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翌日。クラークはステラとアデルを連れて、約束通りの時間に駅へと向かった。
便利屋――ソニアの姿を発見し、近づく。
「随分とラフな格好で来たのね」
駅の壁に寄りかかりながら、こちらに気付いたソニアは少し笑ってそう言った。
お前が普通の格好で来いって言ったんだろうが、と思ったが口には出さない。
「で、そちらのお二人さんは――あぁ、一人は昨日私を襲ってきた人ね」
皮肉めいた言い方だった。だが、事実なので仕方がない。
「そこのお譲さんは? まさか、社員とか言わないでしょうね」
「社員なわけがないだろう。この子の名前は――」
「ア、アデルです」
少し緊張した様子を見せながらも、アデルは上目遣いでソニアを見ながらそう言った。
少しの間、怪しそうな視線でアデルを見つめていたが、「まぁいいや」という表情を浮かべ、ソニアは歩き出す。
その後をついて行きながら、クラークは質問をする。
「どこに行くつもりだ?」
「アドロフって街よ。名前ぐらい知ってるんじゃない?」
アドロフは、このバラノフ国の東の方にある大きな街の名前だ。『裏』の人達がたくさんいるという噂は、有名であった。
チケット売り場でアドロフ行きのチケットを買い、駅のホームへと向かった。ちなみに、これはクラークの所持金――ではなく、コンヴューニアント社が手配した金だ。
「そこに行ってどうするんだ?」
「その黒いフードの奴らの事を聞くのよ」
「誰に」
「情報屋に決まってんでしょ」
面倒くさそうに、ソニアは言う。
――情報屋、か。
やってきた列車の『指定席』と書かれた扉から乗り込み、四人乗りの個室へと入った。
椅子に座り、ソニアは「ふぅ」とため息をつく。
「――さて、と。あなた達には色々と聞きたい事があるんだけど、聞いてもいいわよね?」
クラークの返事もまたず、ソニアは質問を繰り出す。
「そこのお譲さん――アデルは、どうしてここにいるのかしら。何かしら意味があっているのよね?」
「それは――」
「あ、大丈夫です。私が話します」
アデルの言葉に、クラークは口を閉じた。
「あれは、クリスマスの夜の事なんですけど――」