三話 プロローグその3
あの公園でちほと会ってから、5年の歳月が流れた。
あれから、ちほとは違う小学校であること、俺の方が一つ年上なこともわかりそのことで散々ちほにからかわれたり、ちほを男だと思っていたと知った後、しばらく口をきいてもらえなかったりといろいろなことがあった。
その後、ちほとは二人の都合が合う日に日時を決めてあの公園を待ち合わせ場所に何度も遊んだ。
中学に入ってからは、小学生と遊ぶのは世間体が悪そうだと少しの間、止めたりしていたのだが、次の年に入ってきたちほにそのことを二年の教室に直接殴り込みに来られて大声で話されてしまった。
その結果、俺の一年間の努力も虚しく崩れてしまった。
まぁ、友達と呼べる人は一年間努力してみてもついぞできなかったのであんまり変わっていなかったりもするのだが......
それはともかくとして、こうして再びちほと遊ぶことになった。
中学に入ってから俺がオタクに目覚めたとしるやいなや、ちほもそれにならいオタクと聞くと引いてしまう人もいる中何も言わずただ楽しそうに俺の趣味にも付き合ってくれた。
ただ、同じ中学になったとはいえ、ちほの方は運動系の部活に入部したため遊ぶ回数なんぞ少なくなってしまったが、それでも、ちほと一緒に過ごす時はすごく楽しく漫画とかのセリフであり会おうな感じで言うと、世界が色めきだしたように思ったものだ。
そうして、馬鹿なことを二人でやりながら三年近い月日が経った。
俺は辛くも第一志望であった高校に入学し、順風満帆ではないがボッチなりの学校生活を送っていた。
ただ、前に起きたことに反省をして高校に入学してもちほとの交流は続けた。
それを見られた時にリア充死ねと言われたときは何とも言えない気持ちなってしまった。
今は二月の終盤。
ちほ達中学三年生の者たちにとっては一種の戦場のような時期である。
ちほは、高校も俺と同じにするらしく此処を受験すると自分の高校を指差されたときは年甲斐もなくはしゃいでしまいそうになった。
それから、俺はちほにマンツーマンで勉強を教えていった。
ちほは、昔から物覚えがよかったため、すぐに俺を追い抜いてしまった。
その時に少々口喧嘩をしてしまったのはご愛嬌という奴だろう。
まぁ、そんな訳でちほの合否に関しては全く心配していないのだがいかんせんこの受験シーズンの雰囲気である。
あの雰囲気はもう慣れることなどできぬのではないかと二回目のそれも間接的に浴びるのであっても、緊張してしまったときに思ったのだった。
それから、一か月経ち、ちほの部屋で一緒にちほの合格通知を確認した。
結果は予想通りの合格だった。
ただ、それでも合格の文字を見た瞬間二人で大声を上げ喜びを分かち合いハイタッチをして去年の俺の合格発表以上の盛り上がりを見せた。
それから、さらに一か月が過ぎ四月になった。
桜は満開とまではいかないものの蕾が開きかけているのが散在していた。
俺はちほの入学を祝うために入学式の手伝いとして学校に来ていた。
高校の制服でこちらに笑顔で手を振るちほを想像しながら、俺はその日ちほを待った。
しかし、ちほはその日入学式には出席せず、春の訪れで冬と一緒に消え去るように、学校に行くと言い向かったまま姿を消したのだった。