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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
第二章 魔法の存在
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多くを語らう学者

十四話目

 髪はボサボサ。丸眼鏡をかけていかにもな学者がそこにはいた。


「やぁ初めまして。僕はノイマー。話はガウルから聞いてるよ。君がワトソン君だね?」


「いや……違いますけど……」


「うんうん。いや冗談だよ? 君はつまらない男だなぁ」


 あ、嫌いかもしれない。


「あの……あなたが学者の?」


「そうそうその通り。僕がオルトゥで唯一の学者、ノイマーです。以後お見知りおきを」


 オルトゥで唯一なのか。まぁ、この街のみんな鍛治師だしな。


「ガウルに、あなたはステータスが低下する謎について研究している方だと聞いたのですが」


「うんうん。僕はそれを不可逆因子と呼んでいるんだけど」


「何に対しての不可逆なんですか?」


「うーん……そうだねぇ、まずはステータスについて語ろうか」


「まずステータスはカードに書かれているとおり、六つある。何かは分かる?」


「レベルとHPとATKとDEFとAGIとLUK、ですよね」


「そうそう大正解。じゃあ一つずつ解説していくね?」



 部屋中の蝋燭に火を灯していく。



「HPはヒットポイント。体力の意味だね。どれくらい長生きできるか、と考えてもらえればいいね」


 指を一つ折る。


「次にATKはアタック。攻撃力だね。パンチが痛いかどうか、って感じに考えてほしい」


 二つ目を折る。


「そしてDEFはディフェンス。防御力。どれくらい打たれ強いかって感じ」


 三つ目を折る。


「そしてAGIはアジリティ。素早さ。移動速度だね」


 四つ目の指を折る。


「で、LUK。ラック。運。何に影響するかと問われれば難しいがあえて答えるならば全ての事象に影響を与えるステータス」


 五つ目の指を折る。


「そして最後。最重要だが一番意味がよく分からない、レベル。」


「意味が分からない?」


 指を折り畳んで話していたノイマーに、そう問いかける。


「レベルというステータスは他のステータスの値を上げるものであり、それ以外には意味を持たず、その値そのものにも意味を持たない。不思議だよねぇ」


 ゲームだとレベル補正とかがあったりする。ステータスが高くてもレベル差が激しければ勝てない、という補正だ。


「これがステータスの話。そしてここからは僕の研究のお話」


 眼鏡を外し、目頭を揉みながらこちらを指さしてくる。


「君のようにステータスが下がる人たちがいる。なぜそのようなことが起こるのか。どうやったら止められるのか。」


 眼鏡をかける。目に力が宿っている。


「そういった人達がステータスが下がるタイミングは、総じて気がついたら、なんだよ。何か原因があったわけでなく、自然に、ごく自然に、だ。そう聞くと経年劣化。年を取ったが故に起こるものだと思うだろう? だがしかし減らない人達もいる。その違いが何かあるわけではないんだよ。だから、一つ仮説を立てた。」


 指を一本立て、静かに、のポーズをとる。


「この世界には隠れステータス、そいうのが存在するのではないか、とね」


 隠れステータス。隠しパラメーターの名前の方が有名だろうか。目には見えない、表示のされない、特別なパラメーター。ゲームの種類によってはだが、魅力値などのことを指したりする。


「隠れステータス?」


「学力、器用さ、魅力、等のね」


 魅力という隠しパラメーターがあるかもしれないのか。俄然テンションが上がってきた。ハーレムも夢ではないかも……?


 彼の方を見ると、胸ポケットからカードを取り出していた。


「このカードは魔道師が作ってくれている。カードを手にする人物のステータスを刻む魔法をかけている。だがそれでは表せないステータスがあるのでは? ということさ」


「さぁ、ここで問題。僕のカードに書かれている適正職業はなんでしょうか?」


 難問過ぎるだろ……


「学者、じゃないんですか?」


「違う違う。正解は竜騎士。カッコいいでしょ?」


「竜騎士? 竜に乗って戦うんですか?」


「いやいやそこまで格好良くないんだけどね? 全知の最古竜である、バハムートの加護がある武器を持ち、国のため人のために戦う。それが竜騎士。そんな柄じゃないからね。やめちゃった」


「やめちゃったって……」


「怖いからねぇ。でね? 僕には幼なじみの男の子がいたのさ。ステータスはほとんど同じ。でも彼は酒場の受付係が最適職でそのまま受付係になっちゃった」


「受付係になってほしくなかったんですか?」


「いや? なんでステータスがほとんど同じなのに竜騎士と受付になったのか。なぜこんなに差が出たのか。考えた結果、才能では言い表せない個人の差を見つけたんだ。それが隠れステータスだと思われる、ってなわけさ。」


 同じ勉強量で差が出るのは学力の差。細やかな作業のクオリティも器用さで変わる。なぜか人を惹きつける人は魅力の値が高い。そういう"特別"な人達がいる。らしい。


「それがどうして不可逆因子に?」


「簡単な話だよ。この世は全て生まれてから死ぬ。その流れだ。ステータスが下がり、見えない何らかのステータスになっているというのは、もうルールを超えた成長と呼べるのではないか? 絶対と言われているカードに書かれないが確実に自分の力になっている。素晴らしいことじゃないか。」


「ステータスが下がり、見えない何らかの力となる。それがこの世界の正しい流れに沿っている、と。故に俺たちがこの世界の流れを作っている? 傲慢すぎでは?」


 彼の話をまとめ、疑問を提示する。


「そうかい? 君達が世界の流れを作っている。正しいのでは? 一人じゃ変わらないのか? 二人では? 百人では? 全人類では? どうだい?」


 何も言えない。人数に線引きをしてしまえばそれは俺の基準になる。俺の基準で話を進めるのであれば、ノイマーの基準でも話を進められる。彼が一人でも世界を変えられると言うのであれば肯定しなくてはならなくなる。


「だから君たちが世界の流れを作っている。君達が不可逆因子なんだよ。」


 話としては分かった。だがまだ聞いていないことがある。


「なるほど。それで? 俺の隠れステータスは?」


「それは分からない。器用さ、学力、魅力以外に私は見つけられていない。」


 マジか。役立たずでは?


「ステータスが下がってから変わったなと思うことは?」


「いや、特には」


「学力も魅力も上がれば、すぐ分かるくらい違うものさ。あとあるとしたら器用さだね」


「器用さ、か。工芸品でも作るか」


「最大都市である中央街、エルメロッジが僕のおすすめだね。あそこにいけば何でもある。もしかしたら隠れステータスが僕が知っているもの以外にも見つかるかもしれない」


 なるほど。また移動することになるか。まぁだがもう少しここにいて資金を貯めよう。移動費だ。


「そういえばまだ君のステータスを見せてもらってなかったね。見てもいいかい?」


「あぁ、はい」


 カードを渡す。


「なんだこのステータスはっ!?」





 懐かしいなこの感じ

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