だ。


 何も返せなくても。返すことをガウルが望んでないにしても。自分の素性は話そう。これは礼儀だ。ここまで優しく接してくれているのに何も話さないなんて。自分の考えの(いた)らなさに腹が立つ。


 ガウルはどんな反応をするだろうか。


 善人ぶった俺を叱るだろうか。怒るだろうか。叩くだろうか。


 ガウルは工房にいた。空を見上げ、物思いに(ふけ)っていた。


 ゆっくりと近づいていく。


 俺に気がつき、こちらを向く。ガウルは、いつもの人なつっこい笑みを浮かべ問いかける。






「おぉ、兄ちゃん。どうしたよ」


 願わくば、どうかガウルが傷つきませんように。

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