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異世界でレベルアップしたら全ステータスが0になりました。  作者: シラクサ
求められるのは在り方
100/100

在りし日の情景

完結話

 出来たばかりの玉座の間にて。


「それではこれより、精霊収集会議を行います」


 優しそう男性が、にこやかに話し始める。


「その前に質問。いいか?」


 怖そうな雰囲気の体の大きな男性が手を上げる。


「はい」


「精霊ってのは何だ?」


「我々のこれからの総称です」


「あ?」


「世界が崩壊してから既に百年。心機一転の為と思って下さい」


「……」


 納得したのだろうか、男性は手を下げて黙り込む。


「まずは階級からです。皇帝、君主、大公爵、宰相、大将、司令官、中将、旅団長、少将。この九つに別れています」


 ……ほう。


「そして、皇帝、君主、大公爵は支配者として三柱。宰相から少将までは、その三柱に仕える六柱となっています」


 …………ほう?


「つまり、三人のトップ。その下に六人。そうお考え下さい」


 なるほど。


「ではまず皇帝の座に冠してなのですが」


 そこまで言うと、笑顔の男性は俺の方を向く。嫌な予感しかしない。


「僕は、彼が相応しいと思うのですが

、どうでしょうか?」


☆☆☆☆☆☆


 第二広場兼、書庫にて。


「力無き正義、正義無き力」


「パスカルの書ですか?」


 アガリアレプトが本を見たまま、俺に問いかけてくる。


「うん。正しいけど、無情だなって」


「哲学ですからね。情など無い学問です」


 最近部下の一言一言が冷たい件について。


「どっちも持てば、それ即ちジャスティス。正義こそジャスティスって感じでしょ」


 サタヌキアがアホな事を言い出した。


「アガリアレプト君。サタヌキア君が壊れちゃったんだけど」


「彼はいつも壊れているんで大丈夫です。正常が異常なので」


「二人とも酷くないかな?」


☆☆☆☆☆☆


 庭園にて。


「こらぁ!!!」


「いでぇ!」


「サルガタナス、フルレティを殴っちゃいけません」


 小さい子供に言い聞かせるように言う。


「で、ですが!」


「馬鹿力ザル」


「ぁあ?」


 フルレティが頭を抑えながら、サルガタナスに悪口を言う。


「フルレティも。サルガタナスにちょっかいかけないの」


「……あーい」


「すみませんでした……」


 シュンとする二人。歳が近いので波長が合うかと思えば……


 俺が頭を抱えた一瞬で、また喧嘩を始めている。


 前途多難のようだ。


☆☆☆☆☆☆


 第一広場にて。


「まだまだ負けんよ」


 アスタロトが剣を肩にトントンと当てて言う。


「まだまだ……!」


 ルキフグス……いや、ロフカレか。彼はまだ元気があるようだ。


 アスタロトの剣で叩かれた腹をさする。この世界で魔物が生まれたのは何故だろうか。誰かが望んだからなのだろうか。まぁ、そんな物好きはいないか。


「ぅぐぁっ!」


