表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トウマゲキ  作者: 風紙文
12/17

11話

朝雛と別れ、戸隠は一人裏露店の占いの館へ訪れた。

中に入ろうとテントの入り口に手をかけると、

「それじゃーねー…わぷっ」

「わ、すみません」

入れ違いにテントから出てきた人物とぶつかってしまった。

「わわ、ごめんなさい。黒子が前を確認せずに出るから」

「ごめんなさーい」

テントから出てきた人物は2人。戸隠にぶつかった者とその後ろに、共に10歳ぐらいの少女だ。

「大丈夫だよ、こっちこそ確認しなくてゴメンね」

「そう言って下さると助かります。それでは、これで」

「ミドリさん、バイバーイ」

後ろの子が戸隠に謝罪し、ぶつかった子は占い師に再度別れの挨拶をしてテントを出て裏露店を歩いて行ってしまった。

入れ替わりにテントの中に入った戸隠を見て、占い師は呟いた。

「おや、君だったか。そういえば来ると言っていたね」

「今の子達、誰ですか?」

占い師からテーブルを挟んで置いてある椅子に戸隠が座ったのを見て占い師は答える。

「同業者、になるのかな」

「同業……占い師のですか?」

「いいや、情報を提供している者としてだ」

「へぇ……」

占い師も、表向きは占い師だが、裏の仕事として戸隠のような人物に通り魔の情報を提供している。今し方出て行ったあの少女達も、見た目によらず、何かしらの情報を提供する仕事をしているのだろう。

「それはそうと、先程の話です」

「あぁ、そうなんだ。ソフトチョーカーの情報が入ってね、そういえばあの子と一緒にいたようじゃないか」

「昨日会社の先輩が襲われて、その場所を聞いて張り込んでたんです」

「ほぉ、昨日ソフトチョーカーによる通り魔が行われたことは知っているが、まさか戸隠の上司だったとはね」

「朝雛は今も張り込んでます。なので出来ればなるべく早く情報を聞きたいんですけど」

「分かった。ならば手短に行こう」

占い師はテーブルの上で手を組み、口元を隠すように顎を乗せると語り出した。

「率直に言うと、ソフトチョーカーはなるべくしてなった訳ではない。彼女の最初の過ちから進んだ道が、ソフトチョーカーとなることだったのだ」

「彼女?」

「ソフトチョーカーの本名が分かった」

口元は隠されていて戸隠からは見えなかったが、占い師はニヤリと笑っていた。

「君を呼んだのはそれを伝えるためだったのだ。とある伝からソフトチョーカーの本名を知り、先ほど出て行った彼女達からの情報を合わせた結果。ソフトチョーカーの成り立ちが判明した」

そういう意味では良いタイミングで来たな。と占い師は更に言葉を続ける。

「そして、やはりソフトチョーカーは病持ちであることも分かった。もしも戦うことになるならあの子にも伝えるといい、一筋縄ではいかないとね」

「それで……その名前とは」

もしかしたら今から聞く名前の女性と朝雛はもう戦っているかもしれない。そう思うと戸隠は占い師に最も聞きたい言葉を問いた。しかし、

「実はだね、つい先日久方ぶりに占い師としてのお客が来たのだよ」

占い師は何故か、自らの話を始めてしまった。

なんでこんな時に、と思う戸隠の視線を受けながらも占い師は言葉を止めない。

「仕事柄から本名を聞いたのだが。つい最近聞いた覚えがあってな、占いに使うという名目で色々と聞き出した結果……一致したのだ」

占い師は腕組みを解いてテーブルの下に手を伸ばし何かを探す。

「そして占いを終えて、最後に一枚写真を撮らせてもらった。占い師として占い後の人の顔の変化を記録している、という嘘を付き、通り魔の素顔を記録するという本音を隠してな」

職権乱用どころか占い師としてしてはいけない嘘付きをあっさりと使った占い師は、

「コレが、ソフトチョーカーの顔だ」

探していた一枚の写真を取り出し、テーブルの上に置いた。

その顔を見た瞬間、戸隠は、

「!? こ、この人が!?」

「知った顔なのか?」

「はい。つい先ほども……」

頭の中で先ほどの出来事を思い出し、最悪のパターンを想像した時には。

戸隠は立ち上がってテントの外へと飛び出していた。





「……」

『ソフトチョーカー』が狩り場としている路地裏で、戸隠と別れた後も朝雛は一人、張り込んでいた。

時に路地裏を歩き、時に立ち止まって張り込んでいることを悟られないように携帯電話を使うふりをしたり、通り魔に狙われやすい人物を演じるが。通り魔どころか通行人もいなかった。

「……誰も、来ない」

すでに日も落ち、改造した制服だけでは寒さを覚えてきた。元々動きやすさを重視してマフラーや手袋の類いは持っていなかったので寒さにはただ耐えるしかなかった。

……通り魔が現れれば戦いになる。体を動かせば自然と暖かくなる。と自分に言い聞かせて朝雛が張り込んでいると、

「あの、朝雛さん」

後ろから南沢の声を聞き、振り返ると、暖かそうな格好した南沢がこちらへと歩いてきていた。

首にはマフラー、手には手袋、頭には帽子と、全て毛糸で編まれた防寒具を身に付けた南沢は、手に赤色のマフラーと手袋を持っていた。

「寒くなってきましたので、コレをと思いまして、お店の商品にしようとわたしが編んだ物なんですけど」

「……」

確かに寒いが、先ほど会話したばかりのほぼ初対面な南沢にここまでしてもらっても良いのだろうか? と考える朝雛の心を読んだかのように、南沢は。

「お気になさらないで下さい。わたしとしてもお店の近くに通り魔がいてはお客さんが危険な目に会う可能性もあります、それを排除して頂けるかもしれないのですから、せめてこのくらいのことはさせてください」

なるほど、そう聞くと朝雛と南沢の利害は一致している。

「……そういうことでしたら」

朝雛は南沢の厚意を受けることにした。

マフラーの上に置かれた手袋を取り手を通す、今まで外気に触れていた両手が毛糸に包まれて暖かくなってきた。

「マフラーはわたしが巻いてあげます。後ろを向いて下さい」

言われるがまま朝雛は後ろを向き、少しずつ暖かくなってきた両手を胸の高さに挙げて眺める。

すると、首に柔らかいマフラーがかけられ、




次の瞬間、柔らかさが無くなり鉄の冷たさを首に感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