表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

甘いヨル

作者: 大崎楓

 真夜中にひとり 窓からこっそり家を出た

 街灯もない暗い世界を歩きだす

 生ぬるい風がロクに梳かしていない髪を撫でるのが心地よくて

 このままどこまでだって行けるような気がしていたんだ


 現実感の薄れた意識の片隅で それでも目的地は決まっていて

 部屋に置いて来た息苦しさを思い出して息を止めてみた


 辿り着いた明かりはとても輝いていて

 あの時のアタシは確かに何かに勝った気がしていたのだろう

 ゴミ箱の横で食べたアイスの甘さが全てを溶かしてみせた



 点滅を始めた信号機を駆け足で渡った時 空が白み始めたのを知った

 震える手の中でビニール袋がアタシを責め立てるように音を立てるから

 そこから逃げるようにイヤホンで耳を塞いで 現実に気付かないフリをして歩いた


 生ぬるい風はいつの間にかアタシの背中を追い越して朝を迎えに行く

 口の中に残ったチョコレートの甘さがどこへも行けない心を甘く絡めとる

 部屋に置いて来た心地いいぬるさを思い出して息を吸い込むしかないアタシを

 鍵の開いた窓だけが許した


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