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トウマゲキ  作者: 風紙文
16/17

15話

放たれた弾丸は硬まったマフラーにぶつかり、カキンと音を立てる……のはもう少し前の話。

今は弾丸が当たった瞬間、硬めたマフラーは本来の軟らかさを取り戻し真っ直ぐに進む弾丸はそのままソフトチョーカーへと向かおうとマフラーをくの字に曲げる。

「う〜ん? どうしてそんなことになるんでしょうかぁ?」

本来起こらない変化にソフトチョーカーは首を傾けながら盾にしていたマフラーを眺める。

「……」

朝雛は薬の効果を改めて実感し、これなら勝機があると感じた。

ただ、一つの問題もある。

……薬の効果は、何時までだったっけ。

以前使ったときは効力が切れる前に通り魔を倒し、気が付いたら効果が終わっていた。

別に連続して服用してはいけないという説明は無かった……筈。

だがどちらにせよ、この一回の間で決める。

いつ薬の効果が切れるか分からないなら……

「……素早く、決める」

改造モデルガンというリーチの有利を持つ朝雛は、ソフトチョーカーへと接近した。

銃口をソフトチョーカーへ向け、一発。

放たれた弾丸を硬めたマフラーで防ぐと薬の効果でマフラーが元の軟らかさを戻し。

その隙に朝雛は足払いをかけた。

「あらぁ?」

急に体勢を崩されたというのに変わらない調子で前へと倒れ込むソフトチョーカーに、朝雛は銃口を突きつけて引き金を引く。

「ムダですよぉ」

だがソフトチョーカーは倒れず、弾丸も当たらなかった。

左手に持っていたマフラーを硬めて地面に突き立てて杖代わりに。右手は帽子を掴み弾丸を叩き落とした。

「……まだ、終わらない」

ソフトチョーカーが帽子を掴んだ辺り時にはもう、朝雛は動いていた。

……一回で倒れないなら、何回でもやってやる。

杖と片足でバランスを取っているソフトチョーカーの、もう片方の足目掛け。これなら必ず、隙を作れる! その気持ちを込めて渾身の力を込めて横に振り払う。


しかし、



ガッ……!


「っつ……!?」

「うふふふふふ~。ざ、ん、ね、ん、でしたぁ」

ぶつかった瞬間、強烈な衝撃と痛みが朝雛を襲った。

先ほど足払いをした時はなかった衝撃。その理由はすぐに分かった。

この、とても硬いものが当たったような衝撃は……

「……まさか、靴の…」

「その通りでぇす。靴下も手作りなんですよぉ」

つまり病の力で硬めた靴下を、鉄と変わり無い物質を蹴ってしまったのだ。

「動きを封じようとしてぇ、逆に動きを封じられちゃいましたねぇ?」

激痛でその場にしゃがみ込んでしまった朝雛を、ソフトチョーカーはあざ笑うように見て言った。

「……っ!」

そのソフトチョーカーに改造モデルガンの銃口を向けるが、

「そぉ~れぇ」

硬めた帽子を振るって朝雛の手からはたき落とされてしまった。

「そろそろぉ、終わりにしましょうかぁ」

帽子を振りかぶる。今は柔らかい鈍器で狙うは下でしゃがむ朝雛の頭。


連続なんて可愛そうだから、一発で終わらせられる場所に。力いっぱい。


あれ? でもコレ、通り魔の名前としてはどうなんだろう? 首絞めてないし、最初っから硬いものだし。


勝手に付けられた名前だけど、結構に気に入ってたんだよね。


だったら名前の通り、首を絞めておいたほうがいいのかな?


ま、いっか。


そんな思考は一瞬で終わり。

「それではぁ、さようならぁ…」

硬めた帽子を振り下ろした。


そこを、銀色の光がとおり過ぎていった。


「あらぁ?」

首を傾けたソフトチョーカーの手には、硬めたはずの切り刻まれた帽子の先だけが握られていた。

「……今のは、もしかして」

忘れていた。朝雛は光の通り過ぎて行ったソフトチョーカーの後ろに目を向けると。

「す、凄いねアレ。なんか自分の体じゃないみたいだ」

銀色に光るナイフを持つ戸隠が驚いたようにこちらを見ていた。

「あらあらぁ、戸隠さんスゴイですねぇ。こんな硬いもの切れるんですかぁ」

もはや本来の使用方法も出来なくなった帽子だったものをその場に捨てた。

それはおそらく、あの薬の効果だ。朝雛のモデルガンがマフラーを柔らかくしたように、戸隠のナイフは帽子を柔らかく戻して切り刻んだに違いない。

「さて、今言われたばかりだけど。そろそろ終わりにしようか」

戸隠はナイフの先端をソフトチョーカーに向けた。

「うふふふふ~」

ソフトチョーカーは杖にしていたマフラーを柔らかくして持ち上げ。

「そうです……ねぇ!」

柔らかいまま朝雛に向けて振り払った。

このまま振るい、朝雛に当たる直前で硬くする。それだけでも鉄パイプで殴られたような衝撃を与えられる。

それだけでも上手く動けない朝雛をやるには簡単だった。


まずは一人、ソフトチョーカーはそう確信した。


「そう、もう終わりだよ」


だが、先ほど助けに入った戸隠の速さを忘れていた。

気が付いたら、硬めたマフラーが細切れにされて宙を舞っていた。

「……あららぁ?」

「さぁ、後は君の仕事だよ」

「……はい」

細切れのマフラーの向こうに、立ち上がった朝雛の姿。手に改造モデルガンは……

「コレ、後一発みたいだけど」

「……大丈夫です、外しません」

今、戸隠の手から渡された。

両手で構え、しっかりと狙い、銃口は、マフラーを切られたことに驚いているソフトチョーカーに向けて。


引き金を、引いた。

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