七話 勇者な彼女の宥め方
エルミナさんと対等でwinwinな契約を交わした俺は、現在怒りで我を失っているであろうちほの元へと向かっていく。
しかし、一体どうしたものか........
正直、ちほが怒ったときの対処方等俺も知らないのだ。
彼女は怒ってもそれをあとに残すような性格じゃないし、謝ってちほのお願いを聞いてできる限りそれに順守するのが常なのだ。
その上、ちほ自身もめったなことじゃ怒らないし、お願いされることも、今度どこどこのケーキを奢ってだの、休みの日に一緒に遊ぶといった他愛のないものしか言われたことがなかったのだ。
まぁ、いつも通り何とかなるだろう。
俺はいつも通りになることを想像しながら軽い気持ちで近づいていった。
「何の用かな、雪くん。私今、そこにいる子とOHANASIする必要があるから後にしてくれないかな? 」
初めて見るちほの気迫に少し後ずさりしてしまうも、努めて冷静をよそおいちほに話しかける。
ちほが指し示したときに震えあがっていた契約者の様子がいじめられて縮みこむ小動物に見えたのも原因の一つかもしれないが。
「なぁ、そこまでしなくてもいいんじゃないかな?エルミナさんも十分理解できているだろうし、な」
俺が問いかけるとエルミナさんは首がちぎれるかと思うくらいに何度も激しく頷く。
その様子を見て、これなら大丈夫だろうとちほの方に振り替えると、
「ふ~ん。雪くんはエルミナちゃんの味方なんだ。それに、もう名前を呼んでもいい仲なんでね」
ちほの言葉を聞いたエルミナははっとし表情になった後、なぜかやってしまったというように頭に手をやり俯いてしまう。
そのことに不思議に思い、俺はちほに聞くことにした。
「なぁ、こっちでは名前を読んじゃいけないっていうルールでもあるのか? 」
「うん?あぁ、もう気づいたんだね。そうだよ。まぁ正確には神様とか一部の人達がだけどね」
ちほの言葉になるほどと思いながら、俺はすぐさまいまだ俯いて入るエルミナさんに頭を下げた。
「知らないこととはいえ、名前で呼んでしまい申し訳ありませんでした。以降はもう呼びませんので、許してとは言いませんがどうか死なない程度でお願いします」
「お主の気持ちはわかったのじゃ。しかし、そのことについてはもうよい。以後も儂のことはエルミナと呼ぶがよい。もちろん、罰など与えるつもりはないので安心してもよい。これは儂にも原因があるのでな」
エルミナさんの言葉にまた訳が分からなくなり頭をかしげてしまう。
俺が悩んでいるのにっ気づいたらしいちほはそんな俺にさっきの意味を教えてくれた。
「彼女たちが呼ばれてなにもしないっていうのはね、彼女たちがそれを受け入れたっていうことなの。これは話の途中で言っても同じことなのよ。彼女たちにはね自分の名前を面と向かって言われるとね許していない相手だとなんか電波?みたいな物を感じるんだって。だから。言われても気づかなかってことは言われるのを許してるってことを意味しているのよ。だから、もう意味がないっていうのはね。最初に呼ばれるのを容認した時点でエルミナちゃんが雪くんを呼ぶのを認めたってことには意味はないから。もう何回読んだところでいいってことなのよ? 」
「つまり、一度呼ばれるのを認めた時点で俺とエルミナさんの中は保証されたってことか」
「ま、そういうことになるわね」
「も、もうやめて欲しいのじゃ」
結論が出た時点で、顔を羞恥で真っ赤にして、さらに涙目プラス上目使いの状態でこちらを見つめてくるエルミナの姿に罪悪感が半端じゃなく積もっていき、その視線に耐えられなくなり、すぐさま彼女に謝り視線を外す。
ちほがエルミナさんを慰めている声が聞こえるから、ちほ自身はもう怒っていないのだろう。
俺にちほ宥める依頼をしたエルミナが今はちほに慰められている。
先程とは全く反対の状態になっている今に、もう大丈夫だろうと思い二人の会話が終わるのを待つことにする。
「もうそろそろ、いいかな? 」
「うぉ!!」
急に真後ろから声がかかり振り返るとそこには聖神様がいた。
エルミナさんが艶やか銀髪ならば彼女は絡まった毛が絶対にないと他人の自分でも自信をもって言えるほどの滑らかなブロンドヘアーに今日の空の様に澄んだ碧色の瞳と草原の草木のような翠色のオッドアイの長身の女性だった。
もちろん、胸部も他のパーツと同じく正反対で絶p......ゲフンゲフン、慎ましやかなっていた。
まさに、エルミナさんが全ての栄養を胸に、聖神様は栄養を全て身長に捧げたいい例といえるだろう。
又、雰囲気も真逆で明るいエルミナさんに変わりこちらはけだるげでぱっちり開いていればさぞきれいだろうと思える眼も眠そうに半分閉じているようだった。
「え、え~と」
「私は聖神と呼んで。まだ、貴方のことを信用するわけにはいかないから」
「わ、わかりました」
それもそうか、エルミナさんんが異常だっただけで、普通の対応は聖神様のようなものなのだろう。
俺も、そんなルールがあるのに、出会ってすぐの人に名前を教えてほしいと言われても言うわけないもんな......
「そ、それで、そろそろとは? 」
「こんな、人の多いところで芝居みたいなことをしてたから.......」
「し、芝居ですか.......」
俺とエルミナさんの努力はリアルなのに芝居にしか見えない程うさん臭かったみたいだ。
まぁ、そんなことはともかく俺はまた忘れてしまっていた周りの人たちを見てみるも、そこにはすでにほとんどの人はいなくなっており残っているのは数人だけとなっていた。
そのことで、疑問に思っていると聖神様が答えてくれた。
「エルミナが暴走しだしたから、結界を張って周りから見えなくして、もう終わりって言って帰ってもらった」
「は、はぁ」
まぁ確かに、あんな様子の神様を見せるわけにはいかないもんな.......
「それで、俺はこれからどこに向かったいいんですかね?たぶんちほってかなり上の存在ですよね。そんなちほとの関係を周りを見られたわけですし、そのままってわけには行きませんよね」
「それについては、千穂の今いる国の王様から一緒に連れいくように言ってたよ。多分、彼女との橋渡しとして貴方を使いたいんじゃないかな?あの国が千穂をい勇者として召喚したんだし今さら千穂に国を出られたら信用問題になっちゃうから...... 」
「な、なるほど......」
ちょっと直球過ぎませんかね。もうちょっとオブラートに包むとかできなかったですか聖神様!!
後、ちほお前勇者だったのかよ。すげぇな、おい。
ま、ともかく向こうもそろそろ終わりそうだしこのことをちほに伝えに行くことにしますかね。