 ロフカレが吹き飛ばされ、俺の横に転がってくる。入れ替わるように駆け出す。狙うはアスタロトの足。今日は一本は取りたいものだ。


☆☆☆☆☆☆


「なぁナァ」


「……」


「なぁっテ」


「……なに」


「遊ぼうゼ!」


「……やだ」


 そう言ってネビロスはソファの後ろに隠れる。


「いいじゃんカ! 遊ボ!」


 ベルゼビュートはそれを追いかける。見てて完全に変質者だ。


「いぃいぃいぃやぁあぁああああ」


 ネビロスが珍しく大声を出して走り回る。微笑ましいものだ。


「助けてルシー!」


 ネビロスが俺に抱きついてくる。勢いの余り肺の空気が全て出ていく。


 いや、それよりもだ。


「る、ルシ?」


 ネビロスは俺の問いに顔を上げる。


「ルシファーだから、ルシ。いや?」


「い、いや、嫌とかじゃないけど」


「けどー?」


「……いや、嬉しいよ」


 そう言ってネビロスの頭を撫でる。


「んふー」


「良いじゃねぇカ! ルシ! ナァ!」


 ベルゼビュートも飛びついてくる。あまりの質量に、ソファが倒れてしまう。


「ベルゼビュート! おもい!」


「おォ? 名前呼んでくレタ!」


「おーもーいーのー!!」


 一番重いのは、一番下の俺なんですがね。なんて事も言えないくらい、肺が押しつぶされている。


☆☆☆☆☆☆


 日課のルキフグスとの練習試合。


「負けました……」


「ふぅ。ぎりぎりだった」


「ルシ様はやはりお強いですね」


「いやいや。ルキフグスも十二分に強かったよ」


「ありがとうございます」


 その返しに少し違和感を覚える。


「……ルキフグスって呼ばれても、もう大丈夫なの?」


「違和感がないわけではありません。しかし、二人を認めて下さっているようで、私は嬉しいのです」


「判別するのが面倒くさくて、つい一緒くたにしちゃったら?」


「ブチ切れますね」


 笑顔で言う。たぶん半殺しにされる。


「では、先に失礼します」


「うん」


 剣を仕舞い、体を伸ばしつつ、部屋を出る。


 廊下で、アストに出会う。


「お、終わったか?」


「うん。お昼だし、これから皆を呼びに行こうかと」


「じゃあ、一局付き合ってくれ」


 じゃあ、とは……?


 第二広場でレプトに出会い、昼食の準備を頼んだ。


 結局急ぎ、十分ほどで局面は終盤に差しかかる。


「これはまずったかもしれんなぁ」


「お? 待ったはなしですよ?」


「最後の最後で負けられはせんからな」


「最後くらい手向けに欲しいものですな」


「なんだそのしゃべり方は。いや、こうすれば」


「じゃあこっちで」


 8のDにルークを置く。後一手で決まりだ。


「…………さぁて、ルシ。そろそろ飯だと思うんだが?」


「おい待てよ! 後一手だろ!」


「さぁて何のことやら」


「もうちょっとだけさ! ね?」


「帰ってきたらな?」


 そう言って食事場に向かうアスト。


 ……帰ってきたら無くなってたりしないよな?


 アストは既に立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。まぁ、いい。帰ったらコテンパンにしてやる。


