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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
第二章 魔法の存在
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不可逆因子と変態学者

十三話目

 鍛冶の街ではいろんな声が聞こえてくる。


「火ィ足りねェぞォ!!」

「鉄持ってこいっつったろォ!?」

「まだまだ打ち足りねェ!」

「んなボロっちィの使わずウチで作ってけよ!」

「いらさいいらさい! 他とは出来がちげェよォ!」

「まァた折ったのかァァォオン!?」

「負けだァ! 持ってきな!」


 熱い。熱いぜ。オルトゥ。


 ガウルの工房は道の中間にあるのだそうだ。ちなみに宿屋も酒場も奥にある。宿屋や酒場まで行く道で客引きをするという商人魂である。真ん中の大通りの両脇の工房は有名だったり、腕が確かだったり。端に行けば行くほど、悪徳で品が悪いそうだ。一部を除いてだが。


 ガウルの工房は、中間の大通りからほんの少しだけ離れた場所にあった。一人で切り盛りをしているので、少し値段が高くなり、大通りには店を構えられないんだと。世知辛い。


 ガウルが、最果ての街から持ってきた素材を工房の中にしまうと、俺とルルが泊まる宿まで案内してくれた。


 俺は剣を引っさげているので何度も客引きをされたが、ガウルが丁寧に断わってくれた。大通りの片側だけで、店数が50はありそうな長い道を登って行くと、大きな宿屋に辿り着いた。


 ルルもお金が無いらしいのでガウルにお金を借りた。一部屋しか取らなかったのは低コスト化だ。必然だ。邪な気持ちなんてどこにもありやしない。


 風呂付きの部屋を取ってくれた。部屋でガウルも含めて、今後の話をした。


 ガウルは明日からしばらくは、朝から晩まで工房に行くらしい。


 ルルは、夜から朝まではこの宿で。昼間は酒場でクエスト同行者を集って敵を狩りに行くらしい。


 俺は明日、学者と話をし、それから今後を決めるつもりだと話した。


 明日、ルルが上手くいかなければ、宿代はもう少しガウルに払ってもらうことになりそうだ。


 お互いの予定も聞いたところで会議はお開き。ガウルは工房へ戻って行った。ルルと同じ部屋なので先にお風呂に入ってもらい、その後俺も風呂に入った。


 女子と同じ部屋というだけで緊張していたが、いざ寝るとなると大きな問題があった。ベットはシングル。人は二人。与えられた選択肢は床か椅子かだ。ベットを選ぼうものなら晒し首に


「じゃあ、一緒に寝ましょうか」


「ぇへ? あぁ。え? お、おう」


 首を晒さなくて良い代わりに、諦めてはいけない我慢大会が始まった。


 ルルの話を聞いた。伝説では魔道士というのはヒューマンの一種なのだそうだ。ある学者が魔法という存在に気が付き、研究の末魔道士になったのだとか。


 魔道士には位が存在し、ルルは普通の位の家庭で生まれ、ごく普通に育てられたのだそう。しかし、子供の頃にモンスターに殺された事がトラウマとなり、実践では何も出来なくなってしまった。でも勉強では、と頑張ったそうだ、と少し悲しそうに話した。


 幼少期に殺される経験をするとか。引きこもりまっしぐらだろ。


 でも今は楽しいです! と笑顔で言ってきた。可愛い子だ。いい匂いがする。普段は帽子に隠れているが、髪が長い。風呂上がりで下ろしている。綺麗な黒髪だ。サラサラしている。


 思考が変な方向に向かった頃。


「もう遅いですしね。寝ましょうか」


「そ、そうだね」


 顔を向かい合わせたまま、ルルは寝息を立て始めた。まだ終わりじゃないです! ここから俺が寝るまでが我慢大会です! 遠足理論です!


 意識して違うことを考える。学者に会ったらどんな話をするか。どこまで話すか。何から話すか。まとまらずにゆっくりと思考が溶けてゆく。ルルの寝顔を見ながらその思考を手放す。




 またあの声が聞こえる。優しく、強く、温かい声。


「知る時は近い。もうすぐ……」


 何がもうすぐなのか。頭が働かない。声が遠くなってゆく。




「……まーす。……ざいまーす。おはようございまーす」


 ルルが上からのぞき込みながら起こしてくれていた。


「おはよう、ルル」


「はい。おはようございます」


「ルルは早起きだね」


「そんなことないですよ。それより、朝食が下の食堂で貰えるらしいです。行きましょう」


 着替えて食堂に降りる。今日の朝食は、ハムエッグだ。前も食べたな。いや美味しいけどね?


「それじゃ、私はクエストに行ってきます。学者さんのところへ向かうんでしたよね? お気をつけて」


 ルルは優しい。前世は女神か天使だろう。まぁ生き返るからそういうの無いのかもだけど。


 さて、向かうかね。


 ガウルに教えて貰った道を進む。大通りから外れてゆく。喧騒が遠くに聞こえるようになってきた時、目的地を見つけた。


 一言で表すなら洋館。青と白を基調とした、なかなか大きな屋敷だ。


 ドアをノックする。返事はない。


 ゆっくりとドアを開ける。


 ドアから光が入り、奥で作業していた人がこちらを振り返る。





「やぁ初めまして。僕はノイマー。話はガウルから聞いてるよ。君がワトソン君だね?」





 お生憎様人違いです。

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