武器屋に思い出あり 前編
何度編集しても説明が足りなかったり矛盾しかけていたりで、違和感が拭えないので、諦めて無理やり突っ切り、完結させる事を優先させることにしました。
モンスターについては他の作者様の設定を許可を貰って使用しています。
作品名や作者名については、モンスター図鑑(仮)をご覧ください。
目が覚めたので起き上がり外を確認すると、既に日はそれなりに高い位置まで昇っていた。どうやら学園に通い始めて二日目で、いきなり遅刻してしまっ始めた。らしい。少し朝寝坊してしまったな~という認識しかないレグルはのんびりと朝ご飯を食べた後、寄り道をしてから学園に向かう。
(どうせ遅れるんだから一時間も二時間もたいして変わらないよな。だったらゲンさんに武器の修理を頼んでから学園に行こう)
第5区の居住区から少し離れた第6区、職人区の中でも奥の方、外壁に近い場所まで行くと悪臭、騒音などで溢れている。武器作りなど、金属加工は大体この辺りが多い。
大通りに並ぶ幾つもの工房には目もくれず細い横道を通り、大きな工場に挟まれて建っている古い工房の内に声をかける。
「ゲンさん、エインさんいるかー!!いつもの頼みに来たぞー!!」
入り口に立っているだけで内から凄い熱気を浴びせられる。最近魔法陣の開発が進み新しい工房などには必ず冷却魔法陣が付けられているが、ここみたいな古い工房には冷却魔法陣は付いてない。なので入り口には扉が無く熱気を外へと逃がしている。
奥から炭に汚れた作業着をまとい、汗だくになったエインさんが迎えに出て来た。エインさんは虎族の大男で、その凶暴そうな見た目に反して、細かい気配りをする優しい人だ。獣人が人の姿に獣耳や尻尾が付いているだけに対し、虎族などの獣族の姿はまさに人型の獣のようなので、外で会うとモンスターと勘違いしやすい種族である。更に、ウェアウルフやキャットマンなどの亜人系と呼ばれるモンスター達は獣族と殆ど見分けがつかないので、勘違いから戦闘に陥りやすい。
「親方~!!レグルが来てるぜー!!」
「分かっとるわ~!!ぼさっとしてないでとっとと入って来いやー!!」
エインさんが大声を張り上げると奥から怒鳴り声が返って来た。
鍛冶場は外の何倍も暑かった。入って来てからまだ十数秒しか経っていないが、もう汗が出てきて止まらない。向こうの方では、二人ほどの弟子達が作業をしている。エインさんもすぐに作業を手伝いに戻ってしまった。
「久し振りだなマセガキ、またぶっ壊したのか~?」
この“竜の牙”工房の親方であるゲンさんはドワーフとしては背の高い方だ。レグルと殆ど身長も変わらない。武器を受け取り、傷などの確認を始めた。
「最近レベルの高い依頼をこなしたからな」
「ケッ お前の武器の管理がなってねぇ~だけだろ」
レグルとゲンはフレイムエッグ結成前からの付き合いである。
当時、5歳だったレグルは国内4位、街で3番目に大きいチームだった“メイカール”に所属していた。そのチームは平民しか居ないチームだったが、身分差などの違いをレグルは気にしない性格だったし、向こうもレグルの事を王族とは知らず相手にしていたので仲良くやっていた。
たまにやる街の外に出てのギルド依頼では同年代の子を集めたメンバーで1番簡単な捕獲や採取クエストを受けていた。
ある日捕獲依頼の出ていた森ネズミが大量発生した。アロマラットは近くの森に住んでいる体長10センチ程の緑の毛をはやしたネズミで、体臭が森の木々と同じ為芳香剤代わりにペットにする者も多い人気の獣だ。毛の色が緑なのは草むら等の地面上で行動する事が多い為、保護色になっているからで、体臭も森の木々と同じ為、嗅覚の発達した他のモンスター達にも見つかりにくい。
普段は余り捕まえられないそれなりに稼げるモンスターの話を聞いたメンバーは、年上二名がたまたまこれなくなってしまったのをいいことに、少々危険な森にまで足を運んだ。クエストじたいは簡単なので何の問題も起きなかったが、余りの大量に時間を忘れて捕獲しまくり辺りはすっかり暗くなってしまった。
暗くなり、夜のモンスター達が活動を始める時間になると、普段は安全なエリアも危険が数倍に跳ね上がる。森に居続ければラピッドオウルと呼ばれる体長1メートル程の黒フクロウに見付かる可能性がある。夜行性で全身を黒い羽毛で覆われている上に爪まで黒い。飛行速度も速いので、夜では姿を捉える事が非常に困難で、大抵の者を気づかれる事無く鋭い爪で引き裂き確実に仕留める優れたハンターである。子供達だけではひとたまりも無いだろう。かと言って、街まで戻る為には草原を突っ切らないといけない。すると今度は草原をうろつくグリルーという灰色の毛並みの狼型モンスターから逃げないといけない。普段から一匹から数匹で動き回っていて、モンスターとしては弱いのだがそれでも子供の勝てる相手では無い。
モンスターの危険域に挟まれて森の入り口で身動きの取れなくなってしまったレグル達は、ギルドから依頼されて探しに来てくれた1人の冒険者に助けられた。無事に街に帰ることが出来た皆は冒険者の事を憧れの目で見ていたが、ただ1人レグルだけは彼では無く、彼の持っていた一振りの剣に、その輝きに魅了されていた。
その冒険者は数日後にまた旅に出てしまい二度と会うことは無かったが、その数ヶ月後の宝瓶祭の露店で俺はまたあの時のように、魅了するような不思議な輝きを放つ武器と運命の出会いを果たす事となる。