 ニヤニヤ考えていると、扉が開く。


「あれ、ルシ? なんでここに?」


 サタだった。


「アストとちょっとな」


「そっかそっか。あ、丁度よかった、これ手伝って欲しいな」


 扉の前には十冊の本。並べるのだろう。それくらいなら。


「ちゃっちゃと片付けて飯にしよう」


「うん」


 二人がかりで、時間もかかることなく終わる。


「じゃあご飯にしようか」


「そうだな。今日はもう疲れた」


 皆の相手で午前が潰れてしまった。たぶん午後もだろうなぁ……


「お疲れ様。明日はたぶんもっと大変だよ」


「想像したくねぇなぁ」


「大丈夫。皆いるから。ね?」


 そう言ってサタは先に部屋を出ようとする。その背中に向かって。


「……ありがとう」


「え?」


「いや、なんでもない」


「ツンデレみたいで気持ち悪いよ?」


「聞こえてたなら聞き返すなよ!」


 サタが笑う。俺もつられて笑う。この時間が続くように、俺は願おう。


「じゃあフルを呼んでくるよ。ルシはネビをお願い」


「おー」


 第一広場を抜け、玉座の間に入る。そしてネビの私室の前に歩いていく。


嬌声が響く部屋の前で。


「おいネビー。ご飯だぞー」


 声が止み、ドタドタ音がする。そして、すぐにネビが部屋から出てくる。


「待ったー?」


 ため息を吐き、ネビの頭を撫でる。


「ぅえー?」


「ほどほどにな」


「んふー。大丈夫ー」


 やけにツヤツヤした顔のネビが、満足そうに言う。まぁ大丈夫ならいいか。


「今日なんだろねー」


「なんだろなー」


 まぁ、幸せそうなので強くは言えない。色々話してくれるようにもなったし、ネビは皆が好きだし、皆もネビが大好きだ。


 ネビが笑っているだけで、その場が明るく和む。


 ネビの頭を撫でながら、笑いかける。ネビは一瞬首を捻り、そしてニコッと笑う。


 年相応の笑顔も、こうやって見せてくれる。ネビが幸せならそれでいいか。たぶん皆もそう言うだろうし。


「じゃーさきいってるねー」


 俺の曖昧な表情を見て、ネビは走り出し、玉座の間を出る。あんな少女に気を使われているようではいけないな。


「オオ。どこに行くんダ?」


 玉座の間を出たところでベルゼに出会う。


「そろそろ飯だよ」


「そうカ!」


「ベルゼって好き嫌いあるの?」


「旨ければ何でも好きダ!」


 そう言って笑うベルゼは、やはり子供らしかった。


 俺も釣られて笑い、そっか。と言った瞬間に扉が開く。


「おぉ! ルシ!」


 午前に、俺と何試合もしたとは思えないほど元気だ。


「あぁ、フルか。もうすぐ昼飯だぞ」


「今日は何だろうな!」


「何だろうね」


「肉だと良いなぁ」


 嬉しそうに上を見上げ、微笑むフル。ずいぶんと丸くなったものだ。


「食べ終わったらまたやろうな!」


「もういいよ……」


「いやいやまだ行けるって!」


 もう認めてくれたのだろうか。フルと話す内容に、日常会話が増えた気がする。


 胸に秘めた本心は分かりはしないが、それでも。表面だけでも、こうやって接してくれるのは嬉しいものだ。


「早く行こうぜ!」


 俺の返事を待たずにフルは走り出してしまう。子供を見ているような気分だ。


「元気だナァ」


「ベルゼも元気な方だと思うよ」


 そう言った次の瞬間、また扉が開く。今度はさっきよりも強めに。


「どこに向かいました!?」


 般若のような顔のサルガタナスが聞いてくる。


「え、食堂だと思うけど」


「分かりました! ありがとうございます!」


 聞くや否や食堂に向かって走り出す。


「本当にフルレティが好きなんだなぁ」


 独り言のつもりで。小さく吐き出したつもりだった。


 地獄耳なのだろう。サルガタナスは走る方向をこちらに変え、急いで戻ってくる。


「違いますから! そういうのではないですから!」


「嫌いなの?」


「いやっえっ。いや、そういうわけでは……」


「ははぁ〜ん?」


「ち、ちがっ」


「まぁいつでも相談に乗るからね」


「……ありがとうございます」


 頬を赤く染め、手をモジモジさせながら言う。しおらしいところもあるんだなぁ。


「どういう事ダ?」


「人には色んな悩みがあるって事だよ」


 納得したような、してないような。そんな表情のベルゼと一緒に食堂に向かう。


 既にサタは座っていた。昼飯が待ち遠しく、レプトの様子を見に行く。


 サラダやスープは既に出来上がっていて、メインを何にするか悩んでいるようだった。


「さて、今日は何にしましょうか」


「レプトー。今日は何にすんの?」


 厨房を覗き、中にいるレプトに話しかける。


「何が良いですか?」


「おいしいやつで頼むわ」


「困りましたね……」


「肉とか」


「……毎日お肉は体に悪いですよ?」


「大丈夫大丈夫」


「まぁ、私が毎日お肉にすることが無いんですがね」


 ボソッとレプトが何かを呟く。聞こえそうで聞こえなかった。何を言っていたんだろうか。


 食堂に戻り、皆と少し言葉を交わす内、肉の焼ける良い匂いがし始める。


「さて、出来ましたよ」


 大きな肉の丸焼き。美味しそうだ。


 皆で手分けし、料理を机に載せていく。そしてレプトも座り、皆がこちらを見る。


「では、合唱」


「「「「「「「「合唱」」」」」」」」


「「「「「「「「「頂きます!」」」」」」」」」

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