初めての街移動
ちょっと長めの十一話
神官のたゆんたゆんなブツを見ながら考えていた。
ステータスが0っていうことは、全く値として存在しないという事。
もし攻撃力も0になれば、戦闘開始とともに俺の攻撃は何も傷つけられなくなる訳だ。
もし防御力も0になれば、戦闘開始になると蟻に噛み付かれただけで死ぬわけだ。
もし素早さも0になれば、戦闘開始から動けなくなる訳だ。
もし体力が0になったら…? どうなる? どんな攻撃を貰っても死ぬのか? 体力も防御力も0になれば風で死ぬんじゃないか、俺?
神官が怪訝な目でこちらを見ている。その果実は精神安定剤だからね、仕方ないね。お許し下さい神よ。神がいるなら救って欲しいけどね。
あれからはルルもスライム討伐をやめたのか、カードに書かれているレベルは上がっていなかった。パーティーの基準は戦闘と同じようで、パーティーだ、とお互いに思っていればパーティー扱いになる仕組みになっている、と思う。ガウルから聞いた話をまとめるとそんな感じだ。
「あのー……」
目線をあげると神官がこちらを見ていた。
「大丈夫ですか? お体のどこか悪いのですか?」
「いえいえ、少し……あはは……」
すごい心配してますって目で見てくる。めっちゃ申し訳ない。
ついでだが、神官なんだし、神について教えてもらおう。
「この世界に神は存在するのですか?」
「はい。神は常に我らを見ていて下さり、罪を告白したならばお許しいただけるでしょう」
「私は今に絶望しています。神はお救い下さらないのでしょうか?」
「今はまだその時ではないということです。必ずや、あなたにも」
そういうもんかねぇ。まぁそう思うと気が楽ではあるな。よし。
「おぉ、それは本当ですか!ですが神官様。私は今に対し大きく絶望しているのです。いつか、では駄目なのです。もし可能であれば神官様にお救いいただけないでしょうか?」
「そうでしたか。勿論ですとも。神のために、そしてあなたのために。全ては神の御心のままに」
「であれば神官様のその大きくぷるんぷるんに実った二つの果実の感触を」
教会を追い出された。
ルルが教会の前で待っていてくれたので、少しだけ話をした。ルルはスライムを討伐できたことを喜んでいるが、他の魔物を狩りたいのだそうだ。しかし、この街の魔物では限界があるので、もう少し手頃な街に向かうと言っていた。
☆☆☆☆☆☆
教会前でルルとお別れをして宿屋に向かってゆっくり歩いていた。その道中ガウルに出会った。今日は用事がどうとか言っていたが、終わったのだろうか?
「おーい! ガウルー!」
「おぉ! どうだった? 成果は?」
「レベルが二つも上がったよ」
「本当か! めでたい事じゃはないか! よし! 今日は宴だ!」
喜んでくれている。優しいなぁ。
「いや待った。問題がある」
「と言うと?」
「ステータスが下がった。なんならLUKは0になった」
「ゼロォ!? そんなことがありうるのか?」
「やっぱりありえないよなぁ」
「LUKだけか?他には?」
「ATKとDEFも1ずつ減った」
「はぁあああ~~~」
「なんでガウルがそんなため息つくんだよ。俺の方が辛いんだからな?」
「うむ……いや……すまん」
「あー、いや、ごめん。言いすぎた」
ダメだ、ガウルに当たってどうする。にしてもまずいな。手詰まりだ。
「兄ちゃんの"それ"に詳しいやつを知ってるんだが、会ってみるか?」
「"それ"ってのは、ステータスが下がること?」
「そうだ。そいつは"それ"をこう呼んでいたな。不可逆因子、と」
☆☆☆☆☆☆
宿屋に着き、飯を食べ、布団に入りながらガウルから聞いた話を思い出していた。
明日の昼前、この最果ての街からガウルの住んでいた街へと移動する馬車があるらしい。それに乗って街移動をする。なんでもそこにステータスに詳しい学者がいるんだとか。
にしても不可逆因子ねぇ。不可逆、元には戻らない一方的な流れ。因子、ある物事の原因となるもの。
ステータスが下がる事が、元に戻ることの無い何かを生み出している? さっぱり分からん。
まぁ明日から馬車旅だ。今日はもう寝てしまおう。疑問と新たな街への好奇心がごちゃ混ぜになり、夢を引連れてくる。
☆☆☆☆☆☆
声がする。何故か涙が出そうなほど嬉しい気持ちになれる。そんな声。
「絶望をするな。君は……まだ……」
まだ……なんなんだ……ろ……
☆☆☆☆☆☆
「……か? ……ですか? 大丈夫ですか?」
昨日の可愛い声の人だ。
「おはようございます……大丈夫です……」
目を開けて気がつく。泣いていた。
「そうですか?」
「はい。少し懐かしい夢を見ていたもので」
「なら良いのですが……お着替えはここに置いておきますね。朝食は、昨日とおなじ食堂です。それでは」
そういや、着替えをくれる宿屋なんて高いんじゃないのか。ガウルには本当に頭が上がらない。
着替えを済ませ、食堂に向かうとガウルがいた。
「馬車の時間が少し早くなってな。朝飯食べたら出発するぞ」
昼前だと言っていたから、本当に少しだな。
大して荷物などもなかったし、親交の深い人達がいた訳でもないし、居たのも2、3日だが、この街の雰囲気は好きだった。また来る機会があれば是非来たい街だ。運転士の御者が人数確認を終え、出発する直前、荷物を抱えた女の子が走ってきた。ルルだ。
「あ、あの! 私も連れていってください!」
「あぁ! もちろんだ!」
ガウルが二つ返事で受け付けた。そういや向かう先を聞いていなかったな。
「ちなみに目的地は?」
「鍛冶の街、オルトゥだ!」




