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我がまま王子の気ままなスローライフ  作者: 月雪 銀狼
第1章 避けられぬ運命(さだめ)
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街の人気者

 人々の明るい声で賑わう大通りを派手な仮面で顔の半分以上を隠した一人の若者が歩いていた。


「あ、レーイさんだ!」

「レーイさんおはよう」

「やっほー、レーイ」


 目立つ格好をしているレーイに気づいた街の人達が次々と声を掛けていく。

 片手を上げて応えるレーイに露店で果物を売っていた店主が商品の一つを放り投げる。


「今日は新鮮なリンガが手に入ったんだ、勿論買ってくよなぁ!」

「そうだな、もう一個売ってくれ」


 気心の知れた店主が行ういつも通りの強引な押し売りに苦笑しながらも手持ちの硬貨を渡してリンガをもう一つ買う。

 軽い値段交渉を済ませて質の良いリンガを売ってもらうと、レーイはリンガをかじりながらすぐ近くの裏路地へと入っていく。

 リンガは赤い見た目をした握り拳程の大きさの果実で実は白色をしている。熟していると甘く瑞々しい味わいだ。レーイのいる大陸では各地で大量に作られていてその分値段が安い。



 しばらく考え事をしながら歩いていたらどこかで道を間違えたらしく、いつの間にか見覚えのない裏路地に迷い込んでいた。辺りは薄暗く、空気はじめじめしている。ゴミが散乱していてとても汚い。


(不快だな。さて、どうやって元の道に戻ろうか?)


 ここが何処か分からない以上どっちに進めばいいのかと迷っていると、遠くの方で突然悲鳴があがるのを聞いた。なんとなくそちらに向かってふらふらと足を進める。

 レーイが声のした方に歩いていくと同い年ぐらいの少女が3人の男たちに囲まれている現場に出くわした。面倒事の気配を感じとりさっさと立ち去ろうとするが向こうもこちらに気付いた。


「た、助けて下さい!! 」

「あん、てめぇ~どこみてんだよ」

「ガキは邪魔だからひっこんでろや」


 少女の手を掴んでいる男以外の2人が近寄りながら脅してきたが、そいつらを視界に入れようともせずにレーイは鼻で笑ってやった。


(助ける?馬鹿馬鹿しい、そういうのは俺ではなく衛兵や勇者の仕事だ。俺に頼んじゃねーよ)


 初めて会った知らない人を見返りもなく助けてやる程お人好しではないので、あっさりとその少女を見捨ててそのまま通り過ぎようとした。が、男共がキレて襲いかかって来た。


「何笑ってんだくそガキ~」

「調子乗ってんじゃねぇ、ぶっ殺すぞ!! 」

(やれやれ、これだから実力の差を理解出来ない馬鹿は嫌なんだ)

「はぁ~めんどくさ」


 魔法を使うどころか右手をポケットにしまい片手だけで相手をする。

 戦いの結果? 言うまでもない。5秒で全滅させた。

 出かけるたびに似たような事が起こる為、すっかり慣れてしまい今では準備体操の代わりぐらいにしかならない。たまにならいいのかも知れないが、さすがに毎回は嫌になる。


(いっしょにイタズラして遊ぶ仲間やつらを集めに来ただけなのに)

 主人公にとってヒロインイベントは回避出来ないといった所か..............毎日は多い気がするが。

 諦めと共にもう一度ため息を吐いたレーイは、いつも仲間達で集まる基地アジトにさっさと行こうと思い再び歩き出した。すると、さっきまで男たちに囲まれていた少女が声をかけてきた。だがしかし、レーイは少女に返事するどころか反応すらしない。

 なぜならば今までの経験からもし相手にして構えば、ほぼ確実に新しい揉め事に巻き込まれると学んでいるからだ。

 しかし、それでもまだ少女は諦めずに話しかけてくる。


「私の名前はリリアです」

「あなたの名前を教えてください」

「今どこに向かっているんですか?」

「・・・あの~、私の声聞こえてますか」


自分の周りをうろちょろされるのも目障りだったが、一方的に話しかけている彼女と話しかけられている自分をすれ違う人たちが皆、変な人を見る目をするので正直恥ずかしいとレーイは思った。

 5分以上はずっと1人で話題を探しては話しかけてきたが、無視し続けたら流石に最終的には涙目になって後からとぼとぼついてくるだけになった。


(何故、俺の服の裾を掴む?)


 だいたいこのぐらい相手にしないとほとんどの奴が諦めて去っていってくれるが、今回の少女はいまだに立ち去ろうとする気配が無い。いつもよりもしぶといが、それでもしばらくすればいい加減諦めて帰るだろうと思い放っておく。

 ところが目的地につく寸前になってもまだついてくる。


(何故諦めない!? )


 堪えきれなくなり、ついに質問してしまう。


「いつまでついてくる気だ?」

「やっと話し掛けてくれた~」


 少女リリアは一気いっきに明るくなった。


(しまった、つい・・・・・・)


 後悔しても時は戻らない、次はどんな厄介事に巻き込まれるのかと肩を落としつつ、しょうがないので自己紹介だけ簡単にする。


「チームフレイムエッグのリーダーをやっているレーイだ」

「クリムゾン家の娘、リリア・クリムゾンです。宜しくお願いします」

「・・・・・・何を宜しくだって?」

「え??」

「・・・・・・あぁ、ただの挨拶か」


 揉め事を警戒し、これから起こるかもしれない事に戦々恐々としているため、言動が少し不自然になっている。

 その後基地アジトにつくまでずっと彼女はニコニコとレグルについてきた......。

 二回ほどあったハプニングは気にしない事にする。


(・・・白・・・・・・。)

 気にしないったら、気にしない。

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